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きんのまなざし ぎんのささやき

牙 狼(冴 島 鋼 牙 Ver.)の世界を、気ままに妄想した二 次 創 作 サイトです

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金牙新年!

今年も残り1週間です。
ああ、アレやらないと!
コレもやらないと!
なのに、妄想を書いてしまう日曜の夜。
(いいのかな…)

拍手[2回]



::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

布道レオは、髪を揺らす潮風にふと足を止めた。
目線を右にやれば、小さな波が生き物のように休みなくゆらゆらと動く海が見える。
今日は天気もよく風も穏やかなほうだというが、暮れも押し迫るこの時期に、海沿いの遊歩道を歩く酔狂な者はいないと見え、レオ一人が歩いていた。
そこに、海を渡る冷たい風が吹く。
レオはぶるっと身をすくめると、すぐに視線を目的の方角にキッと向けてその場所へと足を進めた。



大きな通りから少しそれて小さな脇道に入っていくと、その店はあった。
レトロと言えばお洒落に聞こえるが、なかなかに年季の入った店構え。
ドアのすぐそばにはアイアンでできた小さな看板が、この店の名前が「あかどう」であることを示しているはずだったが、暗く影になっていてよく見えない。
日の暮れるのも早くなったこの頃、とっくに照明を灯していてもいいのに今日に限っては暗いまま。
それもそのはずで、ドアの向こうは暗く闇に沈んでいて、「Closed」の札が斜めにかかっている。

道行く人はちらほらいるもの、閉まっている店とその前に立つ黒づくめの男などに興味を持つ者はなかったが、それでもレオはさらに気配を消して、すいっと店の裏のほうへと姿を消していくのだった。



あかどうの裏口。
レオはドアノブへと手を伸ばしていたが、中から聞こえる声にその手が止まった。

「こら、号竜! おとなしくしろって!」

「あーあーあー、だめだ、だめだ! そっちじゃないって!」

「うわっ、やめろ、ばかっ!
 動くんじゃない!」

かなり、慌てているシグトの声だ。
どうやら号竜相手にてこずっているらしいことは窺えることから、レオの身体にも緊張感が走る。

(まさか、号竜が暴走でもしているのか!?)

レオはすぐさまドアを押し開いて中に飛び込むように入ると、ソレを見て、棒立ちになった。

「こ、これは…」

目を大きく見開き、口を半開きにして茫然とする。

「あっ、待てっ!
 こっちだって、こっち!
 そうだ、そうだ… って、ちがーうっ
 わ、ばか、動くな、動くな。じっとしてろって!」

必死に操ろうとしているシグトも、ジタバタと動いている号竜も、あちこち墨で黒く汚れている。
彼らの足元には白い紙がいくつも散乱しているが、それらも墨で汚れてしまっている。

ぎゃーぎゃーと騒いでいた2人(?)は、裏口のドアの前で驚きの表情で佇んでいるレオに気付いて動きを止めた。


「あれ? レオさん?」

シグトは手綱のように握りしめていた魔導筆を操り、号竜を箱状に戻した。
そして、小走りにレオに近づくと、ニカッといつもの笑顔を見せた。

「久しぶりです。
 今日はどうしました?
 近くに用事でもありましたか?」

レオは、見上げるシグトにはっとして居住まいを正した。

「あ、いえ…
 今年も一年、号竜もたくさん使っていただいたようなので、挨拶ついでにメンテナンスでもと思いまして」

「そうでしたか!
 いやあ、号竜、今年もすごくよく頑張ってくれました!
 調子は良さそうですが、そうですね! ぜひ、見てやってください。お願いします!」

そう言って号竜を振り返ったシグトは、

「あっ」

と言って、気まずそうな顔になった。

「あの…」

レオは遠慮がちに声を掛ける。

「これって、いったいどういう状況なんでしょうか?」

シグトは頭を掻いて、情けない顔をする。

「すいません、レオさん。
 実は、その…」

シグトは小さな声で話し始めた。




シグトによると、表向きの稼業である’あかどう’の商売柄、毎年いくつか年賀状を送っているとのことだった。
その年賀状に、来年は辰年だからと、号竜の手形(足形?)を押させたらどうかと思ったのが、この状況を生み出した元凶らしかった。

「いいアイデアだと思ったんですが…
 号竜のやつ、なかなか言うことを聞かなくて…」

困り顔のシグトに、レオは

「はあ」

と頬を引きつらせて何とも言えない表情を見せる。
が、コホンと気分を取り直して、

「シグトさん」

と向き直る。

「号竜をあのように墨まみれにしては可動部に入り込んだ墨が固まって動きを阻害することもあります。
 それに、何より、その… 号竜の手形(足形?)が仮にもしうまく取れたとしても…」

と、そこでレオは少し言いよどんだ。
それに焦れたシグトが、

「取れたとしても?」

と促すと、きまり悪そうにしていたレオは、小さく息をひとつ吐いてから

「号竜のことを知っている人でないと、それが号竜のものだとは思いつかないと思います。
 それに、号竜の足はハガキからはみ出ると思うので、そもそもうまく取れないんじゃないかな、と…」

と言った。
それを聞いたシグトはがっくりと肩を落とした。

「はぁぁぁ、やっぱりそうですよね。
 いえ、うすうすは思ってたんですよね」

(うすうすかーい!)

「でも、12年に一度の竜の年ですよ?」

(いやいや、辰ね? 辰年ね?)

「号竜だって自分が主役の年に、何か形に残したっていいんじゃないかと思って…」

(主役って、うん? いや、そうなのかな?)

「きっと号竜も喜んでくれると思って…」

(うーん、それはどうかなぁ?)




意気消沈したシグトは、やがて最後に

「すいません、レオさん。
 号竜のこと、見てあげてくれませんか?」

と願った。
心の中でずっと突っ込んでいたレオはさすがにちょっと気の毒になったが、自分にできることは多分ないだろう。

「…わかりました」

と答えて、精一杯、号竜をきれいにしてあげようとレオは思った。

号竜のメンテナンスをするそばで、シグトは片づけを始めた。
その背中は小さくもの悲しく見えた。




2人はその後、ほとんど言葉を交わさずに自分にできることを粛々と行った。
レオは、最後のボルトを締めた。
そして、わずかににじみ出てきたオイルをぬぐうと、ほっと息をついた。
使用した道具を道具箱に戻し、ぱたんと蓋を閉じる。

「シグトさん、号竜のメンテナンス、終わりました」

墨にまみれてところどころ黒かった号竜は、すっかりきれいになってシグトの手に渡された。

「動かしてみていいですか?」

「もちろんです」

レオの許しを得て、シグトはさっそく魔導筆を掲げて、号竜を起動させる。
右に左に筆を傾けて号竜の動きを確認すると、満足そうに笑った。

「ありがとうございます!
 すごくスムーズです。
 それにきれいになった!」

シグトは筆を立てて、号竜を停止させるとレオを振り返った。
その表情は神妙だ。

「あの… レオさん、すいませんでした。
 号竜のこと、ちゃんと大事に扱うんで、これからも俺に預からせてください」

そう言って頭を下げるシグト。

「はい。
 号竜のこと、頼みます」

レオはにっこりと微笑んで言った。

「よかった…」

そう言ってほっとしているシグトに対し、レオは、あっ、と何かを思いついたようにして、ポケットをゴソゴソとまさぐった。

「シグトさん、これ…」

「これは?」

シグトは自分の手の平に乗せられたものを見て、レオを見上げる。

「これは、号竜の爪の部分の部品です。
 古くなった号竜のなんですが、ここの部分が曲がってしまっていて…
 直して使おうかとも思ったんですが、多分、強度に問題が出るかもと思っていたんです。
 よかったら、これ、差し上げます」

そう言われて、しげしげと爪を見るシグト。

「これだったら、年賀状に使えないですか?」

シグトの様子を伺いつつそう言うレオに、シグトはハッとして顔を向けた。

「いいんですか? もらっても?」

「はい」

「ありがとうございます!」





1月1日、’あかどう’から届く年賀状。
取引先のみなさんは、お楽しみに!


fin
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::


号竜の爪って、どんなんでしたっけ?
どんなんだかわからないんですが、きっとカッコイイんでしょう。
シグトは、年賀状に魚拓ならぬ爪拓してしまった後は、それをアクセサリーに加工しちゃったりするのかな?
な~んて妄想して、ひとりクスクスしております。

が、ほんとは笑ってる場合じゃないんですよね。
年賀状、毎年出すのはほんの少しなんですが、まだできてないんです。
書かないと、なんです!
書かないと、なんですが、うーん、妄想のほうを書いちゃいました。
あ~あ、自分の首を締めちゃってる。

これはもう、平日の夜に、がんばって書くしかないですね。
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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…



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