忍者ブログ

きんのまなざし ぎんのささやき

牙 狼(冴 島 鋼 牙 Ver.)の世界を、気ままに妄想した二 次 創 作 サイトです

最近の’妄想’
2025/12/31 ・・・ ようこそ
2023/12/24 ・・・ 金牙新年!
2023/12/03 ・・・ 冬ごもり大作戦(2)
2023/11/19 ・・・ 冬ごもり大作戦(1)
2023/10/15 ・・・ とある秋の日
2023/08/06 ・・・ いちばんの存在(6)
2023/07/30 ・・・ いちばんの存在(5)
2023/07/09 ・・・ いちばんの存在(4)
2023/07/02 ・・・ いちばんの存在(3)
最近の’お礼’

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

少し未来の

日に日に寒くなる今日この頃です。
人肌恋しいなぁ~

あ、いえ、今宵の妄想には何の関係もないですけどね。
「人肌」、一切関係ないです。はい…


拍手[11回]



::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

『おい、鋼牙』

都会の中にあって緑のオアシスとなっているような公園の中を大きなストライドで横切っていたとき、左手中指から声が掛かった。
鋼牙は素早く周囲に目を配り、問題ないことを確認してから、左手の拳と向き合った。
なんだ、とでもいう視線を向けられて、その手に嵌った髑髏の形状をした指輪がカチカチと軽やかな金属音とともにしゃがれた声で話し出す。

『今通り過ぎた、左側に伸びる並木道のほうにいる赤ん坊を抱いた女… 見たか?』

鋼牙は姿勢をそのままに、険しい目線をザルバの言う方向に向けた。
その瞬間、鋼牙の周りの空気がピリッと引き締まる。
すると、ザルバは緊張感の欠片もない口調で続けた。

『ああ、安心しろ。
 その女はホラーなんかじゃあ、ない!』

ザルバの言う並木道から2メートルほど行き過ぎた位置で足を止めた鋼牙からは、その女の姿は見えない。

ホラーではないという女に、ザルバは何の興味を引かれたのか?

その答えに見当などつかない鋼牙は、怪訝に思いながら、ゆっくりと今来た道を戻った。

(あれか…)

鋼牙の視線の先には人影はまばらだ。
そのおかげで、ザルバの注意を惹いた女の姿を、すぐに確認することができた。
日が傾き、弱くなった日差しの中、明るい日陰を作っている広い道のちょうど真ん中あたりに女の姿があった。

抱っこ紐の中の赤ん坊を支えるように両手を添えた女は、鋼牙のほうに左半身を向けていて、どうしたわけか空を見上げていた。
それに釣られて、女への注意を外さないままに、鋼牙はちらりと女の視線の先に目をやる。
けれども、取り立ててそこに何かがあるようには思えなかった。
ほんの少し黄色っぽく色の変わった並木の木立の葉の上に、輪郭が空に解けるようにかすれた白い雲があるだけの、ごくありふれた空が広がっているだけだった。

さらに1歩2歩と足を進め、女の顔が見えるように足を進めた。
すると、それに合わせるかのように、女も見上げていた目線をゆっくりと降ろしてきて、赤ん坊の顔を覗き込んだ。
空を見上げていた時には凛として鋭くも感じられた目が、赤ん坊と目が合った瞬間、慈愛溢れる温かなまなざしに変わり、口元には笑みが浮かんでいた。

「っ!」

鋼牙は、女の顔を見て目を見開く。
なぜなら、その女の顔は、鋼牙がよく知る女性の顔にとてもよく似ていたからだ。
鋼牙の反応を見て、ザルバは

『どうだ? 驚いたか?』

と、まるでいたずらが成功したように満足げに言った。
返す言葉もなく、ただじっと女を見つめる鋼牙に、ザルバはなおも言う。

『この世にはそっくりな人物が3人いる、って言うがな。
 あそこまで似ているとは驚きだよな?』

(確かに…)

ザルバには答えなかったが、鋼牙も胸の中で同意していた。
赤ん坊に優し気に微笑みかけている女は、カオルにとてもよく似ていた。

だが、間違いなく、その女はカオルではない。

違っているのはカオルよりも短い髪の長さ。
そして、幾分、ふっくらとした面差し。
年齢もひょっとしたら、少し上かもしれない…

カオルとの違いを数えながらも、それでも、そっくりだと思わざるを得ない。

『雰囲気はやっぱり少し違うか?
 向こうは母親なだけに、やっぱりどこか落ち着いた感じがするな…』

「そうだな…」

ここにきてようやくザルバに同調するように返事をした鋼牙。

『なんか、あれだな…』

「ん?」

『ちょっと未来のカオルを見てるような気がしてくるな?』

そう言われて鋼牙はどきっとした。
すると、ザルバの言葉に感化され、目線の先の女とカオルの姿が重なるように見えてくる。

(カオルの未来…)

ほんの少し動揺しつつも、鋼牙のまなざしが柔らかくなったのを、鋼牙は自分では気づかなかった。
それを見てニマニマするのはザルバだ。




なんとなく穏やかになった空気…
でも、それも次の瞬間、シャボン玉がパチンと消えてなくなるように弾けて飛んだ。

「みかっ!」

男性の声が響き、赤ん坊を抱えた女がその声のほうにパッと顔を向ける。
女のそばに急ぎ足で近づいたのは男で、恐らくは彼女の夫であり、赤ん坊の父親だろう。
女の腰に手を添えて引き寄せると、彼女の胸に抱かれた赤ん坊をあやすような表情を見せた。

すると、それを見た鋼牙の顔から表情が消えた。

なおも見ていると、今度は女と男が顔を見合いながら何かを話し、ふわっと笑顔になった。
その笑顔は、先程見せた母親の慈愛の笑みではなく、まさに「愛されている女性」の輝くような笑顔であり、匂い発つような色香が含まれていた。

ジリリと鋼牙の胸に嫌な痛みが走ると、面白くないと思っているその心のうちがそのまま表に出て、深い皺がその眉間に刻まれた。

(やれやれ…)

ザルバは密かに溜息をつく。
そして、若干あきれながらも

『おいおい、あいつはカオルじゃないぞ?』

と言ってやった。

「…わかっている」

憮然とした低い声が一言、そう告げた。

『ならいいが…
 それじゃ、ま、さっさと仕事を片付けて帰ろうじゃないか』

「ああ…」

いまだ不機嫌さの残る声でそう返事した鋼牙は、再び、女のほうに視線を向けた。
すると、女は男と共に歩き出していて、最初に見かけた場所から遠ざかっていた。
男は女を守るように腰に手をやり、女は嬉しそうに時折、こちらに横顔を見せて笑顔で男に話しかけているのが見える。

彼女はカオルではない。
そうわかっていても何かすっきりしないことに、鋼牙はやりきれないような思いだ。
でも…
それとともに、無性にカオルに会いたい思いが募った。
あの男のように、この手に彼女の体温を感じ、彼女の香りに包まれたくなっていた。

鋼牙はふぅっと大きく息を吐き、くるりと踵(きびす)を返した。
そして…

「ザルバ、行くぞ!」

甘さも緩みも一切ない声音でそう言うと、迷いなく歩き出した。
ただ、前を見つめて…
ほんの少しだけ、思いを愛しい女性(ひと)に馳せながら…



fin
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::


う~ん、何を妄想しよう…
そう思いながら、美佳ちゃんのブログなんぞを覗きに行って、2020/10/13のお誕生日の記事に載せられていたとても雰囲気のある写真…
この写真を見ながら、妄想させていただきました。

この写真の美佳ちゃんの中に、鋼牙はカオルの姿が見えるのだろうか?

はい、うん、そんな感じです。
美佳ちゃんのご主人にもご登場(?)頂いて、ちょっと悶々とする鋼牙さん。
クスクス…
そんなこと、あったらいいかな~ なんてね!

コメント
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…



hitori 様[07/08]
tomy 様[07/27]
麗羽 様[08/23]
夕月 様[12/22]
夕月 様[07/15]
こちらから selfish 宛にメールが送れます。
(メールアドレス欄は入力しなくてもOK!)

PR
忍者ブログ [PR]
Template by repe