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きんのまなざし ぎんのささやき

牙 狼(冴 島 鋼 牙 Ver.)の世界を、気ままに妄想した二 次 創 作 サイトです

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いちばんの存在(3)

カオルン、コーガ、おめでとう!
ふたりの子どもなら、めちゃくちゃ可愛かろう!
とはいえ、生まれたては、ねぇ?
でも、ママにとっては、生まれてきてくれたことこそが、一番大事で唯一の望みですもんね。
さてさて、無事に産まれたところで、何が起きるんでしょうか!?

拍手[3回]



::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

王子の誕生の知らせは、すぐさま城内に広まり、城下に知らせる伝令が我先にと城を飛び出していきました。
その強さは大陸一とも名高い、自慢の王様に待望の王子が誕生したのです。
国民たちは喜びに沸き、特におそば近くに使える臣下や侍女たちは、なかなか子どもに恵まれずに悶々としていたおふたりの姿をよく知るだけに、みな涙を浮かべて喜び合いました。

ゴーザンなどは、

「ようございました!
 ほんとにほんとにようございました… う、うっ、うぉーん、おん…」

と、喜びを噛みしめ、人目もはばからずに大号泣です。
レイはそんなゴーザンに少し呆れながらも、その背中をさすります。

「よかったな。
 カオルンも赤ん坊も無事でよかった、よかった」

そんな国中が歓喜に包まれた王子誕生から3カ月余りが過ぎた頃。
ちょっとした出来事がカオルンを悩ませていました。





昨日まで降り続いていた雨があがり、久しぶりの日差しが眩しいくらいによく晴れたある日の昼下がり。
ソファのひじ掛けにもたれながらうつらうつらとしていたカオルンが、はっとして目を覚ましました。

(やだ… 寝ちゃってた…)

目覚めたばかりでまだ少し朦朧としていましたが、カオルンはすぐにきょろきょろと辺りを見渡します。
部屋のドア近くに控えていた侍女が遠慮がちに声を掛けます。

「王妃様? いかがいたしましたか?」

その声に応える余裕もなくカオルンは近くのベビーベッドの中の王子の様子を伺います。

(ああ、よかった、よく寝てる…)

真っ白な産着にくるまれた王子は、すやすやとよく寝ていて、カオルンはフフフと微笑みを浮かべました。
ただ、その幸せそうな表情とは裏腹に、目の下にはうっすらとクマが見え、面差しも少しやつれてとても疲れているように見えます。

「あの… 王妃様? 殿下のことはわたくしが責任を持って見ておりますので、少し横になられてはいかがですか?」

王子を愛おしそうに見ているカオルンに、侍女はそっと声を掛けました。
カオルンは侍女のほうを振り返り、にっこりと笑います。

「ありがとう。わたしは大丈夫よ」

そう言うカオルンの顔色は、やはりあまりよくありません。

「でも、王妃様…」

なおも食い下がろうとする侍女に、カオルンは

「ごめんなさい」

と謝って言葉を侍女の言葉を遮ります。

「この子が泣いて目を覚ましたときに、わたしがそばにいてあげたいの。
 それは完全に自己満足なんだけどなのはわかってるんだけど、ね?
 それでも、やっぱり、泣いてて不安なときに、すぐに、ママはここよ、って言ってあげたいな、って…」

そんなふうに王妃に言われてしまっては、さすがに侍女もそれ以上強くは言えません。

「…わかりました。
 でも、わたくしに何かできることがありましたらなんなりとお申し付けくださいませ。

 そうだ、何か甘いお飲み物などお持ちしましょうか?」

少し首をかしげて言う侍女に、

「そうね。いただこうかしら」

とカオルンが答えます。
それを聞いて、侍女の顔はぱっと明るくなり、

「かしこまりました。
 ただいまお持ちいたしますね」

と言うと一礼して部屋を出ていきました。

  パタン

小さく音を立ててしまったドアをカオルンは見ていました。
侍女がいなくなり、部屋には王子とふたりきりになったところで、視線をまたベビーベッドへと向けます。
そっと髪を撫でようとカオルンは王子に手を伸ばしましたが、あと少しというところでその手は止まり、しばらく逡巡したあとで手を引っ込めました。

「かわいい、かわいい、わたしのライガー。
 寝てるときはとってもかわいいんだけどな…」

ぽつりと呟いたカオルンは、小さく溜息をつきました。




カオルンを悩ませていること。
そう、それは、王子が頻繁に起きて泣き出してしまうということでした。

ライガーと名付けられた王子はどうしたわけか眠りが浅いみたいで、授乳の目安と言われる4時間を待たずに1日に何度も起きてしまうのです。
そして、授乳が済んだと思ったらなかなかげっぷが出ずにずっと背中をとんとんしてあげなければならず、やっとげっぷが出たと思ったら目が冴えてしまうのか、なかなか寝付いてくれなかったりしました。
母乳が足りていないからではないか?
暑いのではないか?
いやいや、寒いのでは?
と、カオルンは毎日やきもきしています。

それでも、なかなか子宝に恵まれず、ようやく授かった我が子はとにかくかわいくて、カオルンはできるだけ自分の手でライガーを育てたいと思っていたので、がんばりました。
信用していないわけでは決してないのですが、侍女の手はできるだけ借りたくないと思っていました。
特に夜間の授乳は、「ゆっくり休んで?」と侍女を下がらせていました。

王子が産まれてから、昼も夜も区別なく起きて泣き出すので、コーガとも寝室は別にしています。
まさしくカオルンは孤軍奮闘。
頑張り過ぎるくらいに頑張っていました。

けれども、カオルンの気力や体力もそろそろ限界のようでした。
まとまった睡眠時間も取れず、初めての育児は手探り状態。
これで大丈夫なのか?
ああしたらどうか?
こうしたほうがいいのか?
と悩み続けていることで心も疲弊します。

今はまだ侍女にも対応できていますが、ときどき、とてもひどい言葉を投げつけてしまいそうになってハッとすることが増えた気がします。

つらつらとそんなことを考えていると、

ふぎゃあああ

と王子が泣き出しました。
ライガーの泣き声にカオルンは耳を塞ぎたくなりましたが、なんとか気持ちを落ち着け、立ち上がりました。

そこへ、はちみつ入りのハーブティーを運んできた侍女が、少し慌てて部屋に入ってきました。
足早に王妃のそばに近づき、カートから手を離すと、さらにふたりに近づきました。

カオルンは

「よしよし、もう起きたのね、ライガー。
 泣かなくて大丈夫よ?
 ママはここにいるからね」

とあやしながら、ライガーをベビーベッドから抱き上げます。
が、そのとき、視界がぐにゃりと大きく歪んで、ライガーを抱いたままふらついてしまいました。

「あっ、王妃様っ!」

侍女は慌てて手を伸ばし、王妃の身体ごと王子を支えました。
けれど、王妃は力が出ないのか、ずるずると身が傾いていきます。

「誰かぁ! 誰か来てぇ!
 王妃様がぁ! 王妃様がぁ!」

開けっ放しのドアに向かって侍女は必死に叫びました。
すると、誰かがさっと入ってきて、王妃と王子をがしっと力強く受け止めました。

ほっとした侍女はその人物に目を向けて、驚愕のあまり、目も口も大きく開きました。

「で… 殿下!」



to be continued(4へ)
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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…



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