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あの日(3)
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あの日もこの日も。どの日だってゴンザには感慨深い日ばかりだった。
けれども、殊(こと)の外(ほか)忘れえない日があった。
あの日は、朝からとてもよく晴れ、気持ちのいい日だった。
夜空を大きく分断するような三日月。
その月を目指すように走る少女。
そこにあるのがすっかり当たり前になった絵を、微笑みながら見上げているカオルの姿があった。
その彼女の隣に、ゴンザはすっと並び、同じようににこやかに絵を見上げる。
「すっかり元通りでございますな」
「あ、ゴンザさん」
ちょっと驚いたようにゴンザを見てから、カオルは再び絵に視線を戻す。
「まあ、なんとかね…」
「ほんとうにようございました…
鋼牙様がお帰りになられたら、きっと喜ばれます」
うんうん、と満足げにうなずくゴンザを横目に、カオルは少し照れ臭さの入り混じったような笑みを浮かべる。
(よかった…)
ほんの少し前。
久しぶりの再会を喜び合ったゴンザから、申し訳なさそうに差し出されたのは、絵の中央に斜めに走っていた焦げたような跡ができてしまった絵だった。
その絵の修復を始めてしまうと、昔描いた自分の絵のどこもかしこも描き直してしまいたい欲求を覚えたカオルだったが、そんな気持ちを抑え込み、できるだけ元のタッチとなるように慎重に、そして、心を込めて仕上げたのがこの絵だ。
今、こうして、ゴンザが喜んでくれる姿を見ると、何とも言えない達成感に包まれていく。
しばらくの間、ゴンザと肩を並べて絵に見入っていたカオルだったが、ふと、ゴンザを振り返って尋ねた。
「そう言えば、鋼牙から何か連絡でもあった?」
その問いに、にこにことしていたゴンザが眉を落として返事をする。
「いえ…」
「そう…」
沈んだ表情のカオルに、ゴンザは慌てて付け足した。
「ですが、鋼牙様が訪れていると思われる閑岱の地では、天魔降伏の儀という儀式が無事に行われたという知らせは受けておりますので、鋼牙様のお帰りになる日も間もなくかと…」
それを聞いたカオルは、やや表情を明るくして、
「そっか…」
とだけ答えた。
その日、カオルは庭に出て、キャンバスに向かっていた。
ゴンザは、お茶の時間にカオルに喜んでもらおうと、せっせと焼き菓子の準備にいそしんでいた。
甘い匂いの漂う中、オーブンが焼き上がりを知らせる。
大きなミトンを両手にはめたゴンザが、緊張と期待を感じながらオーブンの扉を開けていると、玄関のほうで物音がした気がした。
(はて… 鋼牙様のお帰りか?)
そう思いながら、アツアツの天板を下ろして、ミトンを手から外した。
玄関のほうへ向かう前に鏡の前で身だしなみをチェックし、髪を手で撫でつけ、肩先のホコリを払ってから急ぎ足で廊下に出た。
すると、廊下の先のリビングのドアが勢いよく中から開けられたかと思うと、鋼牙が慌てたように駆けだしてきた。
(鋼牙様!)
チラッと見えた鋼牙の切羽詰まった表情に鼓動を速めたゴンザが慌てて走り出すが、その頃には、鋼牙の姿は廊下を曲がり消えていた。
鋼牙の後を追うようにゴンザも廊下を駆けながら、鋼牙の向かった先に思いを馳せたゴンザは、次の瞬間、
「ああ…」
と顔をほころばせていた。
鋼牙の向かった先は、カオルのいる庭の方。
鋼牙が曲がった場所まで来たとき、ゴンザの予想を裏付けるように、庭へと続くフランス窓から鋼牙が外に出る後ろ姿が目に入った。
それを確かめたゴンザは、足の動きをゆっくりと止めてから、やがて弾むような足取りでフランス窓に近づいた。
目に痛いくらい眩しい緑が溢れた庭で、驚いた顔から弾けるような喜色に変わっていくカオルの表情が見えた。
離れているから詳細まではわからないが、ふたりの声が交互に風に運ばれてくる。
二言三言交わされた後、伸ばされた鋼牙の手にカオルの手が掛かると、その瞬間、ぐいっと引かれたカオルが鋼牙の腕の中に包まれて姿を消した。
それを見て、ゴンザはそっと後ろを向いた。
ゴンザの位置からは鋼牙の表情などは少しも見えなかった。
けれども、ゴンザには手に取るようにわかる気がした。
鋼牙はきっと、今までゴンザが見たことのないような穏やかでしあわせそうな顔をしているに違いなかった。
そして、そんな鋼牙の気持ちが伝染したかと思うくらい、ゴンザも嬉しくてしょうがなくなった。
(いやですね。年を取ると涙脆くなってしまって…)
そう思いながら、目尻に浮かんだ涙をぬぐう。
そして、少し上を見上げ、スンと鼻を鳴らして、
「今日のお茶の時間は、とても楽しい時間になりそうですな」
と呟いてから、お茶の準備をするべくキッチンのほうへと歩き出した。
鋼牙が北の管轄へ、そして、カオルはイタリアへ絵の留学へと、ふたりの道が分かれたかのように思う日もあったが、再び出会える日があるとはやはり何かの因縁でもあるのだろうか?
いや、恐らく、そんな不確かなもののせいではないのだろう。
自分のやるべきことを知り、それに突き進んだふたりだからこそ、導き合うようにふたりの道が重なったのだとゴンザは思っていた。
そんなふたりの結びつきを近くで見ることができて嬉しいと、ゴンザはしみじみと思った。
このうえなくしあわせな日。
鋼牙にとってあの日は、間違いなく、そう言える日と言えよう。
ゴンザがそんな感慨に浸っていると…
「ゴンザさーん!
どこにいるのー?」
ふいに聞こえてきたカオルの声に、ハッとしたゴンザ。
「はーい、カオル様ー
ただいま参ります!」
大きな声でそう言うと、ノートを所定の場所に戻して急ぎ足で戸口に向かった。そして、書斎に通じるドアに手を掛けたところで再びノートを仕舞った場所に目を向けて、目を細める。
「ほんとうによかった…」
誰にも聞かれないまま、ゴンザの本心が口から零(こぼ)れ出た。
パタン
静かにドアが閉められて、無人となったゴンザの執務室の空気が止まる。
陽がだいぶん傾き、静寂に包まれた中で、ゴンザのノートが窓からのぼんやりとした柔らかな光を受けていた。
2006年5月x日
鋼牙様、閑岱より無事に帰還。
少々お疲れの様子だが、問題なし。
本日のカオル様は、とにかく嬉しそうで大層可愛らしく、鋼牙様はこのうえもなく穏やか。
言いようのない喜び。例えようもないほどのしあわせ。
fin
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思い出深い、あの日の数々。
思い出すのにDVDを引っ張り出して視聴しちゃいました。
…みんな、若い。
ほんとキャスト陣は神がかった布陣です。
あのとき、あの人でしか出せなかった声、表情、雰囲気に再び酔いしれました。
また、「画廊」回か一気見をしてみたくなりましたよ。
コメント
selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…
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