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なんどでも
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鋼牙が屋敷に戻ってきたのは、午後の早い時間だった。
3日前に屋敷を出てから帰るまでに思いのほか手間取ってしまったのは、単純に、元老院から示されたホラーの出現場所が遠かったことと、そこへの往復の際に運悪く魔戒道が塞がっていたからだった。
言うには及ばないが、目的地についてしまえばホラーを倒すのはあっという間であったことは、黄金騎士である鋼牙の名誉のためにも、一言、言い添えておこう。
『やれやれ、ようやく帰ってこれたか』
最短距離で目的地へとつながる魔戒道がなかったため、行きでは2回、帰りでは3回の乗り換え(?)を経て移動するルートを探す羽目になったザルバが、大きなため息とともにぼやいた。
「ご苦労だったな」
普段なら言わない労(ねぎら)いの言葉をザルバに投げかけたのは、鋼牙もまた移動に辟易(へきえき)した故であろう。
『ああ、まったくだぜ。あんな辺鄙な場所まで行かされるなんてな。
もうちょっと近場にいる魔戒騎士でなんとかならんものだったのか?』
なおもブチブチ文句を言うザルバに、鋼牙はちらっと目をやるだけで黙っていた。
『ま、それはいいとして…
ゴンザのやついないのか?』
いつもなら出迎えてくれる執事の姿が今日は見えない。
この時間なら買い物か何かで外出しているのかもしれない。
鋼牙はリビングに入るとコートを脱いで、自分でハンガーにかけた。
屋敷全体には結界が張ってあるし、ホラーの攻撃から魔戒騎士の身体を守る機能を備えたコートを脱いでしまうと、さすがの鋼牙もほっとする。
何気なくリビングをぐるりと見渡した後、一番よい場所に掛けられている ’あの絵’ に目を止めて、さらに肩から力が抜けると、それに呼応するかのようにザルバの意識も薄くなった。
どうやら、このままお休みモードに入るようだ。
鋼牙はさてどうするかと少し考えを巡らせてから、リビングを出る。
そして、足の向くままに、書斎とは別方向にゆったりと歩き出した。
廊下を歩きながら、庭に臨む窓から外を見る。
すると… 目的の人物の姿を認めることができた。
思わず、鋼牙の顔がふっと緩むが、本人にはその意識は少しもない。
今、鋼牙の意識は、晩秋の庭の片隅にしゃがみこんでいる彼女の姿にのみ集中していた。
心なしか足取りは速くなり、庭に面したフランス窓を開ける手間をほんの少し邪魔に思いながら外に出る。
やや茶色くなった芝生に降りると、一直線に歩き出す。
冴島邸の庭はすぐ近くに雑木林があるため、実際の庭の広さよりも奥行きが感じられて開放感が半端ない。
この庭についてはそれなりにゴンザも手入れをしているのだろうが、きちんと整えられた人工的な庭というよりも、あまり手を加えずにどことなく自然に近いような鷹揚さがあった。
カオルは結構、この庭は好きだ。
彼女自身は町中で生まれ育っていたが、自然が近いこの地に来てみて物珍しさも感じつつも、どこか心安らぐようななんとなく懐かしいような気持ちも覚えたのだった。
だから、自分の描く絵のモチーフになるようなものを探そうとか、作品のイメージ探しをしようとかいう目的で、というよりも、煮詰まった気持ちをほぐすとか、疲れた身体を癒そうとかいった意図でよく庭に出ていた。
今も、カオルは手に小さなスケッチブックは持っているもののそれは一切開かずに、名前も知らない植物をじっと見つめている。
よくよく見ると、その植物の茎を赤い小さなテントウムシがのぼっている。
中央の茎から枝分かれしている部分に差し掛かると、ちょっと迷うような素振りを見せつつも、何かに急(せ)かされるように上へ上へとのぼるテントウムシ。
その一生懸命な姿を、カオルは少女のように目をキラキラさせて見つめている。
いったい何をそんなに夢中で見ているのかはわからないが、庭の片隅でしゃがむカオルに向かって、鋼牙はそっと近づいた。
ここからは彼女の顔は見えないが、時々、何かを右から見たり、左から見たり熱心に見つめている様子は伺える。
その後ろ姿だけで、なんとなく彼女の表情まで透けて見えてしまいそうに鋼牙は思うのだ。
このまま彼女の邪魔をしたくない気もする。
でも… やはり、彼女の顔が見たい。
「カオル」
澄んだ空気を微かに震わせて、鋼牙の声が響く。
すると、2メートルほど先のカオルがふっと顔を上げて、そして勢いよく立ちあがりながら振り返った。
その拍子に、膝に置いていたスケッチブックが地面に落ちてしまうが、そんなことには一切意識は揺らがない。
少し目を瞠(みは)って、鋼牙の姿を確認した後、カオルの顔に笑みが広がる。
さっきまでのテントウムシに向けて見せていた笑顔とは全然違う、喜色満面の笑みだった。
「おかえりなさいっ」
そう言いながら数歩、小走りに鋼牙へと近寄る。
鋼牙もまた、大きな歩幅でカオルとの距離を縮める。
「今、戻った…」
鋼牙はそう応えると、そっと手を伸ばしてカオルの髪を撫でる。
カオルは少し恥ずかし気にちょっとだけ目を伏せたが、もう半歩鋼牙に近づき、距離を狭めてから目線をあげて鋼牙を見た。
しばらく言葉もなく笑顔を交わし合っていたが、鋼牙は彼女の背に腕を回し、反対の手はカオルの腰を引き寄せた。
長身の鋼牙の腕の中にすっぽり包み込まれたカオルは、少しだけ驚き身体を強張らせたが、すぐにほぉっと力を抜いて鋼牙にもたれかかる。
「カオル…」
鋼牙の彼女を呼ぶ声が、今度は鋼牙の身体を通してカオルの耳に響くのを聞いて、カオルはぶるっと震えそうになる。
そのくらい、鋼牙の声が彼女の深いところを揺さぶるのだ。
気持ちが落ち着くまで続いた抱擁がやがてほどけると、視線を交わすことのできる距離まで身体が離れた。
そして、また、名前が呼ばれる。
「カオル」
その他には言葉はない。
鋼牙の声音は、カオルをほんの少し泣きたいような気分にさせたのだが、すぐにぷっと噴き出した。
そんなカオルの様子に、鋼牙は訝し気に、
「カオル?」
と問いかける。
そのきょとんとした顔に、カオルはさらに笑ってしまう。
「もう、鋼牙ったらぁ~ さっきから、’カオル’ って名前ばっかり言ってるよ?
他の言葉、忘れちゃったの?」
ちょっと茶化すように言うカオルに、鋼牙はそうだったろうかと視線を外して思い返してみる。
(ああ、確かに…)
鋼牙を見ながら、カオルはまだクスクス笑っているのだが…
「何度でも呼びたい気分なんだ。今は…」
鋼牙にしれっとそんな風に言われて、カオルの表情がぴたりと固まる。
「…………えっ?」
鋼牙の言葉の意味をたっぷり時間をかけて理解したカオルから、戸惑いの声が漏れると、彼女の頬がふわっと染まる。
が、そんなこと、鋼牙はお構いなしだ。
「カオル…」
そっきまでの呼びかけにはなかった艶めいた音色をぐ~んと含ませて、また名前が呼ばれた。
そして、カオルは何も言えなくなる。
自分の名前を呼ぶその唇に、自分の口が塞がれてしまったのだから。
fin
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はい! ちょっと甘めの妄想… でしたっ!
鋼牙さんには、甘いことを素でさらっと言ってほしい selfish です。
「さらっと」言えてましたかね?
妄想の中で、何度も「カオル」と呼んでますが、多分、それぞれみんな違うテイストで呼んでる気がします。
きっと、Kくんならそれを実演してくれそうだな、という期待を込めて…
何度でも名前を呼んでほしいなぁ~ ねっ♡
コメント
selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…
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