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きんのまなざし ぎんのささやき

牙 狼(冴 島 鋼 牙 Ver.)の世界を、気ままに妄想した二 次 創 作 サイトです

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堅物男の願い事(3)

邪美姐さんを捨てて(あ、付き合ってもいないけど)、翼ったら、
よその女に走るのか!
そんな奴だとは思わなかった!

でもさ、翼は、閑岱では一番強い魔戒騎士だもん。
やっぱり、嫁さんとなる女は、家柄とかも考慮に入れないと…

なんせ、あの翼だもんね。
頭、ガッチガチに固いもんね。


::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

翼の話に素知らぬ顔で答えることも、もう限界だ。

そうこうするうちに、鈴の待つ家も見えてきた。
ここらが潮時だ、と邪美は思った。

「それじゃ、翼。あたしはここで…

 今夜は鈴とふたり、家族水入らずで過ごすといい。
 じゃ、おやすみ…」

そう言って邪美は振り返りもせず、自分の住まいのほうに向かって
歩き出した。

「待て、邪美!」

後ろから翼の声が追いかけてきた。
邪美は足を止めたものの、後ろを振り返ることができなかった。
もう今の自分では、笑顔が作れないからだ。
立ち止まったきりでいると、翼が近づいてくる気配がする。

空を仰いで、大きく深呼吸する。
冷たい空気が少しだけ気分を鎮めてくれる。

「待ってくれ、邪美」

すぐ後ろで翼の声が聞こえる。

「なんだい?
 鈴が待ってるから、早く帰っておやりよ」

なんとか絞り出すようにそう言った。

「邪美…
 先程のおまえの話だが… なるほど、おまえの言うとおりだ。
 だから、確認させてくれないか?」

「…?」

黙ったままでいる邪美にはお構いなしに、翼は続ける。

「この先のおまえの人生… 俺と歩むことは考えられないだろうか?」

予想もしなかった翼の言葉に、邪美は激しく動揺し、訝(いぶか)しげに
翼に問いただそうとした。

「…なに、言ってるんだい?
 確認する相手を間違えてい…」

だが、すぐに翼に遮られた。

「望みがないなら、きっぱりそう言ってくれて構わない。
 すぐにどうこう言うわけでもない。
 俺は知ってのとおり、頭の固い、なんの面白味もない男だ。
 一緒にいれば息の詰まることもあるだろう。
 だが…」

普段の翼では考えられないほど、スラスラと言葉が並ぶ。
それだけ、翼の必死さが窺(うかが)えて、返って、邪美の気分は幾分
落ち着いた。

「…娘ってのは?」

「え?」

ぽつりと言った邪美の言葉がうまく聞き取れず、翼は聞き返す。

「名のある法師の娘、っていうのはどういうことなんだい?
 あたしには、親なんていないよ」

そう言う邪美の背中が震えている。
なぜ震えているのか翼にはわからなかったが、どうしようもなく守って
やりたいような愛しさが込み上げてきて、そっと邪美の肩に両手を置いた。
そして、ゆっくり自分のほうに邪美を向かせた。
邪美は抵抗もせず、翼のほうに向きなおったが、俯いたまま翼のほうを
見ようとはしなかった。
いや、見れなかったのかもしれない。

「俺は、おまえの出自などどうでもいいと思っている。
 しかし、俺よりも頭の固い連中が、家柄がどうこう言うかもしれん。

 だが、おまえは、あの阿門法師の自慢の弟子だ。
 法師が、おまえの腕を認め、おまえのことをとても自慢に思っていた
 ことは、この閑岱にも伝わってきている。
 そんな阿門法師は、おまえの親も同然ではないのか?

 誰が何と言おうと構うことはない。
 おまえは、ただ、いつも胸を張っていればいいのだ」

今度は、翼が幼い子どもにでも言って聞かせるように、邪美に語りかける
格好になった。

「もし…
 仮に、おまえが、俺とのことを前向きに考えてくれるというなら、
 俺は、次のサバックでは何としても勝つ!
 勝って、阿門法師におまえとのことを許してもらう。

 …どうだ? いやか?」

力強く言った翼が、最後には優しく懇願するように尋ねた。

邪美はしばらく考えていたが、俯いたまま首を横に振った。

「ん?
 いや… なのか?」

心配そうに翼は言って、邪美の顔を覗き込もうとする。
すると、邪美は、そのまま翼の胸に飛び込んできた。

「違う…
 …いやなんかじゃないよ」

いつもの邪美からは想像できないくらい、か細い声が聞こえてきた。
翼はちょっと驚いた顔をしたが、すぐに心の底から安堵したような
表情になった。

「そうか…」

しみじみとそう言うと、邪美の細い背中に手を回し、しっかりと
抱きしめた。





その頃、翼の家では、翼の好物をたくさん作って待っていた鈴が、

「兄ぃ、遅いな…」

と溜め息をついていた。
そして、窓辺に近付くと、外の様子を眺めてみる。
すると、林の向こうにいる兄と邪美の姿を見つけることができた。

(あ、兄ぃ…)

鈴は、窓を開けて声をかけようと思ったが、すぐに思いとどまった。
なんだかふたりの様子がおかしいのだ。
何をしゃべっているのかは、さすがに遠すぎて聞こえてこなかったが、
邪美が翼の胸に飛び込んだあたりで、なんとなく事態を察した。

(…なんだか、今、邪魔しちゃ駄目みたい)

そう思うと、鈴はふたりに気付かれないように、そぉ~っと窓辺から
離れて食卓に戻った。
そして、食卓に並んだ器のひとつからきんぴらごぼうをヒョイと
つまみ上げると、パクリと口に放り込んだ。

(フフフ、おいしい…)

鈴は、しあわせそうな笑みを浮かべて、兄たちの帰りを待つことにした。



fin(おまけへ)
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::


書いてみたら、びっくり!!
なんだか邪美姐さんがしおらしいじゃありませんか!!
そして、翼がちょっぴりオトコマエに見える!!

邪美姐さんは鋼牙さんより年上だから、鋼牙さんより年下に見える
翼からしてみたら、3~4歳は年上かなと思うのです。
白夜のときなんかは、翼は、邪美姐さんにいいようにおちょくられて
ましたよね?
(胸をガバッと掴ませたりして… 笑)

あれから何年かが過ぎ、もし、邪美姐さんが翼に特別な感情を持ったと
しても、自分が孤児だということや年上だということで、自分の
気持ちにフタをしそうだと思うのです。

でも、もし翼のほうからグイッと引き寄せられたら、案外あっけなく…

嗚呼、そんな乙女な姐さんを見てみたいなぁ~



2014.02.12追記
おまけを追加しました。

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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…



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