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きんのまなざし ぎんのささやき

牙 狼(冴 島 鋼 牙 Ver.)の世界を、気ままに妄想した二 次 創 作 サイトです

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契約の一日(1)

今回の妄想は、前回のエイプリルフールにちなんだ、ちょいとふざけたやつから一転!
少々シリアスな始まりです。
このままシリアスで突き進めるのか! どうだろ?

拍手[10回]



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─── 一ヶ月のうちの一日分の命を与える ───

鋼牙とザルバとの間にそんな契約があると初めて知らされたとき、カオルは、ザルバのことが怖いと思った。


ザルバの普段の言動や、鋼牙や自分とのやりとりの中で、偉そうだったり、揶揄うような物言いだったりがたまに鼻につくことはあったけれど、鋼牙の相棒としてはこの上なく頼りになる仲間だと思っていた。
そして、ザルバの実体が、ソウルメタル製の指輪の中に封印されたホラーであると知ったときも、正直なところ、あまりピンとは来なかった。
だが、この命の契約の話を聞いたとき、ぶるっと身体が震えたものだった。





その日はごくありふれた日だった。

鋼牙はいつものように自己の研鑽を怠らず、ゲートとなり得そうな陰我あるオブジェの浄化に出かけていたし、カオルはカオルで次の作品に向けて構想を練ったり、クロッキー帳を鞄に忍ばせて公園や住宅街などを散歩してみたり、といった一日を過ごしていた。
その ’ありふれた日’が、夕食を終えた頃に鋼牙が放った一言で急に様相を変えてしまった。

「ゴンザ、明日は部屋に籠る」

カオルは、ちょうど食後のコーヒーを口に運ぼうとしていたがその手を止めて、鋼牙を見た。
だが、鋼牙のほうは一向に気にしない様子で、芳香を楽しみながらコーヒーを飲んでいた。

「承知いたしました…」

ゴンザはそう答え、カオルのことを少し気にかけながら、そっと退出していった。
残されたふたりの間に微妙な空気が流れた。
いや、そう感じたのはカオルだけだったかもしれない。
カオルにとっては、この室内の酸素濃度が急激に下がったのかと思うほどの息苦しさを覚えていた。
その後… 心の余裕をなくしてしまったカオルは、鋼牙との間でどんな会話をしたのか思い出せなかった。





深夜。
ベッドに腰を落として、今日スケッチしてきたクロッキー帳を膝に置いているにも関わらず、カオルの意識はそこにはなく、ぼんやりと焦点の定まらない視線を落としてた。
すると、

  ブブブブブ…

と振動が身体に伝わり、ハッとする。
それが伝わってきた方向に反射的に視線を向けると、ベッドの上に無造作に置かれたスマホがあった。
すぐに手を取り、アラームを解除すると、また元の静けさが広がる。

(0時… か…)

無意識にため息がこぼれ、ドアの向こうに目を向ける。
いつもなら鍵など掛けられない鋼牙の部屋も、’その日’ を迎える前にはしっかりと施錠され、誰も入れなくなる。

そして、今…。
一日が始まってしまってすでに秒針がずいぶん進んでしまった現時点では、鋼牙の呼吸は止まり、心臓も鼓動を止め、一般的には ’死’ という状態になっているはずだ。
そんなふうに考えると、カオルも呼吸を止めていたらしい。ふと覚えた息苦しさに大きく息を吐くと、浅く速い呼吸を続け、なんとか肺に空気を送り込む。
しばらくして何とか呼吸を整えた後、カオルは暗い表情のままベッドに入った。
そして、なかなか寝付けない夜を乗り越えようと、ぎゅっと目を閉じるのだった。





翌日。
いつもと同じ時間に起きてきたカオルは、

「おはよう、ゴンザさん」

と笑顔でリビングに入り、ゴンザの用意した朝食をきれいに食べ終える。
食後のコーヒーを差し出したゴンザに、

「ごちそうさま。今日もおいしかった!」

と礼を言った。

「それはようございました…」

ゴンザも穏やかな微笑を浮かべながら、カオルに答える。
鋼牙のいない朝食の不自然さに加え、その鋼牙のことが話題にものぼらない不自然さが重ねられるが、表面上は和やかな朝の風景だ。
「ところで、カオル様?」

コーヒーを一口飲んだところで声を掛けられ、カオルは視線をゴンザに向ける。

「本日はお出かけの予定は?」

口ではそう聞きながらも、ゴンザにはカオルの答えに予想がついていた。
なぜなら、カオルは、ゴンザとの契約が果たされる日には余程のことがない限り、屋敷から出ることはなかったのだから。

「んー、特にない、かな? どうして?」

予想通りの言葉を口にして、カオルは首を少しかしげて尋ねる。

「いえ、本日、午前中に出かける予定なのですが、お昼までに戻れない可能性がございまして。
 少々ランチの時間がずれてしまうかもしれないものですから…」

「なーんだ、そんなこと? あたしなら大丈夫だから心配しないで?
 あっ、なんなら、お昼はあたしが作っておこうか?」

親切心からそんな申し出をするカオルに、ゴンザは慌てて手を振る。

「いえいえ、滅相もないっ! カオル様のお手を煩わせるわけには参りませんからっ!
 極力! 極力、お昼までには帰るようにいたしますので、どうか、カオル様は(おとなしく)お待ちくださいっ!」

必死にそう言うと

「え~、そう? わかったわ…」

と渋々引き下がったカオルに、ゴンザは心の中で安堵の息をつく。
が、

「でも、無理なら無理っていつでも言ってね?
 今日一日はずっといるから、お手伝いできるようなことはなんでもするから…」

と続けて言われて、再び慌てる。

「えっ? ええ、ええ、そのときはお願いいたしますので、カオル様はカオル様でご自分のためにお時間を使ってくださいませ!
 ま、また出かける際にはお声を掛けますね?」

ややぎこちない笑みを浮かべつつ、ゴンザがそう言い、この話題はここまでだ、とばかりに会釈をしてリビングから出ていった。
その背を見送りながら

「な~んか変なの」

と呟いたカオルは、

(今日は何をしようかな…)

と屋敷の中でできることはないだろうかと、頭の中で探し始めた。





’その日’ は、何事もなく終わった。
一日の間、鋼牙の存在すら消されてかのように、カオルとゴンザの間ではその名が出てくることはなかった。
そうしよう、と口に出して成された約束事などではない。いつの間にかごく自然に、二人の間ではそういうルールが確立していたのだ。

「おやすみなさい、ゴンザさん」

「はい、おやすみなさいませ、カオル様」

にこやかに交わされるその日一日の最後の挨拶の後、カオルは部屋に戻っていった。
自分の部屋のドアを開けようとして、カオルは手を止めた。
そして、鋼牙の部屋のほうを振り返る。

時間はまだ0時になっていない。
だから、鍵はまだ掛けられたままだ。
そして、中にいる鋼牙もまた、生者の世界にはまだ戻ってきていない。
死人のように、冷たくなった身体のまま、青白い顔でベッドに横たわっているだろう。

カオルは顔を歪め、強く顔をそむけた。
ドアノブを握っている手に力を込め、勢いよくドアを開けると、部屋の中に駆け込み、ベッドへとダイブする。
はぁっと大きく深く息を吐き、

「鋼牙…」

と小さな声で呼ぶ。
契約の一日が終わっても、鋼牙の部屋の鍵が開けられるのは明日の朝だ。
それまで、鋼牙に会うことは叶わない。
いや、明日になれば鋼牙に会えるのだ。
そう考えるようにしようと、カオルはシーツをぎゅっと握りしめて、自分に言い聞かせるのだった。




to be continued(2へ)
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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…



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