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きんのまなざし ぎんのささやき

牙 狼(冴 島 鋼 牙 Ver.)の世界を、気ままに妄想した二 次 創 作 サイトです

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見えないもの(2)

何やら未来が見えるおばあさん。
彼女には何が見えるんでしょう…


拍手[4回]



::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

キヨはやや上を向いて両手を合わせて目を閉じて、浮かんでくるイメージを言葉にしていった。

「カオルちゃんの笑顔が見えるわ… 隣にいるその人もと~ってもいい笑顔。
 んー… これは結婚式なのかしら? お相手の方のご兄弟やご両親… ふふふ、この方、親戚も大勢いらっしゃるのね。とにかく、たくさんの人たちがふたりの結婚を祝福してるわねぇ。
 あら… でも、残念ながらあなたのご両親の姿が…」

訝(いぶか)し気(げ)に眉をひそめたキヨが、ぱっと目を開けてカオルの方を見たので、カオルはこくんと小さくうなずいてから口を開いた。

「両親はいません。ふたりとも亡くなっています」

キヨに気を遣い、カオルはかすかに笑みを浮かべて見せた。
それに対してキヨもいたわるようなまなざしで微笑みながら

「まぁ… そうなのね。
 でも、その分、お相手の方のご家族があなたを温かく受け入れてくれるわ、きっと」

とカオルをそっと気遣った。
それを聞いたカオルは、キヨから視線をそらして空をぼんやりと見上げた。
そして、はぁっと小さく長い息を吐いてから

「そうなんですね…」

と呟くように言った。
それは、キヨに対して言ったというよりは、ぽろっとこぼれた言葉だった。



カオルは、決してキヨのいうことを信じないわけではなかった。
人知を超えた存在や世界があるのを、カオルは身をもって体験しているのだから、キヨが「見える」というのであれば「見える」のであろう。
でも…
キヨが見たというそのイメージを、カオルはすんなりとは受け止められなかった。
今、カオルにとって一番近い存在が他にいたから。



そんなカオルの様子を伺いながら、キヨはそっと声を掛ける。

「カオルちゃん… あなたのそばにいる人、なんだか普通の人じゃないのね?」

ハッとしたカオルが視線をキヨに戻した。

「とても過酷で、壮絶な道をたどる人…
 その人のそばにいるとあなたも…」

キヨは目の前にいるカオルとは別の、脳の奥底というか、意識の深い部分で見える彼女の姿を感じ取っていた。
何か底知れない邪悪な強い意思に翻弄され、暗く冷たい世界に引きずり込まれていく姿を。
この世界とは違うどこか異質な場所を、あてもなく彷徨うカオル。

キヨはぶるっと震えを感じた。
ほんの少し垣間見(かいまみ)ただけで、恐怖と絶望に襲われてしまう。

「カオルちゃんっ、あなた、早くその人からっ」

青ざめたキヨがカオルに警告しようと声を荒げると、

「キヨさん」

とカオルは静かだが、決然とした様子で彼女の言葉を遮った。
そして、ゆっくりと首を横に振った。

「カオルちゃん…」

キヨはそう言ったきり、言葉を失う。
それは、こちらを見るカオルのまなざしに一点の曇りもなく、それでいてとても穏やかだったから。

「…」

「…」

言葉もなく視線だけを交わしていると、やがて、折れたキヨが先に視線を足元に落とした。
そして、再び顔を上げてカオルに笑顔を見せた。
それは、もう仕方がないわね、という諦めも交じっていた。



「キヨさん、お話、楽しかったです。
 あの… あたし、そろそろ帰りますね?」

「ふふっ、そうね。わたしも楽しかったわ」

「キヨさんはまだお帰りにならないんですか?」

「わたし? 迎えがね、来ることになっているのよ」

そう言って辺りをきょろきょろと見渡したキヨが、あっ、と誰かを見つけて笑みを深めた。

「どうやら来たようよ」

カオルもキヨの視線の先を一緒になって見ると、とある男性の姿が見えた。
顔の詳細な造作までは見えないが、その歩き方などから、キヨの息子というには若過ぎるし、孫というには落ち着きがあり過ぎるように見えた。
そんな彼女の小さな疑問に気づいたのか、キヨは言う。

「甥なのよ。年の離れた妹がいてね。その妹の息子…」

へえ、そうなんですか、とカオルはそれ以上気にも留めずにキヨを振り返る。

「それでは、キヨさん」

「じゃあね、カオルちゃん。
 またどこかで会えるといいわね?」

「ええ」

ふたりともそんな偶然がこの先あるとは思っていないが、キヨもカオルも今日の出会いが楽しかったと思えたから自然にそう言っていた。

「それじゃあ」

最後に笑顔を交わしてカオルは立ちあがった。
そして、キヨに背を向け、歩き出す。



途中ですれ違ったキヨの甥だという人に、なんとなく会釈をしてからまっすぐ公園の外へと歩いていく。



「キヨおばさん! ちょっと遅かったでしょうか?」

「ううん大丈夫よ、ショウちゃん。お迎え、ありがとうね」

「いいえ。ところで… あの方、キヨおばさんのお知り合いですか?」

そう言って祥平は振り返ってカオルの後ろ姿を見た。

「違うのよ。今さっき会ったばっかりのお嬢さんでカオルちゃんっていうの」

「はあ、そうなんですか…
 それにしても、キヨおばさんってあいかわらず初対面の人でもすぐに仲良くなってしまうんですね」

「うふふ。若い方とお話するの大好きよぉ~ わたし…
 でもねぇ、フラれてしまったのよ」

「えっ、フラれたんですか?」

「っそ!
 あ、でもね、フラれたのはわたしじゃなくてショウちゃんだわ」

「ちょっ! 僕ですか?」

「そぉ~よぉ~」

「んんー、どういうことです?」

首をかしげて訝しむ祥平をスルーして、キヨは公園を出て消えゆくカオルに向かい、小さな声で呟いた。

「確かに見えたんだけどなぁ。ショウちゃんの隣で笑ってる彼女の姿…
 ひょっとしたら親戚になれるのかしらって、ちょっと期待したんだけど」

キヨのそんな呟きは祥平の耳にまでは届かず、祥平は

「キヨおばさん?」

と声を掛ける。
すると、キヨはすっくと立ちあがり、祥平はのけぞった。

「クヨクヨしていてもしょうがないわね。
 ショウちゃん! 帰りましょう!」

「?」

話の見えない祥平は疑問符を顔に張り付けていたが、すたすたと歩き出したキヨの後を慌てて追いかけた。
キヨの隣に追いついた祥平をちらりと横目で来たキヨは

「ショウちゃん、あなたも今年で33歳でしょ?
 誰かいい人いないの?」

と厳しい口調で言う。

「うっ…」

「お父様の会社できちんとお仕事して、真面目で優しくて…
 とってもいい子なのに、どうしてお相手が見つかんないのかしら」

「いい子って、キヨおばさん…
 僕もいい年なんだから、子ども扱いしないでくださいよ。
 いまだに、ショウちゃんって呼ぶのもどうにかなりませんか?」

「はいはい。
 あなたが、お嫁さんになってくれる優しくてかわいい娘さんを私に紹介してくれたら、子ども扱いなんてしませんよ?」

「うわぁ…」

祥平は胸を撃ち抜かれたかのように手を当てて痛そうな顔をする。

「…その日が早く来るよう、が・ん・ば・り・ま・す」

わざとらしく苦い表情をしてみせ、不貞腐れたように言うが、目を見合わせたかと思うと、ぷっと笑い合う伯母と甥。
キヨにとっては10歳以上年の離れた妹はかわいい存在だったが、その息子である祥平はそれに輪をかけて溺愛の対象であった。
だから、その祥平に素敵なお嫁さんが来てくれることが、今のキヨの願いなのだが。



公園を出ると、祥平が車を停めた駐車場の方へと向かう。
それは、カオルが向かった方向とは反対方向だ。
キヨはそちらをちらっと見てから、隣を歩く祥平を見上げた。

(ショウちゃん、あなたもきっといつか出会うはず。
 カオルちゃんたちに負けないくらいの絆を誰かときっと結んでちょうだい… ね?)



「ふふふ…」

「ん? キヨおばさん?」

「あら… なんでもないわよ?」

なんだかひとりで笑っているキヨに怪訝そうな祥平だったが、ひょいっと肩をすくめるだけで何も言わなかった。



「そこ、段差があるから気をつけて。」

「はいはい、わかってますよ。
 やぁねぇ、老人扱いしないでちょうだい」

差し出された手をキヨが払いのける。

「わかってますよ。
 僕がかわいいお嫁さんを連れてきたら、老人扱いさせていただきます」

(それまでは元気でいてくださいよ、キヨおばさん…)



fin
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::


あらぁ~
書いてくうちに、キヨさんとショウちゃんの会話を書くのが楽しくなっちゃいました。

書き始めたときにキヨさんに明確にモデルはいなかったんですが、お上品な感じで可愛げもある人がいいな、と思って書いておりました。

でもね、ショウちゃんとの会話を書いているときには、頭の中にとある人を思い浮かべて書いてましたねぇ。
誰かって? 美しいスキャットの、あのお方です。

書き始めと書き終わりとでは若干印象が違っているかもですが、まぁ、よしなに。

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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…



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