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きんのまなざし ぎんのささやき

牙 狼(冴 島 鋼 牙 Ver.)の世界を、気ままに妄想した二 次 創 作 サイトです

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自分にできること(2)

11月23日は金狼感謝の日!
あー、また1年経ったのですね…
(あっ、年賀状プレゼント、応募しました!)

さて。
今宵の妄想には「金狼」は出てきませんが、ちょっとでもお楽しみいただければ、これ幸いです。

拍手[6回]



::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

最初のうちこそ烈花の存在が気になっていたレオであったが、号竜を前にして手を動かし始めてしまえば、意識は号竜にのみ注がれた。
号竜は可能な限りネジ穴を隠しているため、分解するにしても決まった手順がある。
最初に外すべきネジを隠した覆いの脇にある小さな穴に、細いキリ状の道具をゆっくりと差し入れる。
すると、カチっという音と共に多いが浮いた。
その隙間に道具の先端を入れ、テコの要領でさらに覆いを浮かせて取り外すと、今度はドライバーのような道具でネジをひとつずつ外していった。

レオの身体に沁みついてしまった手順のとおり、号竜はどんどん分解されていく。
そうした中でも、レオは不具合の原因がどこにあるのかを探し当てるため、注意深くひとつひとつの部品の状態や部品同士の接合の状態を観察する。
取り外された部品を見つめるレオのまなざしは真剣そのものだ。
時にブツブツと口の中で何かを呟きながら、よく使い込まれていることをうかがわせる表紙の手帳にカリカリと何かをメモしている。

そんなレオの様子を烈花はしばらく眺めていた烈花だったが、特に号竜にもレオにも興味のあるわけでもないため、やがて椅子に座ったまま腕を組み、瞼を閉じた。

金属がかすかにぶつかり合う固い音。
メモがめくられる乾いた軽やかな音。

「うーん」

とか

「あれっ?」

とか

「うんうん」

とか

「いやぁ」

とかいったレオの呟き。

そんなレオが立てる音を聞きながら、烈花は束の間まどろんでいた。



すると、そんなところへ、来客の対応を終えたシグトが帰ってきた。

「いやあ、ちょっと早いけど今日はもう店、締めてきま… あっ」

そう言いながらレオたちのいる部屋のドアを開けたシグトは、中の様子を見て言葉を切った。
レオは号竜の修理に集中しているようだし、烈花はお休み中だったからだ。
シグトは、黙ったままそっとドアを閉めると、

(今日はレオさんも烈花もいることだし、ふたりにうまいもんでもごちそうするか…)

と、財布の中身を確認し、マイバックを持って、買い出しのために店を出た。




「…っか …れっか」

肩を揺さぶられ、遠くで聞こえていたと思ったシグトの声が急に近くに聞こえたようで、烈花はびくっとして目を覚ました。

「よく寝てたな、烈花。
 疲れているのか?
 なんだったら横になって寝てもいいぞ?」

ニカッと笑いながらそう言うシグトは、烈花の顔を覗き込んでいる。
さすがにぐっすりと寝入ってしまっていたことが気恥ずかしい烈花は、仏頂面を作りながらプイッと顔をそらす。

「いや大丈夫だ。
 ちょっと疲れがたまっていただけのこと… 横になる必要はない」

「そうか? ならいいんだが…

 なあ、烈花。腹減らないか?
 めし、用意したんだ。
 レオさんと一緒に食おうぜ?」

そう言われて初めて食欲をそそるようないい匂いに気づく。
見れば、テーブルの上には、いつになくごちそうが並んでいた。
そんなところへ、一足先に作業を中断して手を洗いに行っていたレオが帰ってくる。

「ああ、レオさん。こちらへどうぞ。
 ほら、烈花も!」




その夜は久しぶりににぎやかな夕食となった。
と言っても、シグトに話を振られたレオが時折返事をし、烈花はというと、

「そうだな」

とか

「まあな」

とか、一言二言返すくらいで、しゃべるのは圧倒的にシグトだったのだが。



「レオさん、元老院には、いろんな管轄からの情報って入ってくるんでしょ?
 最近、ホラーの動きってどうなんですか?」

それまで当たり障りのない話をしていたシグトだったが、ふいにそんなことをレオに尋ねた。

「ああ、そうですね…」

ちょっと考える素振りを見せてからレオは再び口を開いた。

「特にこれと言って変わったことはないかな、と。
 特別、ホラーの数が増えたとも減ったとも聞かないですし…」

「そうですか…
 やっぱり、人間の陰我ってそうそう無くなるもんじゃないですよね…

 あ、烈花は?
 最近やり合った相手として、こいつは強いなとか、風変わりなヤツとかいた?」

話を振られた烈花は、食べる手を止めてしばらく考えてから、

「別に… 取り立てて言うほどのやつはいないな」

と答え、止まっていた手を動かして湯気のあがるロールキャベツを口の中に入れた。

「そっか…」

思いのほか話が広がらなかったのを受け、シグトは次は何を話そうかと考えたので、少し沈黙の時間ができた。
そんなときに、烈花が口を開いた。

「レオは、最近指令が来たか?」

「えっ、ぼくですか?」

「あっ、それ、俺も聞きたい!
 素朴な疑問なんですけど、レオさんって、魔戒騎士としての指令って結構たくさん来るんですか?」

「ああ、そういう意味の…」

ほんの少し複雑な表情を浮かべたレオだったが、まっすぐにシグトを見て答えた。

「そうですね、指令はありますよ。魔戒騎士としての…
 ただ、元老院からは魔戒法師の分野の働きも求められることもあります。今日ここに来た理由のような、ね」

「そうですよね! なんたって、’阿門法師の再来’ って言うくらいだし。
 俺、羨ましいっす。俺にも人に誇れるような何かが一つくらいあればなぁ、って思いますもん」

「いえいえ、そんな大層なもんじゃ…」

「いーえっ、十分、大層なもんですっ!」

「いやぁ…」

強く力説するシグトに、レオは苦笑を浮かべるしかなかった。
そんなレオは烈花は横目で見てから、最後のパンのひとかけらをポイッと口に入れて黙って咀嚼した。





「すまないな…」

烈花はぼそりとレオに謝った。



それは、にぎやかな食事(にぎやかだったのは、ほぼシグトだけだが)の後のことだった。

「後片付けなんか手伝わないでいいから、ゆっくりコーヒーでも飲んでてください」

とシグトは言って、ひとりでキッチンに引っ込んでしまい、その結果、部屋にはふたりが残された時。
そのなんとも気づまりな中、レオがコーヒーを啜(すす)っていたときに飛び出してきたのが、烈花の謝罪だった。

「えっ?」

いきなりの謝罪に、レオは思い当たることもなく、少し驚いた表情をした。

「シグトのことだ。
 ’阿門法師の再来’ とか… そんな風に呼ばれるのは本当は嫌なんじゃないのか?」

それを聞いて、レオは、

(ああ、そのことか…)

と思いながら、ふっと笑う。


to be continued(3へ)
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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…



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