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見えないもの(1)
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カオルがそのおばあさんに気付いたのは、初めて行った公園の一角にあったちょっと変わった水飲み場をデッサンし終わり、クロッキー帳を大ぶりの肩掛けカバンに片づけ終わって顔を上げたときだった。
大きな木がつくる木陰に置かれたベンチにちょこんと座った小柄なおばあさん。
カオルはちょっと驚いて目を見開いた。
なぜなら、そのおばあさんはカオルの方をじっと見ていたからなのか、バチッと音がしたかと思うほどしっかりと目があったからだった。
一瞬小さな緊張感に包まれたが、すぐにおばあさんがにこっと人懐っこい笑みを浮かべたので、カオルの方もそれにつられて思わず表情が緩んだ。
それだけであれば、すぐにその場を後にして帰途をたどることになるのだが、おばあさんはにこにこと笑ったままカオルから目をそらさずにいるので、カオルは導かれるように彼女に近づいて行った。
「こんにちは」
おばあさんの前で足を止めたカオルが声をかけると、
「はい、こんにちは」
とおばあさんも挨拶を返した。
落ち着いた色の口紅をしっかりと引いたそのおばあさんは、白髪だと思われる頭を山吹色のターバンのようなものでまとめ、ふわりとした柿渋色のワンピースにカーキ色の薄手のスカーフを首から垂らしていた。
どこにでもいそうなおばあさんでは決してないが、それでいてその場に溶け込むような空気感を持った不思議な人だなと、カオルは肌で感じていた。
「あの…」
声を掛けたはいいがそのあとのことはノープランだったカオルは、なんと声を掛けるべきか迷いつつ口を開く。
すると、おばあさんのほうがカオルの言葉を遮るように
「絵を描いてらしたの?」
と尋ねてきた。
「あ、ええ、はい。
あそこの水飲み場の造形が面白いなと思って、ちょっと…
あの、ずっとここにいたんですか? 暑くないですか?」
盛夏は過ぎ、カラッと乾いた空気も気持ちいい昼下がりであったが、今日は昨日より少し気温も高いようだ。
ここは日陰で涼しく気持ちいいが、ずっとここにいたのだとしたら、高齢の身体にはそれなりに堪(こた)えるのではないだろうか?そんな心配をしてカオルが問えば、
「あら、大丈夫よぉ。
ただここに座っていただけだもの」
とふわりと笑っておばあさんは答えた。
そして、
「あなた、お時間はある?
よかったら、ここに座って少しお話をしましょう?」
と身体をずらして、ベンチの片側を空けてくれた。
おばあさんからのお誘いに、カオルは
「…じゃあ、少し」
と言って、肩掛けカバンを首から外し、彼女の隣に腰を下ろして膝の上に置いた。
そして、わずかにおばあさんのほうに身体を向けて彼女をちらりと見た。
それを待ってからおばあさんはカオルに尋ねる。
「さっそくなんだけど、お名前教えてもらってもいいかしら。
私はキヨ。キヨちゃんでも、おキヨさんでも好きに呼んでちょうだいね?」
「キヨさん… ですね?
あー、あたしはカオルって言います」
「カオルちゃんね? ふふふ…
ところで… カオルちゃん?」
「はい」
「突然こんなこと聞くのもなんだけど…
あなた、死にそうな目にあったことないかしら?」
キヨからのいきなりの質問にカオルはぎょっとして、
「えっ」
と言ったきり固まってしまった。
それを見てキヨは
「あぁ、ごめんなさい」
と軽く謝罪するキヨ。
「なんだかよくわからないけど、あなたからとってもはっきりとイメージみたいなものが伝わってきたのよ?
あなた、どこにでもいるようなお嬢さんのように見えて、実はかなり大変な… そう、命に関わるような体験をしてきたんじゃないかしら?
それが見えた、というか、感じられたから、私、あなたに興味を持ってしまって、こんなふうに呼び止めてしまったのよ」
それを聞いても、カオルは口をアワアワと開けたり閉じたいするのを繰り返すばかりで、何をどう言えばいいのかいまだにわからず、何も言えなかった。
そんなカオルに、キヨは眉尻を落として再び謝った。
「本当にごめんなさいね。
興味本位で聞かれても困るわよねぇ?」
しゅんとしてしまったキヨに、カオルは別の意味で慌てた。
「いえ、そんな!
あたし、その… ちょっとびっくりしちゃって…」
それから、小さく深呼吸してから幾分声を落として言った。
「確かにあたし… ちょっと危ない目にあったこと、あります」
カオルは、ホラーの返り血を浴びてしまったことや、メシアのゲートにされそうになったことを思い出しながらそう言うと、
「やっぱり…」
とキヨは何度もうなずきながら言う。
「でも、ある人に助けてもらって、こうして今も元気に生きてます!」
そう言って、キヨを安心させるようにニッコリ笑ったカオルは
「…そうね。その人は今もあなたのそばにいて、あなたにとってとても大きな存在ね」
とキヨに言われて、今日何度目かの驚きで声を失った。
「どうして…」
ようやくそう呟いたカオルに、キヨは
「うーん、それは私にもわからないけど…
あなたからどんどん ’像’ のようにいろんなものが伝わってくるのよ、としか言えないわね」
そう言って、微苦笑を浮かべる。
そして、
「でも、カオルちゃん…
あなたにとって、その人のそばにいることはしあわせなの?」
「それはどういう…」
それにはキヨはすぐに答えずに、カオルを通して見えない何かを見るような素振りを見せたり、それをどのような言葉にしようか迷うような素振りを見せたり、どことなく緊張感のある時間をいくばくか過ごした後にようやく口を開いた。
「未来のことは過去のことよりずっとぼんやりとしか伝わってこないんだけど…
あなたから、その人とは違う ’別の人’ との将来も見えるのよ。うっすらとね。
うーん、どう言えばいいかしら… とても穏やかで安心感、とでも言うのかしら、そういうイメージが」
キヨの言葉にカオルは少なからず動揺する。
無意識のうちに胸を手で押さえ、自分を落ち着けようとするも、なかなかうまくいかないようだった。
「…で、今そばにいる人との将来もね、見えるんだけど。
それはね…」
to be continued(2へ)
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コメント
selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…
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