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きんのまなざし ぎんのささやき

牙 狼(冴 島 鋼 牙 Ver.)の世界を、気ままに妄想した二 次 創 作 サイトです

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別に君を(3)

すいません!
日曜にアップしようと思っていたんですが、なんだか管理サイトにアクセスできなくて…
というわけで、1日遅れとなりましたが、今日はなんとか無事アップできました。

少しでもお楽しみいただければ、と思います…


拍手[10回]



::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

「…宇 …美くん?」

ボンヤリ考え事をしていた宇佐美は、カオルから呼びかけられた声に気づいてハッとした。

「宇佐美くん?」

大丈夫? と問いかけるような目で見られていることに対して、

「あ、ごめん。ちょっとぼーっとしてた。ん、何?」

と慌てて訊き返す。

「あ、えっと… お土産とか買った、って訊いただけなんだけどね」

「ああ、土産ね…
 いや、まだだよ。
 ちょっと早めに空港に行ってなんか買わねーとな、って思ってるんだけど…

 あ、そうだ。なあ、なんかオススメってある?」

「んー、何があるだろう?
 やっぱり、チーズとかホワイトチョコとかかな」

「あー、定番だよな」

「うん、間違いない、って感じだね」

「…なあ、若い女性が喜びそうなのとかって知らない?」

「えっ、若い女性か…」

カオルはリクエストに答えようと思案顔だったが、すぐに何か思いついたようで、ニヤニヤしだした。

「ああー、なあに? 彼女にってこと?」

「へへへ、まーな」

照れ笑いする宇佐美。

「そーだなぁ…
 最近は、馬油とか雪の結晶の形をした紙石鹸とかが人気あるらしいよ」

「ふーん、馬油に紙石鹸ね…」

宇佐美はスマホで商品を検索してみて、へぇ、と呟いている。
真剣に画面を見ている宇佐美に、カオルは尋ねた。

「彼女とは長いの?」

そう訊かれた宇佐美は画面から顔をあげてカオルを見てから、さらに斜め上に視線を彷徨わせて考える。

「えっと… もう3年? あ、4年目か… まあ、結構いってるな。

 なに? 俺のこと気になってる? 彼女いてざんねーんとか?」

ほんの少し心の中をざわつかせながらも、なんということのない顔をして宇佐美が訊き返した。

「えーっ! ないない! そんなことないよー」

慌てて手を振りながら否定するカオルに、

「そんな力いっぱい否定するなよ。
 なんか俺のほうがざんねーんって思っちまうわ」

と半分本気のことを冗談めかして宇佐美は言い、互いにあははと笑い合った。
その笑いが収まった頃、カオルは、ちょっとためらってから口を開いた。

「ねぇ? それだけお付き合いが長いと、結婚とかって考えてる?」

「結婚かぁ…
 まぁな。するならあいつしかいないな、とは思ってるよ。

 なに? 御月はそんな相手いるの?」

「うん、まぁ…」

歯切れの悪いカオルに、宇佐美は畳みかける。

「付き合って長い彼氏がいるけど、そいつは結婚のこととか何も言わないって、そんなとこか?」

「…」

宇佐美の視線から逃れるように、手元のカップをなんとなく触っているカオルを見ながら、彼女の沈黙を肯定と捉えた宇佐美。
うーん、と考える宇佐美に、カオルは急にオロオロし出して

「やだ、ごめん! なんだか話が変な方向にいっちゃったね。
 あたしったらなに変なこと聞いてんだろう…

 あー、忘れて? えっと、ほら、お土産! お土産の話しよっか?」

と言った。
すると、宇佐美はフッと笑い、視線を落とす。

「えっ? 何?」

戸惑うカオル。

「あー、いや。
 なんか、御月って女の子だなーって思って…」

それを聞いて、怪訝そうに眉をしかめるカオルに対して、宇佐美は言う。

「いや、昔はさ、篠原たちとキャイキャイ言ってて、それはそれで御月も女の子してたけどさ。
 んー、なんての? 恋バナとかカレカノとか、もっとこう色っぽい感じの意味での女の子って感じが全然なかったじゃん?」

「えー、全然!?」

「うん、全然」

不満そうなカオルに、宇佐美は笑いをこらえながら言う。

「だけど、今、恋に悩む女って感じがすっげーしてた」

それを聞いて、カオルは両手で頬を抑える。

「うそ…」

「ほんと。
 別に俺、おまえのことなんとも思ってないけど、ちょっと軽くおまえの彼氏に嫉妬したくらいに。
 御月にこんな可愛い顔させやがってー、って思っちまった」

それを聞いて顔を赤らめるカオル。
けれども、怒ったような顔をして見せて

「もう、からかってるんでしょう、宇佐美くん!」

と唇を尖らせる。

「あはは」

宇佐美に笑われたカオルは、眉間の皺を深くする。

「いや、別にからかってないって」

「うそだ」

「うそじゃないって」

まだ、どこか納得のいってないカオルに宇佐美は言う。

「その彼とさ、付き合い長いんだろ?
 んで、御月は結婚してもいい、って思ってるんだ。
 だけど、相手からは何も言ってこない…」

カオルはこくんとうなずいた。

「で、そいつのこと信用できない?」

そう訊かれたカオルは、即座に首を振る。

「そんなことない!
 何も言ってはくれないけど、いい加減な人じゃないもの!」

「へぇ… どんなやつ?」

「…自分の信じる道をまっすぐ進む、強い人だよ。
 何も言ってはくれないけど、優しくてあったかい人…」

宇佐美に答えながら、カオルの意識は想い人のところに飛んでいったかのように視線は遠いところに向けられていた。
そんなカオルに、宇佐美は苦笑交じりに言う。

「なに、そいつ。かっこいいじゃん」

ふふふ、とカオルは笑う。

「そだね、かっこいいよ」

「なにそれ。ノロケ?」

宇佐美はゲンナリして見せる。
そして、プッと吹き出して、またカオルと笑い合う。

「なんだ、何も心配いらねーじゃん?」

「えっとー、まぁ… そうなのか、な?」

「そうだろー」




ふとカオルは時間を確認する。
それに気づいた宇佐美が気を利かせて先に口を開いた。

「あ、そろそろ、帰る?」

カオルは残念そうな顔を見せながらも

「うん、そうだね、そろそろ…」

と席を立つ準備をする。



涼しかった店を出て、肌をジリッと焼くお日さまの下でカオルと宇佐美は向かい合った。

「宇佐美くん、すっごく楽しかった」

「ああ、俺も」

高校生のときには大して話もしなかった間柄だったけれど、10年以上も経って、お互いに年を取ったからこそ、そして遠く離れた場所での思いもしない再会だったからこそ、楽しい時間を過ごすことができたのだった。

けれども、別れの時間だ。

なんとなく、言葉を探し合うような雰囲気の中、ふわっと風が吹いた。
その風が、あの絵の具なのか油なのか、高校生のカオルから香ってきたあの懐かしい匂いを宇佐美に届けた。

(ああ、これ…)

脳裏には高校生のカオルが浮かんだが、目の前にいるのはすっかり大人の女性になった彼女の姿がある。

この匂いが一気に宇佐美の感覚をあの頃に引き戻してしまうけれども、あれから刻まれた時間が、それぞれに帰る場所を作り、それぞれを待つ愛しい人の存在を作っていた。

別に今、宇佐美はカオルを好きなわけでも、好きになりたいわけでもない。
そんなことは十分わかっているのに、それでも、この心が震えるような、それでいて心を締め付けるような、甘酸っぱくてほろ苦い感覚に、なんだか泣きたい気がしている。

「それじゃあ、宇佐美くん」

「ああ。
 あっちに来るようなことがあったら、篠原にでも知らせてよ。
 適当に声かけて、またみんなで会おうぜ」

「うん…
 じゃあね。気をつけて帰ってね」

「ありがとう。
 御月も気をつけてな」

「うん…」

小さく手を振り合ってから、カオルは背を向けて歩き出した。
それを見届けて、宇佐美も反対方向へと歩き出す。

けれど、何歩も行かないうちに足を止め、そっと振り返った。
真っすぐに歩いているカオルの背中がだんだん遠くなる。

あの頃と同じもの。
あの頃と違うもの。
短い時間の再会だったが、カオルの中にはそれらが入り混じって存在していることが透けて見えた。
今の彼女を形作るものの中のほんの少しには自分という人間が関わっていて、高校卒業してからの彼女には別の誰かが大きく関わっているという事実。

(別に… ほんと、別に御月のことをどうこうとは思わないんだけど…)

そう思いながら、空を見上げる。
そこには、青い青い空が広がっていた。

「ああ… ちはるに会いたいな」

宇佐美は付き合っている彼女の顔を思い浮かべてそう呟くと、今度は振り向かずに歩き始めるのだった。



fin
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::


ホラーも出て来ず、鋼牙さんも出て来ず、なんならカオルちゃんさえ脇役な感じの妄想となりました。

宇佐美という、仕事もがんばっていて、結婚もぼんやり意識するような彼女もいる、ごくごくフツーのアラサー男子が、昔、ほんの少し淡い恋心を抱いた女性と会って… というお話。

この妄想、実はある曲から生まれてきたものなんですが、気づいた方、いらっしゃるでしょうか?
まあね、その曲の設定とまるまる同じではないので、気づか(れ)なかったかな~とは思います。

宇佐美くんはクズにもなってないし、カオルちゃんはタバコもくわえませんが
  彼女から香ってくる匂いで昔に引き戻される感覚
そして、
  別に彼女との関係性を変えたい(やり直したいとかいう)わけじゃない気持ち
  だけど、ちょっとだけ道が違ってたらどうだったろうと考えてしまう感傷
そういう部分だけ拾いあげてみました。

その曲とは大きく違ってる点は、女性から香ってくるのは香水の匂いじゃない、ってところ… です。
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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…



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