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これは夢なのだと
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最初から分かっていたのだ。
これは夢なのだということは…
「ねぇねぇ、マユリちゃん!
マユリちゃんは、雷牙のこと好き?」
溢れそうなほどの好奇心を隠そうともせずに、目をきらきらと輝かせて詰め寄る雷牙のお母さんに、マユリは思わず身を引いた。
それでもなんとか笑顔でいたことは、あとから思い出しても、
「よく頑張った、マユリ!」
と、自分を褒めていいと思ったくらい、カオルの圧は凄かった。
「えっと…」
視線を上空に彷徨わせて、どうしたものかと考えてみるが、
「えっ? 雷牙のこと、嫌い?
他に好きな人とかいるの?」
とさらに詰め寄られて、手まで取られてしまっては、おちおち考えをまとめることもできやしない。
これは夢なのだということは分かっている。
カオルはいまだ異空間を彷徨っていて、その彼女を救い出し、連れ帰るために、雷牙の父である冴島鋼牙もまた時空の狭間へと旅立っていたのだから。
(そう… これは、どうせ夢なんだ…)
そう思ったマユリは、夢なら自分の気持ちを取り繕う必要などないと割り切ることにした。
「雷牙のことは…」
カオルの目をしっかり見て声を発したが、やっぱり恥ずかしさはなくなりはしなくて、ほんの少し目線を下げてから
「…好き、です」
と小さな声で言った。
それを聞いたカオルは、思わず呼吸するのを一瞬忘れ、それからとても安堵したように、はぁーっと大きく息を吐いた。
そして、ふわっと嬉しそうな笑顔を浮かべる。
「そうなんだね。
ふふふ、うん、なんだかとっても嬉しいわ」
けれども、それだけでカオルの追及の手が緩むことはない。
「で?
雷牙のどこが好き?
顔? 声? あ、笑顔とか?」
「どこって… えっと…」
「ね? ね? どこ? どこ?
聞きたい、聞きた~い! 聞・き・た・い・な~♪」
もともと人付き合いが多いわけではない上に、こんなにグイグイ来るタイプの人は初めてで、マユリは動揺する気持ちを抑えることが難しかったが、それでも、なんとか自分の思っていることを言葉にしようと試みた。
「雷牙は… とってもあったかいところが好きです。
私に向けて見せる表情とか、私にかけてくれる言葉とか…
優しくて、あったかくて… とても安心できる人」
「そうなんだね…」
カオルの穏やかな声に、マユリはハッとしてカオルを見た。
マユリをまっすぐに見つめるカオルの表情は、どことなく雷牙に通じるような穏やかさと優しさがあった。
そんなふうに思ったマユリも思わず笑顔になるが、次の瞬間、急に気恥ずかしさを覚えてポッと頬を染めて俯いた。
「雷牙は私のことを妹みたいに思っていて、とても大事にしてくれて。
私も同じように雷牙のことはとても信頼していて、頼りにしていて…」
そう言葉にして言ったところで、マユリは悲しくなってしまい顔がわずかに曇った。
「多分、雷牙の気持ちは今でもあまり変わってないと思うんですけど。
でも、私の中では雷牙の存在はどんどん変わってきてて…
とても大事な存在だけど、いつの間にか、それだけじゃ足りなくなっちゃって…」
そんなふうに呟いてどことなく不安そうなマユリの背中を、カオルは優しく撫でていた。
「今の私は、ホラーを浄化する力も何もない。
このまま雷牙のそばに居続けても、雷牙にとって私は何の役にも立たないってことは分かっている。
でも… それでも、やっぱり、私は雷牙のそばにいたい…」
マユリは泣いてしまいそうになるのを、必死に奥歯を噛みしめてこらえていた。
すると、カオルがそっと抱きしめてきた。
その温もりにマユリは戸惑いつつもどこか癒されて、それまで強張っていた身体から力がふっと抜けた。
「いいんだよ?」
「えっ?」
「別に何の力がなくても、そばにいていいと思うよ?」
(なぜ?)
そう問いたい言葉は声にはならなかった。
けれどもマユリの気持ちはカオルには分かったみたいで、抱きしめていた腕を少し解いてマユリの顔を覗き込むようにして言った。
「マユリちゃんは、雷牙のことを大事に思うのと同じくらい、雷牙のそばにいたいっていうマユリちゃんの気持ちを大事にすればいいと思うよ?」
(えっ? そんな… いいの?)
マユリの心の中の問いかけが分かるみたいに、カオルは大きくうなずいた。
これは夢なのだ。
マユリの夢だから、マユリにとって都合のいいように展開されるのは当たり前だ。
そんなふうに夢の中で思いつつも、感じられるカオルの温もりに、胸が苦しくなる。
その苦しさに、つい目をぎゅっとつぶり、再び目を開けたとき、マユリは自分が自室のベッドの中にいることに気づいた。
(やっぱり、夢…)
小さく息を吐き、カーテンの隙間からこぼれる光の筋をぼぉっと眺めた。
(力がなくても、そばにいていい… か…)
夢の中のカオルの言葉を反芻する。
すると、そこに…
コンコンコン
軽やかなノックの音が響き、ドアの向こうから
「マユリ? 起きてる?」
という雷牙の声が聞こえた。
その声に弾かれたように、マユリはドアを見つめ、
「起きてるよ。
ごめんなさい、ちょっと寝過ごしちゃった」
と少し大きな声で返事した。
「それならいいんだ。
早く着替えておいで。
せっかくの朝食が冷めちゃうよ?」
「すぐに行くから…」
「ああ、わかった」
それを最後にドアの向こう側から雷牙の気配が消えていった。
そんなちょっとしたことでも寂しいと感じてしまう自分に、ふふっと笑いがこぼれる。
(やっぱり… 雷牙のそばがいい…)
とてもシンプルにそう思ったマユリは、気持ちを決めてベッドから勢いよく起きた。
(今日、雷牙のお母さんのアトリエに連れて行って、と頼んでみよう!)
カオルもまた普通の人間だった。
けれど、雷牙の父である鋼牙が魔戒騎士として闘うことに、とても大きな力を与えていたとゴンザが言っていた。
そして、マユリがこのまま雷牙のそばに居続けることにも、なにがしかの力を与えてくれたような気がする。
たとえ、それが夢だとしても。
fin
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え~、実はですねぇ、今頃になってようやく「月虹ノ旅人」を見ることができました。
いやぁ、遅過ぎですよね!
これで「完成形」なんだろうな、と想像していたので、これを見ちゃったら、これ以上妄想することもできないような達成感というか、喪失感というか、そんなものを感じちゃいそうでなんとなく怖かったんですよね。
でも、ようやく見てみて「やっぱ見てよかったぁ」としみじみ。
あはは。
やはり、妄想はもうちょっと(まだまだ?)やめられません!
コメント
selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…
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