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いちばんの存在(4)

慣れない育児にへとへとなカオルン。
周りも心配しているはずなんですが、彼女には余裕がないんだろうなぁ…


拍手[3回]



::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

王妃と王子を抱きしめるように支えていたのは、この国の王、コーガでした。
侍女はふたりがぶじであることにほっとしましたが、すぐにはっと気づき、2~3歩あとずさり、

「失礼しました」

と顔を伏せました。

コーガは
ゆっくりとその場にカオルンをしゃがませて、控えている侍女にちらりとだけ目をやり、

「ライガーを」

と命じました。
侍女はすぐさま王妃のすぐそばにひざまずき、

「失礼します…」

と王子に手を伸ばします。
ですが、カオルンは震える手でしっかりとライガーを胸に抱きしめたままで動きません。

「王妃様?」

侍女が遠慮がちにカオルンの顔を覗き込んで促しますが、まだ動揺のやまないカオルンはライガーを手放すことができませんでいた。
そのうちに、ライガーがぐずり始めます。

「ふぇぇ… ふぇぇ…」

コーガは

「カオルン、ライガーは彼女に…」

と穏やかな中にも凛とした声で言いました。

「でも…」

カオルンはコーガをすがるように見上げましたが、

「いいから…
 彼女は信用できないような者なのか? 違うだろう?
 大丈夫だから、ライガーを彼女に預けるんだ…」

とコーガは説き伏せるように言いました。

「王妃様? わたくしにお任せください。
 わたくしには、小さな弟や妹がいるのをご存じでしょう?
 一番下の弟は、母の代わりにわたくしが育てたと言ってもいいくらいずっと面倒をみてきたことも…
 わたくしの弟と王子様を一緒にしてはいけませんが、王子様のことは弟以上に一生懸命見させていただきますので、どうかご安心くださいませ?」

侍女も精一杯まごころ込めてカオルンに話しかけます。
それを聞いて、カオルンもようやくライガーを侍女に預けました。

「お願いね?」

まだまだ心配そうなカオルンに、侍女は

「お任せください。決して目を離したりなどいたしません。
 万が一、わたくしがおそばを離れるときでも、必ずや他の者が王子様のおそばにおりますので、安心して王妃様はしっかりとお身体を休めてくださいませ」

と頼もしい笑みを浮かべて言い切りました。
そう言いながら王子を抱く手はゆらゆらと揺すぶり、ぐずっていた王子もいつの間にか機嫌よくなっていました。

コーガは目で侍女に合図を送ると、王子を抱いた侍女は、一礼をしてすすすと下がっていきました。
その侍女の姿がドアの向こうに消えるまで目で追っていたカオルンでしたが、王子の姿が見えなくなると小さく息を吐き目線を下げました。
やはり、顔色はよくなく、かなり疲れが溜まっているようです。

その様子に眉をしかめたコーガは、カオルンの身体をゆっくりと抱え上げました。
驚いたカオルンがきゅっと身体を縮こまらせて、目をぎゅっとつむりましたが、コーガが立ち上がったことで身体の揺れも収まり、そっと目を開けました。

すぐ間近にあるコーガの顔をそっと見上げます。

「コーガ…」

カオルンの眉は情けないくらいに下がっています。
時分がふらつくだけならともかく、腕に抱いた王子も危ない目に合わせてしまったのですから、当然と言えば当然です。
コーガに怒られることがあるとしても、甘んじて受け入れよう、とカオルンは思っていました。

コーガが大きく溜息をつきました。
カオルンはびくっとに身を縮めます。
ですが、聞こえてきたのはコーガの優しい声でした。

「おまえにもライガーにも大事なくてよかった」

はっとしてカオルンは顔をあげ、

「…ごめんなさい」

と謝りました。

「…」

コーガは何も言わずに、カオルンを抱えたまま寝室に向かいました。
出産してからは、コーガの睡眠の邪魔になると思い、カオルンとライガーは別の部屋で休んでいたのですが、コーガが向かっているのは、出産前まで使っていたコーガとの寝室です。
それに気づいたカオルンが

「コーガ?」

と声をかけます。

コーガは無言で夫婦ふたりのベッドにカオルンをそっと下ろしました。

「ここで休んでいろ」

「えっ、でも…」

「今はしっかりと身体を休めることを優先させろ。
 おまえが倒れるようなことがあればライガーがかわいそうだ」

「…ええ、そうだね。
 でも、休むなら、向こうの寝室でも休めるし、それに、ライガーが」

いつ母親を恋しがるかわからないから、と言いたかったカオルンの言葉を

「だから」

とコーガが遮ります。

「ライガーの気配が残る部屋では、おまえの気が休まらないはずだ。
 だから、今はここで休め」

そう言うと、コーガはカオルンに寝具をそっとかけてくれ、髪を優しく撫でました。
愛おし気にカオルンを見つめるコーガのまなざしに、カオルンは胸が締め付けられるような気持ちになります。

「…わかった。ちゃんとここでしっかりと休むわ」

「ああ、そうしてくれ」

言葉と視線を交わしあっていたふたりは、コーガが顔を近づけて距離がゼロになりました。
コーガの唇がカオルンの唇に優しいキスを落とし、すぐに離れたが、至近距離のままでコーガは言いました。

「おやすみ」

カオルンは少し恥ずかしくて視線が落ち着かず

「うん、おやすみ」

と返すと、コーガの視線から逃げる理由からも目を閉じました。
そんなカオルンの唇に、今度は少しだけ長めにしっとりとしたキスが落とされます。
額にも軽くキスされた後、コーガの気配が遠ざかり、パタンという小さなドアの閉まる音が聞こえました。

そっと目を開けたカオルンは、誰もいなくなった寝室で身体の力を抜きました。
ひさしぶりの夫婦の触れあいに、少し身体が熱くなった気がします。

けれども、慣れない育児の疲れが重だるくのしかかります。
コーガの匂いの残るベッドにいることもあり、彼の匂いに包まれている安心感もあって、カオルンはじきに目を閉じて深い眠りにつくのでした。


to be continued
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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…



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