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きんのまなざし ぎんのささやき

牙 狼(冴 島 鋼 牙 Ver.)の世界を、気ままに妄想した二 次 創 作 サイトです

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自分にできること(1)

朝晩、ほんとに寒くなりました。
なんかほっこりとする妄想でもしたいな…

あ…
全然、ほっこりじゃないかも…

よろしければ、お付き合いくださいませ~♪

拍手[7回]



::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

(今だっ!)

ホラーの注意は完全に、シグトの操る号竜に引きつけられている。
ホラーの腕が振り上げられ、黒く禍々しい大きな爪が号竜に向け振り下ろされようとしている。
これまで全くと言っていいほど隙のなかったホラーに反撃する絶好のチャンスが、’今’ なのだ。

烈花は、魔導筆をホラーに向かいまっすぐに突き出すと、くるりと回して攻撃を仕掛けようとした。
だが、その手が唐突に動きを止めた。…迷いが生じたのだ。
闘いの最中での迷いは、致命傷ともなりかねない。

(…)

きゅっと下唇を噛んで眉をひそめたのは、ほんの一瞬だけだった。
すでに、ホラーの腕は一直線に号竜に向かって振り下ろされ始めていた。

烈花は、素早く魔導筆を小さく回し、浮かび上がった光の印の中央を筆先で突いた。
光の弾道が、一直線にホラーに向かって伸びていく。
ホラーの肩先を光が掠め、ホラーの腕が止まった。
ホラーに大きなダメージを与えるほどの攻撃ではなく、動きを止める、ただそれだけのための攻撃だった。

ギロリと濁ったホラーの目が烈花のほうに向けられる。

だが、そのときには、光弾を放ったとともに動き出していた烈花が先程よりも大きな光の印を描いて2発目を放とうとしていた。
それを見たホラーの目がカッと開かれ、ホラーの足が地を蹴った。

俊敏なホラーの動きに、2発目は辛うじて避けられてしまった。

「烈花っ!」

シグトが焦りのあまり声を掛ける。

「落ち着け、シグト!
 号竜を立て直すんだ!」

烈花の叱咤するような声が飛ぶ。

「わ、わかった!」

シグトは、自分を落ち着けるように大きく息を吐いてから、号竜を操るための魔導筆を握り直した。

「号竜! いい子だから、俺の言うことを聞いてくれよ?」





今をさかのぼること、数時間前。

シグトの手元になる号竜は、最近になって調子が悪くなっていた。
シグトからの命令がうまく伝わらないことが度々あって、メンテナンスしてくれるように依頼していたのだが、今日になって、号竜の製作者である布道レオが直々にメンテナンスに訪れてくれたのだ。

港町にあるぱっと見、怪しげな雑貨店’あかどう’ のドアがそっと開かれた。

「こんにちは…」

遠慮がちな声とともに長針の布道レオが中を覗いた。

「いらっしゃいませ」

作り笑いを浮かべながらシグトが振り返ると、レオの顔を見て、今度は正真正銘にっこりと笑顔になった。

「レオさん!
 早速来てくれたんですね? ありがとうございます!」

わかりやすくウェルカムの意志を前面に出したシグトの対応に、レオはほんのちょっと緊張を解いて、ゆっくりと店内に入り、後ろ手にドアを閉めた。

「号竜の調子が悪いと聞きました。
 さっそくなんですが、見せてもらってもいいですか?」

「もちろんです。
 さっ、こちらへどうぞ!」

「えっ、あの、お店、いいんですか?」

「ああ、いいんです。
 どうせ、お客さん、そんなに来ないし…
 さ、どうぞ?」

「は、はあ…」

戸惑いながらも、レオは店の奥へとシグトに案内された。



調子が悪いという号竜を前にして、いつ頃から調子が悪いのか、どんなふうに悪いのか、悪くなるタイミングというのがあるのか、など、レオはシグトにひとつひとつ尋ねていった。
話を聞きながらも、レオの手は号竜をつぶさに観察する。

「そうですか、なるほど…

 ところで。
 号竜、大事に扱ってもらってるみたいですね? ありがとうございます…」

ホラーと闘うため、どうしたって大なり小なり傷があるのは仕方がないのだが、この号竜は錆びや汚れもなくきれいに磨かれていて、油が差されているのか軋みも少ない。
レオは嬉しそうにそう言うと、頭を下げた。
’亜門法師の再来’ とも言われるレオに礼を言われたシグトは、途端に慌てる。

「いやいやいや。レオさん、頭を上げてくださいって!
 俺、号竜のこと好きなんで当然のことをしたまでなんですから…
 こいつが来てから、ホラーとも渡り合えるようになって、自分自身に自信もついたし…
 それに、時々こいつ甘えてくるんですよね。それがなんというか可愛いっていうか…
 だから、そんな、ほんと、お礼を言いたいのはむしろこっちのほうなんで!」
犬や猫のように万人受けするような外見をしているわけでもない号竜だが、それでもシグトは気に入っていた。
それがストレートに伝わって、レオも嬉しかった。
自分が心血を注いで作り上げたものを、好きだと言われたら、こんなに嬉しいことはない。

その後も、結局、シグトは店に戻ることもなく、レオのそばでメンテナンスの様子をじっくりと見ていた。
もともとシグトも、機械仕掛けの雑貨の修理などを行うこともあり、そういうことが嫌いなほうではないのだ。

レオの邪魔はしたくなかったが、ついつい、ここはどうなってるのか? とか、ここはこうしたらどうなんだ? とか、シグトの興味は尽きなかった。
レオもまた、それが嬉しくもあり、ついつい機械好きな者同士、楽しく時間を過ごしていた。

そんなところへ、少々不機嫌な声が聞こえてきた。

「おい、シグト。
 客を放っておいていいのか?」

「あっ! 烈花、来てたのか?」

「来てたのか、じゃないだろう?
 客が ’いくら声を掛けても誰も出てこない’ と言ってたぞ」

「うわっ、やばい…
 すいません、レオさん、ちょっと行ってきます」

そう言うなり、シグトは店へと急いで戻っていった。
そして…

「…」

なんとなく気まずい空気が流れた。

正直なことを言うと、レオは烈花のことが若干苦手だった。
第一印象が悪かったのだ。

鋼牙が、レオの双子の兄であるシグマによって、ギャノンに取り込まれてイデアの核とされたとき、魔戒騎士がふたりもいて何やってるんだ、と叱られたのが最初の出会いだ。
もともと魔戒騎士として強い気概も持てなかったこともあって、魔戒法師… それも、女の魔戒法師にずばり言われたことに、少なからずショックは受けたのだった。

「あ… 烈花さん。
 今日は、号竜が調子悪いということで、メンテしに来ました」

「そうか」

「…」

(うーん、会話が続かない)

視線を彷徨わせながら話題を探すも、すぐには何も思いつかず…

「じゃ、号竜、見ますので…」

「ああ、頼む」

「…はい」

レオはこちらに向けられた烈花の強い視線を避けるように、号竜に向かい合った。

(集中すればなんてことはない… 集中… 集中…)

言い聞かせるようにそう思いながら、手元の号竜を分解する作業を始めるレオだった


to be continued(2へ)
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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…



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