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きんのまなざし ぎんのささやき

牙 狼(冴 島 鋼 牙 Ver.)の世界を、気ままに妄想した二 次 創 作 サイトです

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自分にできること(3)

号竜の不調とともに、我が家のPCも不調に…
これは、なんの陰我(因果)なんだ、と苦笑いしか出ません。
我が家の号竜よ(あ、PCのことね)… 闇に飲まれるなーーーっ!

拍手[6回]



::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

魔導具に関する造詣が深く、その修復にかけては右に出る者がいないと称された阿門法師。
レオが、その阿門法師の再来と呼ばれるのは、号竜の発明があればこそだった。

これまで魔戒法師はホラーを封印することはできなかった。
魔戒騎士しか成しえないホラーの封印を、号竜を操ることで、下級ホラーに限定されるとはいえ魔戒法師でも可能としたことは、画期的なことだったのだ。
それ故、レオに尊敬の念を抱く魔戒法師も少なくないのは事実だ。

「正直…」

わずかに視線を落としたレオが、言葉を選びながら口を開いた。

「ぼくなんかがおこがましい…って思います。
 阿門法師に憧れないわけではないんですが、ぼくは別に、阿門法師のようになりたいという想いがあるわけでもなくて…

 ただ…
 ホラーに脅(おびや)かされることのない、そんな日が来ればいいな、とそれだけで…」」

訥々(とつとつ)と語るレオを、烈花が黙って見ている。
すると、自分の心情の一端をさらけ出したことにハッとしたレオは、烈花を見てから照れ臭そうに笑った。

「だから、あの… ’再来’ とか、そんなふうに言ってもらって嫌なわけじゃなくて…
 ただ、その…
 面と向かってそんなふうに言われることがないので戸惑ったというか…」

そう言っておいて、レオはまた視線を落とす。

レオが ’阿門法師の再来’ と呼ばれていることは事実である。
ただ、レオは、閃光騎士 狼怒の鎧の正当な継承者であることもまた事実。
魔戒騎士であるにも関わらず、魔戒法師の真似事なんかして、と思われていることも事実であり、それはレオの耳にも入っていた。

レオが好んで魔戒騎士の道を進んだわけではない。
魔戒法師として生きられず、魔戒騎士にもなりきれないという思いがあった。
覚悟ひとつ持てば済む話なのかもしれない。
だが、そうやって割り切れない自分の弱さに、いつだって中途半端な自分の立ち位置に揺れていた。

けれども、兄シグマとの闘いの中で冴島鋼牙という男に会い、鋼牙の闘う背中を見て、大事なのは、「魔界法師だから」とか「魔戒騎士だから」とかいう、そんなことではないのだと思うようになっていた。
自分の立場がどうだというのは些末なこと。ホラーを倒すために自分ができることをただひたむきにすればいいのだ、と鋼牙に教えられたような気がする。

とはいえ、迷いがないわけではない。
いまだに心が揺れることだってある。
迷いながらも、手探りで前に進もうとしていた。

烈花に対して、そんな自分の胸の内を明かすことなどあるはずもないが、心の中の陰りが、どこか寂しそうな力のない笑みとなってレオの表情に表れていた。




食後、程なくして、レオは号竜の修復に再び取り掛かった。
シグトも烈花も声をかけることが憚(はばか)られるほど集中しているレオが、
「ああっ…」

と眉を大きくひそめて落胆の声をあげたのは、およそ1時間ほど経った頃だった。

「ど、どうしたんですっ!?」

シグトが慌てて声を掛けた。
すると、レオはシグトを振り返り、大きなため息をついてから話し出した。

「号竜の不調の原因がわかりました。
 ただ、とてもまずいことに、今ここでは修復できないことがわかったんです」
「ええっ!」

「ここ、見えますか?」

そう言いながら、レオが部品の一部をピンセットで差し示す。
それに釣られるようにシグトが覗き込む。

「ここに見えるコイル状の細い糸のようなもの… これ、聖獣の髭なんです。
 その聖獣の髭がここのところで切れかかってるので、うまく動力が号竜の末端に伝わらなかったんです」

確かにシグトの目でもそれが確認でき、大きく眉が下がって尋ねる。

「これ、どうするんです?」

「はい。これはもう、交換するしかありません。
 ただ… 聖獣の髭が今、手元にはないんです。
 けれど、元老院にはストックがあるはずなので、申請して承認を得られれば入手することは可能です。

 なあに、大丈夫。
 申請はすぐにでも出します。そして、恐らく、承認もしてもらえるでしょう。
 問題なのは、入手した聖獣の髭をここまで持ってきてもらうか、取りに行くかしないといけないということで…」

レオの話にシグトは青くなったり赤くなったりしている。
それまでレオたちの話を黙って聞いていた烈花だったが、ふいに、

「では、オレが取りに行こう」

と声を掛けた。
その声に驚いたような表情でレオとシグトは振り返ったが、レオは静かに言った。

「ありがとうございます。でも、今なら魔戒道が使えます。
 持ってきてもらうより、こちらから烈花さんが取りに行くよりも、ぼくが魔戒道で取りに行くのが一番早いように思います。

 ひとまず、応急処置を施してから号竜も組み立てておきます。
 申し訳ないのですが、それでしばらくの間、凌(しの)いでください。

 組み立てが終わったら、すぐにぼくは元老院に戻ります。
 多分、2~3時間後にはここに戻ってこれるでしょう」

「えっ、いいんですか?」

レオに使い走りのような真似をさせることを、シグトが気遣う。

「問題ありません」

きっぱりと言ったレオが大きくうなずいて見せた。

「…わかりました。
 レオさん、ありがとうございます。
 すみませんが、よろしくお願いします」

レオのありがたい申し出に、シグトは噛みしめるように礼を言い、深く頭を下げた。





その後、レオは元老院へと戻っていった。
シグトは、レオが戻ってくるまで何もなければいいが、と祈るように思っていたが、人の陰我は時と場所を選んではくれなかった。
怪しげな気を感じ取ったシグトは、烈花とともに、羅針盤の示す方向へと急いだ。
もちろん、レオに応急処置をしてもらった号竜を携えて…

シグトにとっての幸運は、烈花の存在だった。
醜い姿を晒したホラーを前に、号竜を操りながら応戦したが、やはり、号竜の働きぶりは絶好調というわけにはいかなかったからだ。
シグトと烈花は、今は亡きアカザを師と仰いで共に修行をしていたので、互いの呼吸は解り過ぎるくらいに解っていた。
烈花の攻撃の隙間を助けるようにシグトは攻撃を仕掛け、号竜のコントロールが怪しくなれば烈花がそれを助けた。

ふたりの息の合った波状攻撃に、じわりじわりとホラーは追い詰められていく。
けれども、烈花とシグトにも焦りがあった。
号竜の動きが目に見えて悪くなっていたのだ。

「くっ…」

コントロールしきれない号竜に、シグトは強く魔戒筆を握りしめ、奥歯を強く握りしめて必死の形相だ。

  ギ、ギ、ギ…

と動きを止めてしまいそうな号竜に、ホラーはニタリと気味の悪い笑みを浮かべる。

(今だっ!)

ホラーの注意は完全に、シグトの操る号竜に引きつけられている。
ホラーの腕が振り上げられ、黒く禍々しい大きな爪が号竜に向け振り下ろされようとしていた。





号竜を犠牲にしてしまえば、ホラーにかなりのダメージを与えることは可能だった。
けれどもギリギリのところでその選択を捨てた烈花は、号竜に向けられていたホラーの気を自分に向けさせて号竜のピンチを救った。
ただ、その代償にホラーを仕留めるチャンスを放棄することになり、戦況が一変していた。
明らかに調子の悪くなった号竜を庇いながらの闘いは、烈花にとって分(ぶ)が悪い。

ホラーの攻撃に大きく後ろに飛びずさった烈花の足元が悪く、ぐらりと態勢が崩れた。

(しまった!)

けれども、いまだ冷静さを失わない烈花は、迫り来るホラーの爪をかいくぐり、くるりと回転しながらホラーの背後に回る。
が、うまく避けられたと思ったのも束の間、ホラーの鞭のように細く長いしっぽが大きくしなり、烈花の身体に巻き付いた。

「烈花!
 くそっ! 号竜、動いてくれーっ!」

焦りながら、号竜をなんとか操ろうと必死なシグト。

烈花は、辛うじて魔戒筆を持った腕を身体の前に立てて構えることができたので、鞭の戒めをまともに食らうことは避けられた。
だが、ギリギリと締め付けるしっぽの力は強く、魔戒筆を持つ手もジンジンと痺れてきた。

(なんとかしないと、このままでは…)

痛みに顔を歪めながらも、反撃の手を必死に考える烈花。
そんな烈花をニタニタと見るホラーは、余裕たっぷりに彼女に近づいてくる。
さすがの烈花も、冷たい汗が伝うのを感じていた。



と、そのときだ!

ホラーの後方で、強い光が放たれた。
思わず目をつむった烈花と、動きを止めるホラー。
目を開けているのも難しいほどの光が、やがて徐々に弱くなり、烈花がうっすらを目を開けてみる。
すると、そこには魔戒騎士の姿があった。

雄牛のように太く曲がった角がこちらを威嚇するように前を向いているその姿は、うっすらと紫に輝いていた。

烈花がその姿を見たのと、ホラーが振り返って見たのはほぼ同時で、次の瞬間には、魔戒騎士は地面を強く蹴り、跳躍していた。
あっと思う間もなく、ホラーのしっぽがぷっつりと斬られ、烈花の身体を強く締め付けていた戒めからフイッと力が失われた。

  ギィーッ

と耳障りな叫び声が響いて、ホラーがよろっとよろめいた。
が、それもすぐに態勢を持ち直し、ホラーは口から緑色の強い刺激臭のする液体を魔戒騎士に向かって吐きかけた。
魔戒騎士はさっと右肩を引いて、最小限の動きでそれを交わすと、地面に飛び散った液体がアスファルトを溶かしてブスブスと白い煙が立ち上る。

そのちょっとした隙をついて、ホラーが逃走を図った。
今の攻撃は、逃走のための目くらましだったようだ。

「逃がすかっ!」

そう叫んだのはシグトだ。
魔導筆をしっかりと掴み直して、号竜に強く念を送る。
すると、それまで動きを止めていた号竜が、カシャンカシャンと機敏に動き出し、口とおぼしきところから黒い砲弾のような波動が放たれた。
その波動は見事ホラーの背に命中し、ホラーは大きくよろけた。

それを見た魔戒騎士は、少し反りのある大きな魔戒剣を強く握ると、地面を蹴ってホラーに飛びかかり、その剣でホラーの背を大きく割り切った。

  グギギギィーッ

耳を覆いたくなるような断末魔が闇夜を引き裂くように響いた。
その残響が消え去るのを待たずに、ホラーの身体は空に溶けるように黒い霧となって消え去ると、

  ガシャン

と重たい金属音とともに、烈花たちの危機を救った魔戒騎士が鎧を解いた。

「レオさんっ!」

シグトが名前を呼びながら駆け寄る。

「大丈夫でしたか?」

レオはシグトと烈花を交互に見やる。

「俺たちは無事です」

そう言いながら、シグトは烈花を振り返り、烈花もうなずいた。
が、すぐにシグトの表情が暗くなる。

「でも…」

そう言って振り返ったシグトの視線の先には、もうぴくりとも動かなくなってしまった号竜があった。


to be continued(4へ)
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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…



hitori 様[07/08]
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