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きんのまなざし ぎんのささやき

牙 狼(冴 島 鋼 牙 Ver.)の世界を、気ままに妄想した二 次 創 作 サイトです

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for you(2)

めっきり春めいてきましたね~
カオルの植えた球根、どうなってますかねぇ?

今宵の妄想もお楽しみください!


拍手[10回]




::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
「こちらでございます…」

案内するゴンザの背中を追いかけて、雷牙とマユリが続くと、庭を通り過ぎて屋敷の横手にぐるりとまわった。
そこは、屋敷の玄関にも、庭にも面していないため、普段なら誰も足を運ぶことのないような場所。
雷牙は頭の中で屋敷内の位置関係を思い起こして、ちょうど書斎の窓に面したところだな、と考えていた。

「雷牙様が思い出されたのは、ここではございませんか?」

そう言って振り返ったゴンザは脇によけ、誘(いざなう)うように手を体の横へと開いた。
雷牙はしばらく辺りの様子を注意深く見渡していたが、ゆっくりと首を横に振り、

「だめだ… 何も思い出せないよ」

と溜息交じりに答えた。

「さようですか…」

ほんの少し寂しそうに笑ったゴンザは、すぐに気分を変えて、

「でも、恐らくここで間違いございません。
 カオル様はここに球根を植えられておりましたから」

と言った。

「ここに…」

そう言って、雷牙は跪(ひざまず)き、目の前のイタリアンパセリみたいな葉っぱを眺めた。

「これは何の球根なの?」

花のことなど何もわからない雷牙には、これが何のものなのか皆目見当がつかない。
すると、花のことには詳しいマユリが

「これは…」

とぽつりと呟く。
その声に雷牙もゴンザもマユリを見る。
視線を集めたマユリはちょっとだけだじろいだが、

「マユリはわかるの?」

と雷牙に優しく問われて、

「…アネモネ?」

と、ゴンザに正解を伺うように答えた。
その答えを聞いて、ゴンザはふっと笑う。

「正解でございます。さすが、マユリ様…
 これはアネモネという花です」

正解と言われて嬉しそうに破顔するマユリだったが、一方の雷牙は花の名を言われてもピンと来ないため、訝(いぶか)し気に顔をしかめている。
そんな雷牙のために、

「アネモネは春に咲く花だ。よく見るのは赤とか紫とかだが、白やピンクもあるかな…
 一重咲きも八重咲きもあって、とてもかわいらしい花だ」

と説明してくれる。
けれども、それでもピンと来ない雷牙は、

「ははは… ごめんね、マユリ。やっぱりどんな花なのかよく分からないや…」

と申し訳なさそうに眉尻を下げる。
すると、フォローするように

「心配なさらずとも春になればご覧になることができますよ。
 鮮やかな色合いが華やかで、風に揺れて花びらを揺らす様は可憐で…
 ああ、カオル様の印象ともかぶるかもしれませんね」

と言ったゴンザが、少し遠い目をした。
そんなゴンザを眺めながら、雷牙自身も母の姿を脳裏に描く。

「母さんは、この花が好きだったのかなぁ?」

ぽつりと言った雷牙に、ゴンザは雷牙を振り返る。

「さあ…
 お好きだったのかどうかは聞いておりません。ただ…」

そう言うとゴンザは少し視線を下げた。
その表情は、どこかしみじみとした感じで、だけど悲し気とか寂し気とかそういったわけでもないものだった。
そんなゴンザの様子に焦(じ)れたか、

「ただ?」

と雷牙は先を促した。
すると、ゴンザは顔を上げ、まっすぐに雷牙を見た。

「カオル様がこの花を選んだのには理由があるのです」

「理由?」

「はい。アネモネでなければならなかった…
 いえ、この花に込められた思いがあればこそ、カオル様は自らの手で一生懸命植えられたのです」

「思い…」

思わず呟いたマユリに雷牙は振り返り、視線を交わした後で再びゴンザを見た。

「マユリ様は、アネモネの花言葉をご存じですか?」

「アネモネの?」

「はい」

「いや… 知らない」

「では、バラの花言葉は?」

ああ、それなら、という感じで、

「花の色によって花言葉が違うはず…
 赤は、愛とか美。
 白は純潔。
 黄色は友情、だったか?」

といくつか挙げていった。

「そうですね。
 実は、アネモネもバラのように花の色によって花言葉が違うのです」

それを聞いて、そうなのか、と雷牙もマユリも自然にうなずいていた。

「アネモネの赤は…

  あなたを愛します」

ゴンザの穏やかな声がかみしめるように響く。

「あなたを愛します…」

マユリはなぞらえるように声を出して言っていた。
だが、そんなことも気に留める余裕もないのか、雷牙はこちらを見つめるゴンザから目をそらさない。
ゴンザも雷牙の視線を寛容に受け止めつつ、続きの言葉を発する。

「紫は…

  あなたを信じて待つ」

それを聞いて、雷牙の目は大きく見開かれた。
隣でマユリも、はっと息を飲んだ気配がした。




その言葉を聞いて瞬時に思い出されたのは、母、カオルを救うために旅立った父が雷牙に残した言葉だ。


  「信じて待っていろ」


今になって思えば、恐らく父は母にもこの言葉を、何度も言っていただろう。
厳しく苦しい闘いとなることが予測される旅立ちのときには、いつだって… 何度でも…

愛する人を、自分の抱える不安を押し殺して、黙って送り出さなければならなかった母の精一杯の返事がきっと…


  「あなたを信じて待つ」


(これが、母さんが父さんに向けた思い…)

そう思うと、途端に母の優しさ、強さ、そして愛情の深さが思い知らされて、目の奥がじんと熱くなる。
そんな雷牙の様子に、ゴンザもひときわまなざしが優しくなった。
けれど、まだ花言葉には続きがあるようだ。

「そして、白は…」

ゴンザの言葉に、雷牙もマユリも思わず身体に力が入る。
真剣なまなざしがゴンザに突き刺さるように注がれる。
ゴンザは小さく息を吐くと、顔を前にしっかりとあげてから白いアネモネの花を花言葉を口にした。

「希望」




…決して大きくはないが、はっきりとした口調で言ったゴンザの声が、耳というよりか、心の奥底にずしんと響いた。
その余韻にしばしふたりは言葉も出ない。
が、マユリよりも一足早く心を落ち着かせた雷牙が、

「希望…」

と復唱した。

「はい、’希望’ です。

 カオル様がアネモネの球根を植えたいとおっしゃったときにお聞きしたのです。
 何か意味があるのか、と…
 そうしましたら、照れたような恥ずかしそうな顔で、『花言葉がちょっとね…』とだけ言われて…

 カオル様は鋼牙様への思いとして、これらの花言葉を持つアネモネの花をお植えになられたのです」

ゴンザの言葉に、マユリは自分の両手を胸の前で握りしめる。
誰も言葉を発することなく、時が流れる。



それをゆるりと破ったのはゴンザだった。

「でも、最近、わたくしは思うようになったのです」

何を? と言いたげな雷牙たちの視線を受け、ゴンザは続ける。

「カオル様の思いは、鋼牙様へ、だけではないのではないかと…」

「…どういうこと?」

「はい…
 カオル様は、雷牙様へも同じ思いをお持ちだったのではないかと、そんな風に思うのです」

「同じ?」

ゴンザは大きくうなずいて

「雷牙様はいずれお父様の鎧を受け継ぐ身。
 まだお小さいとは言え、成長すれば、お父様と同じようにご自分の身を削り、ホラーと闘う運命(さだめ)を背負っておられる…
 そんな雷牙様に対しても、愛している、信じて待っているから… あなたは私の、そしてみんなの希望、というメッセージを込められていたように思うのです」

と言った。
雷牙の目がわずかに潤んだ。
そして、すぐさま、何かを振り払うように天を仰ぐ。
それはほんの少しの間だけで、再びゴンザに向けられた顔には笑顔が浮かんでいた。

「そうだね。
 母さんが父さんを大好きだったのは知っているけど、僕のことだって大好きだったのは覚えているから」



「雷牙… わたしの希望… だぁ~いすきだよ」

そう言って優しく抱きしめてくれた優しい母さんのことを雷牙は脳裏に描いていた。



「楽しみだなぁ。どんな花が咲くんだろう?」

雷牙はそう言うと、足元のまだ細く弱弱しい目を愛おしそうに眺めた。

「早く咲くといいですね」

「きっときれいに咲いてくれるだろう」

ゴンザもマユリも口々にそう言った。




春の日差しを浴び、風に揺れるアネモネの花。
いつかその花を、父と母、そして、彼らの後を追った師匠たちと眺めることができる日がきっと来るはず。

(母さんだって、きっと希望を捨てていない!)

そう思うと、雷牙は空を見上げ、いまだ異空間にいる母を想った。



fin
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

牙狼は旧魔戒語で ’希望’

カオルちゃんもきっと諦めずに待ってるよ! そんな想いも込めての妄想でした!
(だって、牙狼の嫁だものっ! ねっ! ねっ!)

さて、この妄想の発端ですが…
アネモネは個人的に好きなお花なので、ある日、思いつきでちょっと調べてみようかなと思ったんです。
で、花言葉を見てビックリ!
「なにこれ、なんて牙狼に向いた花なんだ!」

実は、それが秋だったんで(アネモネは春に咲くから)季節外れだなと思い、春まで温めておこう、と思ってそのまま忘れてました! あはっ!

でも、ひょんなことから今回、日の目を見たんです。ほんとよかった~♪

月虹のDVDを見て、マユリちゃんが園芸好き少女に変身してて、ってこともよかったのかも。
いやあ、ついてたな、と自分の運の良さに感謝しました。

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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…



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