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自分にできること(4)
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動かなくなってしまった号竜を抱えて ’あかどう’ に戻ってきたシグトは、その鉛のように重い身体をソファに投げ出して大きな吐息をついた。
「はぁーっ、つっかれたぁー」
そんなシグトに呆れたような視線をちらっと向けた烈花は、それでも何も言わずに、腕を組んだまま戸口の壁に肩を預けた。
レオはというと、最後に部屋に入り、やはり少し疲れた表情で弱々しく笑みを作る。
「お疲れ様でした…」
レオから労(ねぎら)いの言葉をかけられて、シグトは慌てて立ち上がった。
「あああっ、ど、どうぞ座ってください!
レオさんが一番疲れているのにっ!」
そう言って、レオのほうに歩み寄り、ソファへと誘(いざな)った。
だが、すぐにレオは手をあげてそれを制す。
「ありがとうございます。
でも… まずは号竜を見せてもらえませんか?」
「そんなっ!
レオさんには元老院まで往復してもらったり、さっきはホラーまで浄化してもらったし…
少しは休んでいてくださいよぉ。号竜を見てもらうのは、その後で十分ですから!」
シグトは焦った様子だ。
「いえ、号竜をこのままにしておくのは落ち着かないっていうか…
これはもう、ぼくの性分なんで、気にしないでください。
ただ、その代わりというか…
申し訳ないですが、ホラーの件の報告はお願いしてもいいでしょうか?」
「もちろんですっ!
そんなことくらいワケないですから!
…でも、本当にいいんですか?
無理しないでくださいよ?」
「あはは… 大丈夫ですよ。
ぼくだって魔戒騎士の端くれですし、鍛えてます!
疲れたら適当に休みますし、無理なんかしませんから」
「そうですか… じゃ、俺は報告してきます。
あっ、この部屋は自由に使ってください。
足りないものがあればなんだって言ってもらえばいいし…
あとで、夜食になんかつまめるものも用意しておくんで!」
「それはありがたい…
すいません、じゃあ、場所をお借りします」
そう言って、動き出したレオが、またすぐにシグトを振り返る。
「ああそうだ。シグトさんたちはやることが済めば、俺に構わず休んでください。
放っておいてもらえた方が、お互い気を遣わずにすむでしょうから…」
そう言うと、レオはシグトたちの返事を待たずに、足元にあった鉄の鞄と化してしまった号竜を持ち上げて、テーブルの上に降ろした。
そして、労(いた)わるように号竜に片手を添えて目元を緩ませる。
が、すぐに表情を引き締めたかと思うと、背中の荷物を肩から降ろしてさっそく修繕の用意に取り掛かった。
そんなレオの様子をじっと見守っていたシグトと烈花は、黙ったまま視線を交わして、レオの邪魔にならないよう部屋からそっと出て静かにドアを閉めた。
その後、シグトは「疲れた」などと言っていた割には、報告やらレオの夜食の用意やらとくるくる動き回っている。
そんなシグトに「先に風呂に入るぞ」と声を掛けた烈花は、ゆっくりと湯舟に浸かりイイ感じにオフモードに移行していった。
風呂から上がり、すっかりリラックスできた烈花は、自分のベッドへと向かう途中、レオのいる部屋をそっと覗いてみた。
案の定、中には真剣なまなざしで号竜の修繕に取り組むレオの姿があった。
烈花の見る限り、レオが休みらしい休みを取ったのは、シグトたちと夕食を囲んだ数十分だけだ。
元老院からここまで来て、すぐに号竜の不調の原因を探るべく調査に入り、修繕に必要な聖獣の髭を取りに元老院まで戻り、すぐに引き返しているはず。
そして、ここに戻ってきたかと思えばホラーの浄化を行って、そのまま号竜の修繕に取り掛かっているのだ。
いくら鍛えているとは言え、さすがに疲労は蓄積され、集中力もぐんと低下しているのではないだろうか?
低級とは言えホラーを浄化できる号竜を触るということを考えれば、デリケートな操作なども必要なのではないか?
ましてや、聖獣の髭を扱うのであれば、ちょっとしたことで大事故につながることもあるかもしれない。
(やはり、少し休めというべきか…)
そう考えた烈花はドアを大きく開こうとして、すんでのところで思い直して手を止めた。
それは、一心不乱に号竜に向き合っているレオのまなざしがどこまでも真っすぐで熱を帯びて見えたからだ。
少しの迷いもなく、号竜の分解を進めていたレオが、その手を止めてあるものを取り出した。
それは、恐らく聖獣の髭と思われた。
30cmほどの細長い針金状のそれは、ゆるくカーブを描いていて、柔らかな白い光を放っていた。
それを手に取ってから、レオのまなざしがより鋭くなった。
そんなレオの様子を目(ま)の当たりにして、烈花は自分が心配するようなことは何もないことを確信した。
烈花は邪魔をせぬよう、そっとドアを閉めた。
そして、そのままベッドに向かうと、すぐに眠りへと落ちていった。
翌朝。
すっきりと目覚めた烈花はベッドを抜け出す。
どうやらシグトもまだ起きていないようだ。
そう言えば、自分がベッドに入るときになっても、シグトはなんだかんだとバタバタ動き回っていたなということを思い出す。
(あいつも疲れてるんだろう。
まだ当分起きないかな?)
そう思いながら烈花は
(そう言えば…)
とレオのことが気になった。
ドア越しに中の様子を窺うが、しーんとしていて何も聞こえない。
烈花はスットドアを開けてみた。
すると、そこには、昨夜、作業をしていた椅子に座ったまま机に突っ伏して眠っているレオの姿があった。
(やれやれ…)
そう思いながら烈花は部屋に入ると、すぐに、ソファーの前のローテーブルに、シグトが用意したと思われる夜食が手付かずなまま残されているのが見えた。
その夜食のそばには、細かい字がびっしりと書き連ねられたメモがある。
シグトの字だ。
ざざっと斜め読みするに、夜食のことや、風呂のこと、別室に寝床も用意していることなどが書いてあった。
タオルはどこそこにあるのを好きに使え、だの、パジャマも嫌じゃなければ使ってくれ、だの、ものすごく細かいことまで書いてある。
(おまえはオカンか!)
と思わず烈花は心の中でシグトに突っ込む。
そして、そんな面倒臭いくらいにお節介焼きなシグトへの愛おしさも覚える。
と同時に、そんな細やかな気遣いに、まったく、完全に、全然気付かれていないことに少しの憐みもまた覚えていた。
(まったく、こいつときたら…)
烈花はメモから顔を上げ、レオの方を見る。
テーブルの上の号竜は、ひとつの部品も残さずにきれいに組み立てられていた。恐らく、これで号竜の不調は改善されているのであろう。
そして多分、それを確認したと同時に、夜食に手を付けることもなく、風呂に入ることもなく、この男は電池が切れたのではないだろうか?
せめて、ソファで横になるくらいすればいいのにと思わなくもないが、恐らくそんなことにすら使うエネルギーが残っていなかったのだろう。
起こして部屋で休めと言おうかとも思ったが、前後不覚に眠りこけているレオを起こすのは、なんだかかわいそうに思えたので、烈花はソファのところにあった毛布(これも多分シグトが用意したのだろう。どこまでもマメな男だよ…)を手に取り、レオの背にそっと掛けてやった。
そうしておいて、起こしていないかとレオを顔を覗き込んだ烈花は、一向に起きる気配のないレオに安心した。
そんな烈花の表情は、いつになく柔らかかった。
to be continued(5へ) ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
コメント
selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
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