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牙 狼(冴 島 鋼 牙 Ver.)の世界を、気ままに妄想した二 次 創 作 サイトです

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8月15日

コロナ禍の中のお盆休み、いかにお過ごしでしょうか?


拍手[6回]



::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

「はぁーっ、青い空!」

昨日まで降り続いた雨がやみ、空には夏特有のモクモクとした白い雲が浮かんでいる空を仰ぐカオル。
太陽はまだ夏の威力を発揮していたが、カラッとした空気に、時折吹く風が爽やかで気持ちがよい冴島邸の中庭の真ん中で、カオルは大きく深呼吸をした。




今日は、8月15日。
お盆。そして、終戦記念日でもある。

カオルは宗教的なものに信仰心が強いわけではないが、それでも、今こうして青い空を見上げていて、今は亡き父や母の姿が自然と思い浮かんできていた。

別に、楽しかった幼い日が具体的に思い出された、というわけではない。
ただ、なんとなく、両親の気配のようなものを感じるような、ふわふわとした浮遊感と不思議な安心感を覚えていた。

(お父さん、お母さん。
 あたしは元気にやってるよ…)

ちょっぴり懐かしくて、ちょっぴり寂しくて、ちょっぴりあったかくて…
そんな、なんともいえない不思議な空気に包まれて、カオルはゆっくりと形を変えていく雲を見ていた。



すると、ふいに自分が影に覆われて、ハッとした。
太陽があった位置に目線を上げると、そこには、鋼牙の姿があった。

「何をしている?」

カオルを見下ろして鋼牙が言う。

「あ… 風がね、気持ちいいなぁって思って…」

そう答えるカオル。

「まだまだ暑い。倒れるぞ?」

鋼牙にそう言われてみて初めて、カオルが陰となるような位置に鋼牙が立ってくれているのだと気づいた。

「そうだね。うん… ありがとう」

カオルが礼を言ったことに、鋼牙は一瞬怪訝な顔を見せたが、すぐにふっと表情が緩ませてそのことには触れずに

「ゴンザが、お茶の用意ができた、と…」

とカオルを探してここに来たことをほのめかした。
そして、屋敷の中に戻ろう、とでもいうように、そのまま踵(きびす)を返して、屋敷のほうへと向かっていった。
その姿を振り返りながら見ていたカオルは、ふいに

「鋼牙!」

と呼び止めた。
ゆったりとした歩調で長い足を運んでいた鋼牙は立ち止まり、ゆっくりと振り返る。
すると、カオルはちょっとだけ視線を彷徨(さまよ)わせて、鋼牙にどうしようか迷うような素振りを見せていたが、それもちょっとの間のことで、すぐにまっすぐに鋼牙を見返した。

「あのね、鋼牙もお父さんとかお母さんとか思い出すときがあるの?」

そう尋ね、ほんの少し、顔を傾けるカオル。
鋼牙のほうはと言うと、急にそのようなことを尋ねられ、戸惑いを覚えた。
そんな鋼牙に、カオルは少し慌てて説明を付け加える。

「あのね、今日は8月15日でしょ? お盆じゃない?
 だからってわけでもないけど、今、ぼんやりと自分の両親のことを考えてたから…
 鋼牙も、そういうのあるのかな、って」

そう言われて鋼牙もようやく腑に落ちた。
そして、少し考えてみる。

まだ物心もつかないうちに亡くしてしまった母の記憶はほとんどない。
だが、そういうものだと生きてきたから、それに関して寂しさや感傷もあまり感じてはいない。
やはり、母に比べて、父のほうが思い起こすことは多いと思う。



父さんなら、こんなときどう闘ったのか?
父さんなら、どのように考え、どう動くのか?
父さんなら…



同じ魔戒騎士として闘いの中に身を置く自分にとっては、父の存在は特別だ。



そんなことを考える鋼牙は、遠い目をして青空を見ていた。
そんな鋼牙の様子に、言葉としての答えではない答えをもらったようにカオルは思った。
だから…

「鋼牙」

とても優しい声でカオルが呼びかける。
ふと、我に返ったような鋼牙がカオルに顔を向けると、

「お茶が冷めちゃうから、早く行こう?」

と微笑んだカオルに手を取られた。
カオルはそのまま手を引っ張りながら足を進める。
虚を突かれたような顔で、カオルに引きずられるように歩きだした鋼牙は、すぐに落ち着きを取り戻すと、大きなストライドでカオルの横に並んだ。

「それはこっちのセリフだ」

そう言ってカオルを見下ろしてくる鋼牙は、いつもの鋼牙だったから、カオルはふふっと笑った。







魔戒騎士にとって、’死’ はとても身近なものだ。
魔戒騎士にとって ’人を救う’ ということは、その人の命を守ること(=生かすこと)だけでは決してないから。
その人間が ’最善の死’ を迎えられるように、そう願って闘うことのほうがずっと多かったりするのだ。

魔戒騎士である鋼牙にとって、そんなふうに ’死’ を見つめながら生きることは必然なことではあった。
が、カオルに出会って思い知ったのだ。
カオルたちと過ごす穏やかな時間が、殺伐とした闘いへと向かう自分にいかに力を与えてくれているかということを。
そのことが、’自分自身が生きているんだ’ ということを強く実感させてくれる。



死んでしまった者。
死にゆく者。

彼らに対して ’恥ずかしくない生’ を貫いてみせよう。
自分の手の中にあるカオルの手の温かさを感じながら、鋼牙は想いをまた新たにするのであった。


fin
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::


8月は、’死’ について考える月ですね。

長崎や広島への原爆投下。そして、終戦。
先日からの豪雨でも、尊い命が失われていますね。
死にたくて死んだ命ではないのです。無念でしょう。亡くなった方も残された方も…

犠牲者の方には、ほんとうに心からご冥福をお祈りします。



さて。
今日、買い物帰りの青空が本当にきれいで、気持ちがいいなぁ、と思いながらも亡き父のことがふっと思い起こされました。
今年は仕事が忙しくてお盆休みも取れなかったこともあり、お盆らしいお盆ではなかったのですが、本当にふと父のことが浮かんできて、「ああ、そういえば、今日は8月15日か…」と。
コロナ禍で帰省もできませんが、こうして想うことが供養になればな、と思います。
そんなところからの妄想だったりします。


まぁ、思いつくままに書いてしまったので(いつものことですが)テーマとしては何が書きたかったのかブレブレなんですけど…
でも、きっと、「鋼牙さんが生きていてくれたらそれでいい!」ってことなんです!

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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…



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