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きんのまなざし ぎんのささやき

牙 狼(冴 島 鋼 牙 Ver.)の世界を、気ままに妄想した二 次 創 作 サイトです

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とある秋の日

お久しぶりです!!
2カ月ぶりの妄想です。

書き方を忘れてないといいのですが… (心配だぁぁぁ)
生ぬるい目でお楽しみくださいませ!


拍手[2回]



::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

先ほどまで視界が真っ白になるくらいの豪雨が降っていた。
その名残の雨がまだ上がりきらない閑岱の森の中を、飛ぶように走る黒い影があった。
影はしばらく進むと立ち止まり、全神経を研ぎ澄まして見えないものを見ようとするかのように全方位を探る。
そして、この近くにはいないと悟るとまた足を進めては立ち止まり、再び探索を行うのだった。
その繰り返しを何回となく続けるうちにすっかり髪は濡れ、乱れた前髪からポタリと水滴が落ちるのだが、そんなことには微塵も気をそらすことはなかった。
ただ、探しているものをなかなか見つけられずに、心の中はひどく急(せ)いていた。

「ここにもいない…」

邪美は焦燥のあまり、ポロリと呟く影の正体は、邪美だった。

里からだいぶん離れたところまで来てしまった。
まさかここまでは来ないだろうと思いながら、邪美は来た道を振り返る。

「こっちではなかったか…」

溜息まじりにそう呟くと、邪美はぶるっと身を震わせた。
日の入りまでにはまだもう少し時間があるが、この時期はかなり日が落ちるのが早くなっている。
それに、雨のせいで隠れてしまった太陽の光は弱く、もしも雨に濡れてしまっていたら体温の下がってはいないかと気になってしまう。
邪美は、駄目でもともとという気持ちで声を張り上げた。

「かけるぅぅぅ!
 すぅいぃぃぃ!」

森の中を邪美の声が四方へと走る。
邪美は自分の声を追いかけるように意識を集中した。
そして…
微かに捉えた標(しるし)の方にクイッと目を向けると、木の葉を蹴って一直線に駆け出した。



(見つけた!)

大きな藪椿の木の下に、邪美は探していたものを見つけて、ほっとしてスピードを落とした。
幾重にも重なる枝葉の下に、体を寄せ合っているのは幼い兄妹。
邪美の子どもたちだ。
彼らの身体はうっすら白く輝く膜に覆われていた。
邪美が身を護る術(すべ)として、息子の駈(かける)に教えた技だった。

駈は10歳にして身体も大きく飲み込みも早くて、邪美は数年前から少しずつ術を教えているのだが、こういうときにきちんと実践できていることに素直に感心した。
駈は術をかけ続けることに一生懸命でこちらにはまだ気づいていない。
そんな兄を気遣うように、

「にいに、大丈夫?」

とかわいい声が聞こえた。妹の翠(すい)だ。
翠は5歳。
まだ何も術などは教えていないが、この子の運動神経は群を抜いて並外れていた。
同年代の子とは比べ物にならないくらいなのは、恐らく、兄の後ろをついて走り回っていうるせいかもしれない。
毎日飛んだり跳ねたり元気いっぱいなお転婆なので、今日もきっと、無謀な翠が好き勝手に走り回って、それを追いかけた駈がようやくここで捕まえたのではないだろうか。

どのくらい前から術を掛けていたのかわからないが、そろそろ駈の気力が限界のようだ。
玉のような汗を額に浮かべた駈が

「…翠、ごめん。もうだめだ…」

と絞り出すように言って、身体がぐらっと傾いた。

「にいにっ!」

翠が慌てて支えようとするが、当然のごとく支え切れるわけもなく駆と一緒に倒れそうになる。
そこに邪美が慌てて駆け寄り、ふたりとも抱き留めた。
翠は慌てて顔をあげると、ぱっと笑顔になった。

「かか様っ!」

駈もゆっくりと顔を上げ、

「かあ、さん…」

と吐息とともに呼びかけた。

「駈、よくやったね。防護の術、ちゃんとできてたよ」

邪美は優しく微笑むと駈をぎゅっと抱きしめ、駈の頭にぐりぐりと頬を寄せた。

「ああっ! かか様、翠は? 翠は?
 翠もやってぇ」

そう言って翠は邪美に飛びつくが、邪美はちょっと怖い顔をしてみせて

「すぅいぃぃぃ?
 こんなところまで来たのは翠のせいじゃないの?
 にいにが守ってくれなかったら大変なことになってたよ」

と翠をたしなめた。
翠は首をすくめて泣きそうな顔をする。

「…ごめんなさぁぁぁい」

小さな声だが翠は素直に謝った。
すると、駈が横から口を出した。

「かあさん。翠はかあさんに食べてもらいたくて栗を探しに来たんだよ」

それを聞いた邪美は目を見開いて、俯く翠の顔を下から覗き込む。

「翠、そうなの?」

翠はこくんと小さくうなずくと、ポケットから大きな栗を取り出した。

「すごい。大きな栗だね」

邪美が言うと、翠は

「かか様、栗、あんまり食べれなかったから…」

と潤んだ声で言う。
つい先日、お裾分けでいただいた栗を栗ご飯にして食べたのだが、邪美は大きくておいしそうな栗を子どもたちに分け、自分のお茶碗には欠けた小さな栗しかなかったのを、翠はちゃんと見ていたようだった。
食事を終えた後に、翠は駈に、

「かか様は栗が嫌いなの?」

と聞いたのだが、駈はうーんと考えて、

「きっとそれは俺たちにくれたからじゃないかな?
 だから、かあさんの分がなくなったんだ」

と自分の考えを言い、

「ええっ、そんなのかか様かわいそう…」

と翠は気にしていたのだと言うのだった。

邪美はその話を聞いて泣き笑いのような表情を浮かべて、

「翠…」

と優しく呼びかけた。
翠はどきどきしながら顔をあげると、

「おいで」

と邪美が手を広げた。
それを見て翠の顔にぱぁっと笑顔が浮かび、ぴょーんと邪美に抱き着いた。

「ありがとう、翠」

そう言うと、駈にしたようにぐりぐりと頬を寄せた。

「かか様、怒ってない?」

「ああ、もう怒ってないよ」

「よかった!」





気力を使い果たした駈をおんぶした邪美が立ち上がると、

「翠もぉぉぉ」

と両手を広げて抱っこをせがむ翠。

「翠。駈も翠も大きくなったからふたり一遍には無理だよ」

と言い聞かせようとするが、翠もここまで歩いてきたので疲れているのだろう。
自分で歩きたがらなくて邪美は困ってしまった。

「かあさん、俺、歩くよ」

そう言って駈はもぞもぞと背中から降りようとするが、邪美はそれを許さなかった。

「駈、駄目だよ。
 ねぇ、翠? ちょっとでいいから歩けない?」

「えぇぇぇ、やぁだぁ~」

「…困ったねぇ」




すると、そこへ

「誰だ、ぐずぐず言ってかあさんを困らせているのは?」

と声が掛かった。
3人が一斉にそちらに顔を向ける。

「とと様っ!」

そう叫んだ翠を、彼はあっという間に抱き上げた。
そして、邪美に近づくと、その背中の駈の頭を大きな手で撫でた。

「大丈夫か?」

駈は眩しそうに眺めて、うん、とうなずいた。

「そうか」

彼は邪美に、どうした? と目で尋ねたが、邪美は

「詳しいことはあとで話すよ。
 とにかく帰ろう?」

と答えた。




その夜、邪美のお茶碗にだけ大きな栗が入っている夕食が終わり、駈も翠も無邪気な顔で眠りについた頃。
邪美は、彼にその日の出来事を話して聞かせたのだった。

「駈も翠もいい子に育ったなって思うよ」

「そうだな」

そう言いあいながらふたりは笑いあっていたが、しばらくしてから彼は邪美に近づいてこう言った。

「おまえのおかげだ」

そして、そっと頭を引き寄せてそっと邪美のこめかみにキスを落とした。
邪美は一瞬驚いた顔をしたが、ふんわりと幸せそうな笑顔を見せると、両手を彼の首に回した。

「もっと言ってほしいな…」

言われた方は途端に落ち着きがなくなり、視線を外しつつ、

「まあ… いいだろう…」

と答える。




こうして、閑岱の里から軒の明かりが消えた。
とある秋の日のことだった。



fin
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::


秋になると、閑岱のお話を書きたくなります。
秋の里山は気分がほっこりするんですよねぇ。
ええ、ええ、selfish が田舎者だからです!

さてさて、邪美姐さんが(祝言とかすっ飛ばして)とうとう子持ちになったという妄想をしてみました。
最初は、土砂降り(あるいは怪我)で足止めをくらった邪美姐さんを彼が迎えに来る、みたいな感じが思い付いたんですが、書き始めてみたら、あらまあびっくり!
邪美姐さんを、いきなり2児の母にさせちゃいました。

花嫁の邪美姐さんとか、新婚の邪美姐さんは想像が難しいけど、母の邪美姐さんはわりとすんなり馴染(なじ)んだ気がします。
いかがでしたでしょうか?

P.S.
今後は、毎週というわけには(ひょっとしたら)いかないかも、ですが、細々と気ままに続けていけたらいいなと思っております。
来年、「牙狼、20周年おめでとう!」と書ければいいなぁ
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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…



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