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あの日(1)
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ゴンザは、手の中のノートのページをめくっていた。
その紙ズレのかすかな音だけが、一定の間隔で続いている。
が、その音がとあるページで止まった。
そのページの文字を辿っていたゴンザの目が、やがて楽しそうにすっと細められた。
冴島家には、鋼牙が使っている書斎とは別に、この家の執事ゴンザ専用の執務室が設けられているのをご存じだろうか?
執務室、というと大層立派な部屋を想像してしまうかもしれないが、そこは、厳密には部屋として区切られたような空間ではなかった。
冴島家にはホラーに関する膨大な量の書物を保有していて、それらが収められた地下書庫へ降りる階段が書斎の脇につながっていた。
その地下書庫への階段に続く通路脇に、幅1m強の細長い空間があった。
その空間の奥には明り取り用の窓があり、窓の前には奥行き50cmほどの小さな作りつけの机。
そして、そこに続く壁一面は床から天井まで作りつけの書棚となっていた。
もちろん、そこは狭いながらもとてもよく整理整頓がなされていて、窓枠が額縁のように外の景色を切り取った、実に気持ちのよい場所であった。
その場所で、今、ゴンザは立ったまま、ノートを手にしていた。
それは、その日のちょっとしたことを数行程度に書き留めた、日記というほどにはプライベートなものではなく、業務日誌と呼ぶほど形式ばったものでもない、そんなものだった。
今、ゴンザが手を止めたページには、こんなことが書いてある。
2005年10月x日
久しぶりに指令書が届く。
鋼牙様、無事帰宅。怪我なし。
一枚の絵を持ち帰る。経緯は不明。
大きな三日月に少女の絵。
そう、あの日。
鋼牙は夜半過ぎに一枚の絵を持って帰ってきた。
「おかえりなさいませ」
「ああ」
ホラーを出現させるゲートとなりえる忌まわしき邪念を孕んだオブジェを斬り祓う務めを、鋼牙は毎日堅実に果たしていた。
その結果、ここ最近は指令書が届くことはめっきりなくなっていた。
ところが、この日、とんとご無沙汰だったホラーの出現が確認され、指令書が舞い込んできた。
普段から笑顔などない鋼牙であったが、ゴンザから指令書を受け取って表情を一層険しくした。
そして、日が暮れるのを待ち、屋敷を出て行った。
黄金騎士である鋼牙のことだから、無事にホラーを倒して帰ってくることを信じてゴンザは帰りを待っていたが、予想していたより帰りが遅くなっていることにほんの少しジリジリしていた。
そんなときに鋼牙が無事に帰ってきて、ゴンザは心底ほっとしていた。
が、鋼牙の手元に目を留めて、目を見開く。
「鋼牙様、それは…」
「ん?」
鋼牙はゴンザの目線の先に目をとめ、
「ああ、これか…」
と、脇に抱えていた絵を持ち上げた。
「いろいろあって… 手に入れた」
「はぁ…」
何の説明にもなっていない鋼牙の言葉に、ただただ訝し気にうなずくしかない。入手の経緯について、それ以上詳しくは語るつもりもなさそうな鋼牙に、ゴンザは
「こちらはどういたしましょう?
保管すればよろしいですか?」
と絵の処遇を尋ねた。
すると、鋼牙は、
「いや」
と即座に否定の言葉を発し、少し考えてから、
「…どこでもいい、飾っておいてくれ」
と言った。
「どこでもよろしいのですか?」
さらに念を押すように尋ねられた鋼牙は
「ああ… とにかく飾っておいてくれ」
と言って、この話はこれでおしまいだ、とばかりに絵をゴンザに押し付け、歩き出した。
廊下に残されたゴンザは、
(どこでも、ね…)
と思いながら、手の中の絵を眺める。
(誰か著名な画家の作品なのだろうか…)
そして、右隅の署名を読む。
(K…? あとは読めませんな。はて…)
ゴンザはしばしの間、頭を捻っていたが、リビングのドアの向こうに消えた鋼牙をほったらかしにしていたと思い出し、慌てて鋼牙の後を追った。
最初は、何かホラーに関係のある忌まわしい絵なのか、とも思ったりしたが、そんなことは言わなかった。
ただ、飾っておいてくれ、と言った鋼牙。
経緯も因縁もわからない絵。
ゴンザは、その絵をリビングの一番目につきやすい場所に飾ることにした。
こんなところに飾るな、と叱られれば、はい、そうですか、と別のところに掛け直せばいいだけだと思うことにした。
翌朝。
リビングに入った鋼牙は、すぐにあの絵に気がついた。
けれども、何も言わなかった。
そのことで、ゴンザは自分の判断が間違っていなかったのだと思うのだ。
そして、あの日を境として、それまでの淡々と魔戒騎士としての務めを果たしていた鋼牙の日々が、ガラリと様相を変えていた。
あれから、10年以上の時が流れ…
あの日持ち帰った絵は、不慮の事故で傷ついたこともあったが、きちんと修復されて今でも大事に飾られている。
ふと、回想から覚めたゴンザが、明るい日差しの差し込む窓の外へと目を向けると、なんとも温かい気持ちになってにっこりとしあわせそうに微笑んだ。
to be continued(2へ)
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コメント
selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
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