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きんのまなざし ぎんのささやき

牙 狼(冴 島 鋼 牙 Ver.)の世界を、気ままに妄想した二 次 創 作 サイトです

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契約の一日(3)

今日は、PC、動いてくれた!
PCのご機嫌を取りつつの妄想劇場…
一日遅れで開幕です。


拍手[10回]


::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

鋼牙は穏やかな顔をしている。
けれども、光の具合なのか顔にできている影が気になって、カオルはそっと手を伸ばしてく。

が、

『カオル…』

静かな部屋に大きくはない声が響いて手を止める。
声のしたほうに目を向けると、書斎机の上にある台座にちょこんと据えられたザルバがこちらを見ていた。
カオルはかがもうとしていた姿勢を戻して、ザルバに近づく。

『そっとしておいてやれ。そいつには休息が必要だ』

ザルバの言葉にカオルの顔が曇る。

「…そんなに疲れるものなの?」

『いや、こればっかりは俺様も経験したものではないから確かなことは言えないが…
 まるまる一日、生命活動を止めていたことになるからな。
 それを一気に戻すということは、身体への負荷がかなりあるらしい。
 寝ていたヤツを起こして、いきなり全力疾走しろ、っていうようなものなのかもな』

「そっか…」

カオルは心配そうな顔で振り返り、鋼牙を見る。
その様子をザルバはじっと見つめ、

『なあ、カオル?』

と探るように声を掛けた。

「なに?」

『…』

少し言いよどんでいるようなザルバに、カオルは顔を近づけて、

「ん?」

と首をわずかに傾けてみせる。

『おまえにとって俺は、鋼牙の命を奪う憎いヤツなんだろうな』

「えっ…」

『魔導輪である俺様と鋼牙との関係は契約でもって成り立っている。
 それは鋼牙も納得ずくのことで、今更変えようもない。
 けれども、カオル。おまえさんにとっちゃ、大事な男の命が奪われるなんてぇことは到底飲み込めねぇことだろうよ』

「…」

カオルはすぐには何も言えず、わずかに眉根を寄せて複雑な表情を見せるだけだ。
すると、なんとなく気まずくなってしまった空気が漂うのを打ち消そうとしてか、ザルバはわざと明るい声音で、

『まっ、おまえさんに「憎い」と言われたとしても、俺様にとっては痛くも痒くもないんだがな』

と言い、カチカチと音をさせながら笑った。
それを聞いたカオルは、きゅっと唇を引き結んでから、

「ザルバ…」

と呼びかけた。
ザルバは

『なんだ?』

と応える。

「あたしね、ザルバのことを憎いと思ったことはないよ?
 ううん、正直なことを言うとね、初めて契約の話を聞いたときはザルバのことをちょっと怖いな… と思った」

『…そうか』

「うん…」

うなずいたカオルは、そこでにこっと笑った。

「でもね、そのくらい… 命を代償にするくらい、鋼牙はザルバのことを認めてるんだろうな、って…
 命を預けられるくらいザルバを信頼しているんだろうな、ってわかるから… だからね…」

カオルはまっすぐザルバを見つめていた視線をちょっと落とし、より小さい声でこう言った。

「ザルバが羨(うらや)ましいよ…」

『カオル?』

カオルの言葉をすぐには理解できず、ザルバは戸惑っているようだ。

「1ヶ月に一度、鋼牙の一日はザルバのものなんだよね? それって、やっぱり… ちょっと羨ましい…」

そう言って笑うカオルは、寂しそうだった。
そんなカオルに、ザルバはすぐに声を掛けられない。
だが、そんなことはない、とすぐに言ってやりたくなった。

『カオル。おまえはそう言うが、鋼牙はおまえのこ…』

すると、そのタイミングで

  ぎしっ

と背後で音がしたので、ザルバは口を閉じ、カオルは振り返った。
カオルの振り返った先には、ソファで寝ていたはずの鋼牙が半身を起こしていた。

「鋼牙…」

カオルが声をかけると、鋼牙は立ちあがり近づいてきた。
そして、台座に据えられていたザルバを取り上げ、左手中指に嵌(は)めた。
その一挙一動をじっと見つめていたカオルに、鋼牙は言う。

「カオル、出かけてくる。
 夕食までには戻ってくると、ゴンザに伝えてくれ」

鋼牙はカオルを穏やかに見つめると、手を伸ばして髪を撫でた。

「…うん、伝えとくね」

カオルは口角をあげ、優しく笑う。
鋼牙はわずかにうなずいた後、次の瞬間には、表情を引き締めていた。

「ザルバ、行くぞ」

『ああ』

ザルバに対して、言葉よりも多くの意思を視線で交わした鋼牙は、すぐに歩き出し、書斎のドアの向こうへと消えていった。




屋敷を出た鋼牙は、白いコートの裾を翻し、大きなストライドで歩いていた。

『おい、鋼牙』

「なんだ?」

『聞いていたんだろう?』

「…」

ザルバの言わんとすることが何なのか、なんとなくわかりつつも鋼牙は無言で歩く。

『そろそろいいんじゃないか?』

「何がだ」

『カオルのことさ』

「何が言いたい?」

訝し気に眉根を寄せた鋼牙が足を止め、ザルバを見下ろす。

『魔戒騎士として俺様と契約を交わしているように、男として… おまえもそろそろカオルと交わしていいんじゃないのか?』

「…」

『カオルは俺様のことを羨ましいと言っていたが、魔戒騎士でないおまえの時間はすべてカオルのも…』

「ザルバ」

黙れ、とばかりに強い圧を込めて鋼牙が睨む。

「無駄口たたいてないで行くぞ!」

そう言うと、鋼牙は再び歩き出す。

『へいへい… 余計なお世話、ってことだな?』

口調こそ拗ねているふうだったが、ザルバはすぐにクククと笑った。








その夜。

明かりの落とされたベッドの上にカオルを組み敷いて、猛々しさと艶っぽさを秘めた熱いまなざしをした鋼牙が

「カオル…
 今夜、俺はおまえだけのものだ」

と言った








          …かどうかは、カオルのみが知っている。



fin
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::


PCの機嫌を取りながらの「契約の一日」。
PCが起動しなかったり、書いてる途中で落ちる(途中までの成果物も消える!)といったアクシデントに見舞われながらだったので、書く側のモチベーションと、読む側のモチベーションがガク、ガク、ガクンと失速しやしないかとハラハラドキドキしましたが、いやぁ、なんとか終わりました~ (はぁ~ よかった~)

1ヶ月に一度の契約の日については、みなさんもいろいろ思うところはあるんだろうなと思うのですが、今回のこの「契約の一日」は、書いているうちになんだか「その翌日」まで広がりを見せました。

カオルちゃんが魂を抜かれちゃった「遊戯」の回でも、カオルちゃんは倦怠感(?)でかなり辛そうでしたから、一日死んじゃってる状態の後なんて、たとえ魔戒騎士といえどパワー全開とはいかないんじゃないでしょうか、ねぇ?

仮死状態の鋼牙さんより「翌日」の鋼牙さんのほうが、カオルが目にできる分、切なさが溢れそうかも…
その辺、もうちょっと丁寧に書けるとよかったですが、そこはみなさんの妄想脳でしっかりと補填してくださいませ!

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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…



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