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きんのまなざし ぎんのささやき

牙 狼(冴 島 鋼 牙 Ver.)の世界を、気ままに妄想した二 次 創 作 サイトです

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自分にできること(5)

号竜はなんとか修理が完了したようです。
魔界騎士は心身ともにタフさが要求されますが、それにしてもレオくんってば働き過ぎ!
…お疲れさまです!

拍手[5回]



::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

レオが眠りから覚めたのは、それからそれから1時間ばかり経った頃だった。
深い眠りから浮上した意識とともに、レオの瞼がゆっくりと開かれる。
そのまま二度三度とまばたきを繰り返すとともに意識は急激にはっきりとしてきて、レオはガバッと身体を起こそうとした。
がすぐに、

「うっ」

と小さくうめき声をあげて、身体をくの字に折ってしまった。
というのも、数時間とはいえ机に伏せって無理な体勢で寝ていたがために、身体のあちこちがキシキシと軋(きし)むように痛んだからだ。
しばらくその態勢のままじっとしていたが、痛みが少しはマシになったのを待って、今度はゆっくりと身体を起こした。

すると、スルリと何かが肩から滑り落ちて床に広がった。
それと同時に背中がなんとなくスースーする。

「ん?」

見ると、そこには毛布が…
号竜の修理が終わって寝落ちしてしまったレオのために、誰かがかけてくれたのだろうか、と思いながら、レオはそれを拾ってたたみ始めた。
きれいにたたみ終えた毛布を、今までレオが座っていた椅子の背にそっと掛けてから、ふと机のほうに目を戻す。

「あれっ?」

そこには、昨夜、いや正確には今朝の未明にかけて修復したはずの号竜があるはずなのに、影も形もなく消えていた。
よもや盗まれた? まさか… とは思いつつ、レオはシグトを探しに足早に部屋を出て行った。

薄暗い廊下に出て、まずは店の方に向かった。
が、まだ開店前なのか、しんとした店内には誰もいなかった。
すぐに引き返したレオは、人の気配を求めて奥へと向かう。
すると、薄暗い廊下の先に、外からの光が差し込む窓が見えた。
ずんずんと突き進み、その窓から外を覗く。
外の光景を目にしたレオは、そこにあるものを見て、ふぅっと息を吐き、肩から力が抜けた。

なぜなら、そこにはシグトの姿があり、シグトのそばには号竜があったからだ。

シグトの持つ魔導筆の先で、号竜はジャンプしたり、右や左にぴょんぴょん飛び跳ねたりしている。
その動きに満足しているのか、シグトの表情も満足げで口元には笑みが浮かんでいるのが見えた。
その傍(かたわ)らには烈花の姿もあり、腕を組んで片側の足に体重をかけるような恰好でシグトらの様子を眺めていた。

レオは窓の鍵を外してガラガラと開けて声をかけた。

「シグトさんっ!」

シグトはすぐに気づき、

「レオさん! おはようございます!」

と人好きのする笑顔を向ける。
レオはきょろきょろと辺りを見回して、シグトたちのいるところに出られる場所を探す。

「あっち! あっちです、レオさん!」

そう言うシグトの声に、彼の方に目を向けると、シグトは指である場所を差し示していた。
シグトの指の先にはドアが見えている。
レオは大きくうなずいて見せてから、その場に急いだ。
ノブに手を掛けてギィッと耳障りな音をさせながらドアを開いたレオは、シグトたちの元に着くと足を止めた。
レオが口を開けて、何かを言おうとするよりも先に、シグトが興奮気味に喋り出した。

「ありがとうございますっ、レオさんっ!
 すっげぇイイですっ! こいつ、最高っす!」

シグトは片膝をついて号竜の頭を愛おしそうに撫でながら、レオを仰ぎ見た。
それを聞いてレオは心から安堵したように

「それはよかった…」

と呟いて、すぐに真剣な目をしてシグトにこう言った。

「実は、部品の交換に加えて、全体的に可動域を広げるように調整もしてみたんです。
ほんとは、もう少し広げられるんですけど、それだと操作性も悪くなるし…
 これまでとあまりに変えてしまってはシグトさんも扱いづらくなるんじゃないかってこともあって、その辺の感覚については動かしてみての感想を是非聞いてみたいと思っていたんです。
 どうですか? 何か違和感などないですか?」

それを聞いたシグトは、ぶんぶんと首を横に振ってから立ち上がった。

「そんなぁ、全然ですっ! 違和感なんてひとつも感じなかったですっ!
 むしろ、前よりしっくりくるっていうか!
 こう動いてほしいなってことがスムーズに伝わってる感じがして驚いたっていうか…

 とにかく、めちゃくちゃ良くなっていますっ!」

前のめりに力説するシグトに驚きながらも、

「そうですか。それを聞いて安心しました」

と、レオは喜びに頬が緩む。
そのなんともほのぼのとした雰囲気の中、烈花が

「おいっ」

と、割り込んできた。
レオとシグトはその声に同時に彼女を見る。
すると、少し呆れたように烈花は言った。

「おまえら、号竜のこともいいが、レオは朝飯まだなんだろう?
 夜食も手付かずだったみたいだし、腹減ってるんじゃないのか?」

それを聞いて、レオは咄嗟に腹に手をやり、シグトは青くなった。

「あーっ!
 レオさん、気づかなくってすいません!
 すぐにっ、ほんと、すぐに用意しますんで食べてくださいっ!」

慌てまくったシグトは、魔導筆を操りながら号竜を元の鞄の形状に戻してから、バタバタと屋内に駆け込んでいった。
それを見送ったレオは口をポカンと開けていたが、我に返るとチラリと烈花を見た。
烈花はひょいっと肩を竦めて見せてから、

「働かせるだけ働かせておいて、ひもじい思いをさせてすまないな。
 まあ、シグトの飯、食ってってくれ」

と言った。

「はぁ…
 いいんでしょうか?」

戸惑いながら尋ねるレオに、

「問題ない。…というか、むしろ食べてくれたほうが、あいつもおまえに少しでもお返しができて嬉しいと思うぞ?」

とさらっと答えた。

「そうですか… なら、いただきます」

「…」

「…」

なんとなく微妙な間ができてしまった。
それと言うのも、烈花がその場を動かず、歩き出さないためだった。
かと言って、レオが先になって歩くのもどうかと思い、何もできずにいた。

(うーん、どうすればいいだろう…)

烈花の気配を意識しながら、レオはちょっと考えた。
すると、

「なあ…」

急に、烈花の方から声がかかった。
レオは、どきっとしたのを気取られないよう、

「…はい」

と努めて低めの声で応じた。

「少しは休めたのか?」

烈花から何を言われるのかと身構えたレオは、その質問の内容に一瞬放心した。

「えっ、あっ、はい…
 十分、とは言えないかもしれませんが、まあ、それなりには…」

「…そうか」

「…」

「…」

(う、うーん、気まずい…)

落ち着きなく、視線の定まらないレオ。

「あの…」

と口を開きかけたときに、烈花の

「この後…」

という声も重なった。

「あ、どうぞ…」

レオが烈花に会話の主導権を譲る。
それを受けて、烈花は話し出す。

「この後、もう少し時間をくれないか?

 シグトの用意した飯、ゆっくり食べてってほしいんだ。
 その間に、シグトにはもう少し号竜を試運転させてやってくれ。
 それで、何か号竜の動きで微調整が必要なものが見つかるかもしれないから…
 昨日から碌(ろく)に休ませもせずにこき使うようで悪いんだが、せっかくの機会だから。

 もちろん、すぐに帰らなければならないのなら、無理にとは引き留めない」

真っ直ぐにレオの目を見てそう話す烈花に、レオはちょっと考えてから答えを返す。

「いえ、急ぎの用はないと思います。もちろん、後で元老院に伺いは立てますが。
 僕としても、号竜を使ってもらっての生の声を聞かせてもらえるのはいい機会です。
 烈花さんたちさえよければ、もう少しの間、お邪魔させてください」

それを聞いて、烈花は無言でうなずく。

すると…

「おーい、食事の用意できてますよー
 冷めちゃいますから、早く来てくださーい!」

と呼ぶシグトの声が聞こえてきた。



to be continued(6へ)
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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…



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