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きんのまなざし ぎんのささやき

鳴らない鈴(14)

さあ、ここから怒涛の展開っ …かぁ?
いや、うん、まぁ…

…とにかく、お楽しみくださいませ。


::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

「ザルバ、どっちの方向だ?」

『10時の方角だ!
 どうやら向こうもこちらに気付いたみたいだぜ?
 真っ直ぐにこちらに向かってるっ!』

  ギンッ

鋼牙はその方向を睨み、赤鞘を前に突き出し、束(つか)に手をかけた。
瞬時に周囲の空気が張り詰めて、肌にピリピリと痛いほどだ。
あまりの緊張感にカオルはゴクリと唾を飲み込むが、その小さな音がびっくりするほど大きく耳に響いた。

『来るっ!』

ザルバの声が聞こえた後、瞬時を置かずに、見通しの利(き)かない茂みの向こう側から何かが飛び込んできた。
だが、それよりも早く鋼牙はすでに剣を抜きかけている。

こちらに飛び込んできたものはそれほど大きなものではなかった。
鋼牙の身体の陰から覗き見ていたカオルの目には、それはこぶし大ほどの赤い火の玉のように見えた。
が、鋼牙の剣をするりと交わした動きは滑らかで、水の流れのように自然でどこにも無理や無駄がなかった。
そのまま、それはふたりの周りをクルクルと回りだす。

「!」

カオルは驚いて身を固くしたが、どうしたことか鋼牙からは警戒心が感じられない。

『おやおや、こいつぁ驚いたなぁ~』

そう言うザルバの声にも緊張感がまるでない。
どういうことかと、カオルは目を凝らしてその飛行物体を見るが、素早い動きに目が回るだけだった。

『そろそろ落ち着いたらどうなんだ?』

少し呆れたように言うザルバの言葉が解ったのか、それは鋼牙の真正面に来るとその場にピタリと制止した。
カオルがそっと見てみると、赤い長い尻尾が見えた。そして、先の曲がった鼻先が…

そこにいたのは、魔界竜の稚魚だった。

(何これ? かわいい!? でも、ちょっと顔が怖いかも…)

カオルの怪訝な様子に気付いた鋼牙が、カオルに記憶がないことを思い出し、説明をする。

「これは魔界竜の稚魚… 恐らく、俺の友が放ったものだろう」

「へぇ」

鋼牙の陰に隠れていたカオルは、鋼牙の横に並んで立った。
魔界竜の稚魚は、その間も白いヒレをひらひらさせて、時折くるり、くるりとその場で回転している。
顔はともかく、その動きを見ていると金魚のようでカオルの表情もすぐにほころんだ。
が、それもザルバの言葉ですぐに笑顔は消える。

『わかったぞ、鋼牙。
 以前、烈花ともうひとり、かわいらしい魔戒法師のお嬢ちゃんをザジから助けたことがあったよな?』

「ああ、そんなこともあったな…」

鋼牙がカオルを探して異空間を彷徨っている間、これまたエイリスによって歪められた時空の裂けめに吸い込まれた烈花と莉杏のピンチを救ったことがあった。
意識だけを飛ばしてのことだったので、長く身体を留守にすることもできず、気を失っている烈花に直接声をかけることはできなかったが、莉杏に、必ず戻る、と言葉を託した。

『あの後、意識を取り戻した烈花が、鋼牙を見つけろ、とこいつを放ったそうだ』

「なるほど…」

鋼牙は目の前を嬉しそうに泳いでいる稚魚を優しく見つめた。
恐らく、味方のないこの異空間で少しでも自分の役に立つようにと、烈花がよこしたのだろう。
友の気遣いに胸を熱くしていると、ザルバが注意を促した。

『鋼牙、あれを見ろ!』

ハッとして、目を凝らすと、魔界竜の稚魚がやってきた方向が何かキラキラと光っている。

『烈花のヤツ、考えやがったな。
 コイツの来た道筋が解るように、ずっと目印をつけてきたらしい。
 つまり…』

「ああ。 これを辿れば、少なくとも烈花のいたあの場所までは辿りつけるってことだな?」

『そのとおり!
 そして、その場所からうまくすれば元の世界に戻れる、かも…』

無言でうなずき合う鋼牙とザルバ。
そのやりとりを真剣な面持ちで聞いていたカオルは、おずおずと尋ねた。

「あの… 帰れるの? 元いた場所に?」

「ああ」

『もちろん、そう簡単には無理だろうが、少なくとも光明は見えてきたってところだな』

鋼牙とザルバの明るい表情と声音にカオルの心にじわじわと安心感が広がる。
このふたりが自信ありげにこういうことを言うときは、ほぼ十中八九安心してよい。
記憶のないカオルだったが、不思議とそういう感覚になっていた。

『よし! そうとなれば、こんなとこでグズグズしている暇はない。
 さっそく出発、といこうか?』

カオルはこれまでになく晴れ晴れとした表情で大きくうなづいた。





安全であったオアシスのような場所から出発し、再び、奇妙キテレツな空間を歩き出した一行(いっこう)。
だが、不思議と不安な気持ちは以前ほど無かった。
鋼牙たちの周りをつかず離れず小さな魔戒竜の稚魚が泳ぎ回るかわいらしさに癒されたこともあったし、この稚魚が残してきた光の道しるべを辿れば、という希望がカオルの気持ちを強くさせていた。

それに、先を進むほどに別の変化も見えてきた。
少しずつではあったが、カオルが思い出し始めていた。
ぼんやりとではあったが、小さな男の子の陰がチラチラと脳裏を掠(かす)める。
また、ゴンザらしき人物のことも…

『確証はないが、カオルは術か何かにかかっていたのかもしれないな。
 カオルのいたあの森から離れれば離れるだけその術が弱まっているのかもしれない…』

ザルバの言葉に、鋼牙もカオルも気持ちを強くした。
ただ、もしも… もしもカオルの記憶がきちんと戻らないとしても、カオルは鋼牙に関してだけは何も心配していなかった。
記憶のない状態のカオルであっても、鋼牙には全幅の信頼を置いていた。
何よりも鋼牙の深い愛情を感じていたし、自分自身もまた深く彼を愛しているということを実感していたからだった。

(大丈夫! あたしはこの人とともに人生を歩いていける…
 ううん、歩いていきたい!)





異空間で迎える朝も何回目になるだろう。
じりじりと熱く焼ける日中を避け、夜明けを待って少し早めに出発した日のこと。
いつもと同じように、魔界竜の稚魚、鋼牙、そして、鋼牙に半歩ほど遅れてカオルが歩いていた。
すると、魔界竜の稚魚が何かを感じ取ったのか、急にピタリと動きを止めた。

「!」

すぐに異変に気付いた鋼牙も歩みを止め、カオルを後ろ手に庇いながら警戒する。

「え、なに?」

怯えた表情のカオルも、彼女なりに周囲に気を配る。

to be continued(15へ)
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拍手[21回]

コメント
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無題
物語にはまったくもって関係ないのですが 奇妙なものを見つけてしまいました。
rakutenTVというサイトの牙狼<GARO> 一期の表示サイトなのですが

出演:岡本杏理,京本政樹,螢雪次朗,渡辺裕之,肘井美佳,影山ヒロノブ,藤田玲

なのです。
主役の名前が無いうえ 一番始めが何と三神官ベル役の人
私としてはあり得ないというか 呆然というか 他にいたでしょ? 大事な人って感じ
せめて主役のK西君の名前はなきゃダメでしょ
なんか がっかりでした
すみません 変な報告で でも 誰かに言いたかった 直してくれないかなぁ
本当に ごめんなさい(;_;)
夕月 2017/07/14(Fri)00:38:19 編集
Re:無題
それはほんとに奇妙なものですねぇ~

わかった! あいうえお順!? …ではない、か。
渡辺さんから肘井さんに戻ってるし、違いますよね。ふ~む。

ただ、Kくんの名前がないのは「ひょっとしたら」と思い当たることがある、かな。
1期では、彼、今の名前に改名する前の名前だったので、それでかな、と。
あと、三神官のうち1人しか名前が出てないのも、似たような理由かもしれません。
ケイルは、今や、プロボーラーですもんね。
そして、ローズは… おお! 元ももクロで、元乃木坂って、なんかすごいことになってます。(びっくりした!)

「誰かに言いたかった」ということ、言ってくれたんですね。
フフフ、ありがとうございます。
【2017/07/14 23:38】
無題
お騒がせしてすみません
皆さん それぞれに活躍されているのですね
ケイルは、プロボーラーで ローズは 元ももクロで、元乃木坂って凄すぎ
織央君の大河だけで驚いてちゃいけませんね
K君は改名のせいでしょうか それにしても不思議です
失礼しました
夕月 2017/07/15(Sat)00:20:28 編集
Re:無題
真実はどうなのか… それはわからないですねぇぇぇ
でも、主役は一番に出してほしいもんです、うんうん。
【2017/07/16 21:28】
selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も5年を経過しましたが、まだ飽きていない模様…



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