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きんのまなざし ぎんのささやき

堅物男の願い事(2)

サバックで優勝した零は、鋼牙の父である大河と会うことを望みました。

では、翼だったらどうでしょう?
みなさんは、そんなこと考えたことないですか?

selfish なりの「翼らしい」と思う妄想がこれなんですが、どうかな?
どうかな?


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翼は真っ直ぐに邪美を見ていたが、まだ戸惑いがあるのか、瞳がほんの少し
揺れている。

「最近、子供たちを指導していて思ったことがある」

翼は静かに語り出した。

「…」

翼は、この頃、先のシグマとの闘いで知り合った四十万ワタルからの
頼みもあって、魔戒騎士を目指す子供たちの指導に関わっていた。
だが、そのことと、今話題にしている翼の会いたい人の話とが、どう
結びつくのか、邪美には皆目見当がつかなかった。

「俺もいつどうなるかわからん。
 明日… いや、今夜、命を落とすことがないとも言えん。
 ならば、俺が教えられることすべてを、あいつらに伝えなければ、と」

邪美はうなずいた。
数年前のレギュレイスの一件で、それまで守りたい者などなかった
邪美に、鈴という大事な存在ができた。
その後、閑岱の地にとどまった邪美は、鈴をはじめとして、魔戒法師の
修行に打ち込む里の子供たちに請われるまま、毎日のように技や知識を
教えていた。
その経験から、翼の言うような気持ちはよく理解できるのだ。

「だが…」

ちょっとだけ躊躇い、翼はすぐに言葉をつなげた。

「それだけじゃ駄目な気がしているのだ。
 俺自身の… その… 血筋をつなぐことも必要だと…」

最後のほうは、邪美から視線を外し、絞り出すように言った。

「それって…」

邪美が翼の言わんとすることを確かめようと口を開いたが、翼は早口で
それを遮った。

「もちろん、今すぐとは言わん。
 だが、その前提として、俺もそろそろ身を固めることを考えねば
 ならんと思ってな」

他愛もないお喋りから、まさかこんな真面目な話に発展するとは
思ってもいなかった邪美。
混乱しつつも

「あんたに、その相手の当てはあるのかい?」

と、翼の出方を窺うように恐る恐る尋ねた。



翼と邪美の関係は、いまだに微妙なままだった。

最初の出会いにちょっとした確執はあったものの、鈴を命がけで救って
くれた邪美に、翼は素直に感謝した。
それに、魔戒法師としての腕前は阿門法師の折り紙付きだから、閑岱の
地を守る翼としては、事あるごとに邪美を頼りにもしたし、邪美もその
期待を裏切らなかった。

それだけではない。
鈴は邪美を姉のように慕い、いつもくっついていたし、食事をともに
することも多く、その結果、兄である翼もひっくるめて、まるで家族の
ようにも見えた。

お互い、憎からず思っているのもなんとなく互いに伝わっている。
だが、そこから先には容易に進まなかった。

武骨な翼は、強く美しい邪美をただ見ているだけ。

邪美は邪美で、この閑岱を守る使命を立派に果たしている男の相手として、
自分では分不相応だと思っていた。
もし、仮に翼のそばにいることを
自分が強く望んだとしても、どこの
馬の骨ともわからない自分のような女を、この真面目過ぎる男が、
受け入れるとは到底思えなかった。

だが、今のこの話の流れを見ると、

(ひょっとしたら…)

という淡い期待が出てくるというものだ。



「…無いことも無い」

翼の返事に、邪美は勢い込んで聞いた。

「え!
 そ、それは誰だい?」

邪美をチラッと見てから、翼は歩き出した。

「名のある法師の娘を… と思っている」

翼の言葉に、邪美は息が止まるかと思った。

名のある法師の娘… 
自分とは程遠い存在ではないか!

邪美は沈痛な表情で溜め息をつくと、翼の後を追いかけた。

「そうかい…

 なぁんだ、もうそこまで話が進んでいるのかい?
 そいつはめでたいね」

笑顔を作って何食わぬ顔でそう言う。
ちゃんと笑えているだろうか、と思いながら。

ところが、

「いや、まだ付き合ってすらおらん」

真顔でそんなことを言う翼に、邪美は思いっきり拍子抜けした。

「はぁっ、なんだって?
 じゃあ、早く告白でもなんでもしたらどうなんだい?」

なかば自棄(やけ)っぱちになって言い返す。

「その前に、親である法師に許しを請いたいと思う」

ここまで来て、邪美にもようやく話の筋が読めた。

「ははぁん、わかったよ。
 その娘の親がすでに亡くなっていて、サバックに優勝したら、その親に
 会おうと思っていた… そういうことだね?」

「そうだ」

邪美は大きく溜め息を吐いた。

「呆れたねぇ~
 そんなことに親の許しなんてどうでもいいだろ?」

「いや、そんなわけにはいかん!
 こういうことは、きちんとしておくべきだ!」

(やれやれ… まったく、この男ときたら…)

邪美は頭を抱え込みたくなった。

「じゃあ、こういうのはどうだい?
 仮に、おまえがサバックで優勝し、その法師に許しを請うことができ、
 無事に許しをもらえたとする。

 だが、当の娘のほうの気持ちはどうなるんだい?

 いざ、アタックしてみたら、断られた… なんてことになったら
 目も当てらんないよ?」

まるで、物わかりの悪い子どもにでも言うように、順番立てて、

翼に話して聞かせた。

「…ふむ。
 それもそうだな…」

邪美の言葉を聞いて、さすがに翼も考え込む。
その様子に、邪美の忍び笑いが漏れる。

(フッ…
 さすがに、あたしのお人よしもここまでだね)

もうそろそろ心が痛くて辛くなってきた。



to be continued(3へ)
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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も5年を経過しましたが、まだ飽きていない模様…



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