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きんのまなざし ぎんのささやき

牙 狼(冴 島 鋼 牙 Ver.)の世界を、気ままに妄想した二 次 創 作 サイトです

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その唇に触れるのは(1)

日増しに春めいて、頭の中にもお花が咲こうか、って感じですよ。
そんなおめでたい頭からの妄想をおひとつ…

拍手[14回]



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「鋼牙ぁ」

すがるような声のするほうに目を向けると、不安そうにしているカオルの姿があった。
鋼牙がすぐさまそちらへ足を向けようとしたが、時を置かずして、別の方向からも

「鋼牙…」

と不安そうな声が聞こえる。
反射的に振り返った鋼牙の目に、どうしたことか、まったく同じいでたちで同じ顔をしたカオルの姿があるではないか。
どちらのカオルも見えない檻に閉じ込められているのか、その場から動くことができないようだ。

冴島鋼牙は右側にいるカオルと左側にいるカオルとを交互に見ながら、硬い声で

「ザルバッ」

と魔道具に意見を請(こ)う。

『見ての通り… どっちかが本物で、どっちかが偽物、だなぁ』

鋼牙の緊迫した様子とは真逆の、ひどくのんびりとした調子でザルバが答えた。
その答えに、鋼牙は眉根を寄せてザルバをひと睨みする。

『まあ、俺様に聞かずともどっちが本物のカオルか、おまえさんにはわかるんじゃないか?』

鋼牙の厳しい視線などものともせず涼しい顔でザルバが言ったところへ、右のカオルから声が飛ぶ。

「あたしが本物のカオルよ」

すると、すぐに左のカオルからも

「違う! あたしが本物だよ!」

と反論があがる。
口々に自分こそが本物だという主張の声もまるで同じなふたりのカオルを、鋼牙は厳しい目で見比べる。

『くっくっくっ…
 おい鋼牙。どっちが本物かわかったか?』

揶揄(からか)うようなザルバに、鋼牙は

「うるさいっ」

と声を低める。
もちろん、そんなことでザルバの態度は変わらない。

『キスのひとつもすればわかるんじゃないのか?
 ついでに身体のあちこちを触ってみりゃあ、どっちが本物かなんてすぐにわかるんじゃないのか?』

そんなふうに、さらにイラつかせるような軽口を叩いて鋼牙を煽(あお)るので、鋼牙はザルバを目の前に持ち上げて、最大級の不機嫌そうな顔で真正面から睨みつける。

すると、

「それ! いいんじゃない?」

と一方のカオルが言った。
鋼牙はザルバを睨んでいた顔のまま声のほうに顔を向けた。
カオルが、実に明るい顔でニコニコ笑っている。

「あたしとキスしたら、鋼牙ならきっとわかると思うよ。あたしが本物なんだって…」

前のめりになってそう言うカオルを鋼牙はじっと見つめる。
すると、反対側のカオルからも声があがる。

「そんなぁ! 本物はあたしだから!
 ねぇ、鋼牙。わからない? そんな偽物の話なんか聞かないで!」

両手を固く握りしめて必死に言い募るカオル。
鋼牙は、そちらのカオルもじっと見る。





「何言ってるの? 本物はあたし!」

「いいえ、違うわ! あたしがほ・ん・も・のっ!」

真贋(しんがん)を見極めようとする鋼牙を前にして、ふたりのそっくりなカオルが口々に「自分が本物だ」と主張する。
しばらくそんな時間が続いたが、鋼牙が満を持して口を開いた。

「いいだろう。キスしよう」

ぎゃんぎゃん言い合っていたカオルたちがピタリと口を閉ざしたが、すぐに

「そうだよ、そうだよ! あたしとキスしたらすぐにわかるってぇ~」

「ちょっと、鋼牙っ! そんな… 本気なの!?」

『あっはっは! こいつは面白い!』

と三者三様の声が重なる。
そんな中、鋼牙ひとりが落ち着いて、

「もちろん本気だ。
 さあ、どちらから先にするんだ?」

と左右のカオルに問いかけた。

「あたし、あたし! もちろん、あたしからだよ!」

「だめよ、だめ! そんなの絶対だめだから!」

はいはーいと手を挙げて主張するカオルと、そんなカオルに駄目だしするカオル。
鋼牙はふたりを冷静に観察し、一方のカオルを指差した。

「こっちのカオルから先だ」

そう言った鋼牙に、選ばれなかったほうのカオルは、

「えぇっ」

と不満げな顔をして見せた。だが、すぐに

「でもまぁ… どっちみち、すぐにわかると思うし、あたしとのキスのほうがイイってことが。
 うん、いいわ、あたしは後からで…」

とかなりの自信を見せながら、肩をすくめて余裕の表情を見せるのだった。
後攻(?)となるカオルの許しが出たところで、鋼牙は先攻(?)のカオルのほうへと足を進める。
一歩一歩近づくごとに、カオルは少し落ち着きのない様子を見せる。

目の前まで来て鋼牙が足を止める。

背の高い彼を見上げるようにしているカオルの喉がコクリと動く。

鋼牙の目の前にいるカオルは、本物のカオルかもしれないが、偽物であるかもしれない。
そのせいか、鋼牙の表情はどこか冷ややかで硬かった。
その緊張感に飲まれたのだろう。

「鋼牙… ほんとに、その… するの?」

と尋ねるカオルの声も掠(かす)れがちだ。

「ああ」

一言そう言うと、鋼牙は左手を伸ばした。
すぐにその手は、見えない檻に触れた。

「下がっていろ」

そう言われたカオルが、何歩か後ろに下がった。
ぐっと檻を握りしめると、

「ザルバッ」

と一言。

『任せろっ    …ふぅぅぅん、はっ!』

気合一発で檻が砕け散り、足元に、元は檻であった残骸が散らばっていた。

「来いっ」

そう言った鋼牙に手を伸ばしたカオルが鋼牙に捕捉され、檻の外へと導きだされた。
勢い余ったカオルが鋼牙の胸にトンとぶつかり、慌ててカオルは顔を上げる。
が、ほぼ垂直に顔を上げるしかないくらい近い距離で、それに気づいた時には、カオルの腰は鋼牙に抱え込まれ離されることはなかった。




to be continued(2へ)
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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…



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