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きんのまなざし ぎんのささやき

牙 狼(冴 島 鋼 牙 Ver.)の世界を、気ままに妄想した二 次 創 作 サイトです

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旅立つ者へ(2)

グレス様の元に衛兵が!
はてさて何があった(ある)んでしょうねぇ?

拍手[7回]



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入室を許された衛兵が、手にしていた槍状の武具をトンと床に付くと頭(こうべ)を下げ、すかさず口を開いた。

「グレス様。
 急ぎ謁見の間へお越しください」

「何事です?」

「それが、グレス様にじきじきにお目通りをと願う者たちがおりまして…」

「者たち?」

「はっ。
 魔戒騎士や魔戒法師たちが直接、あるいは、番犬所を通してグレス様に話があるとのことで」

それを聞いたグレスは一瞬訝(いぶか)し気な表情を見せたがすぐに立ちあがり、

「わかりました」

と衛兵に答えてレオと目配せを交わしたかと思うと、謁見の間へと急ぎ向かった。




神々しいほどの真っ白な光に包まれた謁見の間にやってきたグレスとレオは、その有様に大きく目を見開いた。
グレスと直接、目通りが許されている一部の魔戒騎士や魔戒法師たちがその場に跪(ひざまず)いているだけでなく、グレスとの目通りを望む魔戒騎士や魔戒法師たちの映像が、透明な壁にかかる絵画のように、謁見の間のそこかしこに浮かんでいた。

「これは…」

思わず呟いたレオであったが、さすがにグレスはすぐに毅然とした態度で、その場に跪(ひざまず)いている魔戒騎士に声を掛けた。
「迅駆騎士 牙人(ガント)。
 これは一体どうしたことです?」

その声に、最前列の男が顔を上げた。
恐らくその男は、並みいる魔戒騎士の中でも、年齢的にも実力的にもリーダー的な存在なのであろう。
数々の修羅場を潜り抜けてきたことがいやでもわかる鋭い目が、グレスをひたと見る。

「グレス様。
 本日はお願いがあり、同じ想いの魔戒騎士、魔戒法師たちを引き連れて、こうして不躾にも押しかけてまいりました」

神官の中でも上位クラスのグレスを前にしても動じないその男は、グレスに目線で促されて、さらに言葉を続ける。

「冴島雷牙が… 黄金騎士 牙狼の鎧を継ぐ者が任を離れて旅に出たと聞きましたが、真(まこと)のことでしょうか?」

牙人の低い声が、謁見の間に響き渡る。

「…」

グレスはしばらくの間、何の表情も作らずに牙人を見据えたまま黙っていたが、やがて、静かに口を開いた。

「はい。冴島雷牙は旅に出ました。
 ですが、これは、彼がガジャリと交わした契約に基づいたもの…
 決して、勝手に任を離れたわけではありません」

グレスの言葉は半分は合っているが、半分は間違っていた。
確かに、ガジャリとの間に契約を交わしたのは雷牙であったが、その契約の実行者としては、彼の父、冴島鋼牙が名乗りをあげ、ガジャリによって了承されていた。
したがって、雷牙が旅に出る必要はなかったのだ。

けれども、グレスには、いまだ牙人の心のうちが読み切れていない。
そんな状況で、そのことをあからさまにすることは、雷牙への反発が強まる恐れがあると思い、意図的に庇うような物言いをすることにしたのだ。

グレスの言葉を聞いて、牙人の後ろに控える魔戒騎士や魔戒法師たちが

「やっぱりそうだったのか…」
「冴島雷牙はもういないんだ…」

といった囁きがひそひそと交わされた。

すると、その囁きを断つように、牙人が

「それならば!」

とひときわ声を大きくした。
そして、

「冴島雷牙の抜けた穴について、どのようにお考えか?」

とグレスに訊いた。
ふうっと、グレスは小さく息を吐いてから話し始めた。

「冴島雷牙が不在となることで、皆(みな)には彼の分も分担して働いてもらわねばなりません。
 その点は申し訳ないと思っていますが、できるだけ負担の増えぬよ…」

「グレス様」

牙人たちの説得を試みようとするグレスを、牙人が強い調子で遮った。
その迫力に、さすがのグレスも口をつぐむ。

「勘違いなさらないでください。
 我々は、冴島雷牙が旅に出たことを責めるわけでも、彼のいない穴を埋めることに不満があるわけでもありません。

 ホラーを斬ることは我らの使命…
 魔戒騎士は、指令が下ればそれに従うだけです。

 むしろ、グレス様にお伝えしたかったのは、ここに控えている者たちは率先して働く意思があるということなのです」

牙人の言葉に、グレスもレオも目をみはるばかり。

「我々の中には、ホラーとの闘いの中で、冴島雷牙の手を借りた者もおります。
 そして、我々の父親たちは、彼のお父上に命を救われております。
 詳しいことはわかりませんが、今回のガジャリとの契約も、何らかの大きな敵との闘いにもとづくものなのでしょう?
 ならば、残った我々は、彼が戻ってくるまでの間、立派に使命を果たすまで…

 そして、その想いは、ここにいる我々だけでなく、グレス様に謁見を求めている彼らもまたそうであるのかも…」

そんな牙人の言葉が届いているのか、謁見の間に浮かぶ映像の中からひとりの声が届く。

「グレス様!」

「おまえは閑岱の…」

「はい。白夜騎士 打無(ダン)の鎧の継承者、山刀翼。
 グレス様にご報告とお願いがあります」

「報告… なんですか?」

「この度、打無の鎧を我が息子に継承させます」

「それは、なんとも明るい知らせ…
 そなたの息子にも、そなた同様、大きく期待します」

「ありがとうございます。
 それにつきまして…
 鎧は息子に継承しますが、私自身もまだまだお役に立てるものと思っております。
 冴島雷牙のいない穴を埋める人員のひとりとして、息子ともども、私も数に加えていただきたいと…」

「おお…」

グレスは翼の言葉に思わず声が出た。

「グレス様」

すると今度は翼の横から邪美も顔を出す。

「そなたは… 邪美ですね」

「はい。
 私からもご報告が…」

「なんでしょう」

「私の娘も一人前に仕上がっております。
 親バカと笑われるかもしれませんが、親の私ですら冷や汗をかかされるほどの成長…
 また、今年、閑岱で魔戒法師として巣立つ子たちはどの子もとても優秀なので、必ずやお役に立てるはずです」

「それはなんとも頼もしい…
 邪美から太鼓判が押された子たちのこれからが楽しみです」

そのあとも、自分にも指令をまわせ、だの、自分で役に立てることはなんでもする、だの、雷牙がいなくなった不安を払拭するような、力強くも温かい声があちこちからグレスにかかった。





ひととおり、皆の話を聞き終わった後、

「みんな… 礼を言います」

グレスは微笑みを浮かべながら、そう言った。

「冴島雷牙のいない今、彼の穴を埋めるのは並大抵のことではないかもしれません。
 ですが、皆の熱い想いを知り、乗り切れない困難ではないはずと、そう思えます。

 冴島雷牙の旅は長く険しいものになるかもしれません。
 ですが、皆のがんばりに負けぬよう、おそらく雷牙もまた困難に打ち勝ち、我々の元に帰ってくるでしょう。

 その日まで…
 わたしたちはできる限りを尽くしましょう」




謁見の間から、ひとり、ふたり、と消えていき、グレスも

「戻ります…」

と言って、執務室のほうへ下がっていった。
どうやら、人材の整理と、指令に関するシフト表の見直しをするようだ。

「今夜は徹夜かしら…
 そんなことしたら、お肌が大変なことになっちゃうのに…」

などと呟いていたことは、レオだけが知っていた。




もう誰もいないかと思い、レオはぐるりと謁見の間を見渡していたが、そこに人影を見つけて、ほんの少し眉を寄せた。
その人影にレオが近づくと、人影のほうもレオに向かって歩き出した。
やがて、お互いに目の前まで来たところで足を止める。

「どうしました?」

先に声を掛けたのはレオ。
だが、相手は

「レオ…」

と言ったきり、押し黙ってしまった。
その様子に、レオは再び声をかける。

「…烈花さん?」




to be continued(3へ)
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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…



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