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きんのまなざし ぎんのささやき

牙 狼(冴 島 鋼 牙 Ver.)の世界を、気ままに妄想した二 次 創 作 サイトです

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また巡り逢える(1)

とうとう、手を出してしまいました。
蒼哭のエンディングの妄想

いえ、特に、「これを書こう」という奇抜な発想があるわけではありません。
特別、綿密なプロットがあるわけもないし…
しかも、いつものように、無謀な見切り発車でございます。

途中で息切れしたら、ごめんなさいよ! って感じです。 (笑)


拍手[27回]


::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

約束の地での闘いが終わった。

カカシが消え、クロマルが行った。
そして、キリアも…

生命の気配が全く感じられない、白く乾いた景色が広がる場所で、ひとり
ポツンと残された鋼牙は、達成感と疲労感を等分に感じていた。

その鋼牙の耳に、ガジャリの声が聞こえてきた。
言われるままに、目の前に現れた光の中に飛びこむ。

魔戒道のような無機質な空間を、一歩一歩、力強く踏みしめて前だけを見て
進んでいく。

やがて、唐突なまでに空気が変わった。

 ズゥゥゥン…

霊圧のような重さが、鋼牙の全身を襲う。
気づけば、目の前にガジャリがいた。

鋼牙はすぐさま剣を右手に持ち帰ると、コートの裾をさばいてひざまずき、
自らの前に静かに剣を置いた。
そして、頭を垂れたまま、静かに口を開いた。

「ただいま、戻りました」

鋼牙の報告に、白い空間をふわふわと漂うガジャリが

「うむ」

と、低く重い口調でうなずいた。

「冴島鋼牙よ、よくぞ戻ってきた。

 おまえが持ち帰った ’嘆きの牙’ は、しかと受け取った」

ガジャリの言葉に、鋼牙は無言でうなずいた。




それから程なくしてガジャリから解放された鋼牙は、疲れた身体で、
元老院へと向かった。
グレスとの面会を乞うと、急な申し出にも関わらず、すぐに許可が下りた。

グレスはすでに、満面の笑みを浮かべて鋼牙を待っていた。

「よくぞ無事に戻りました、冴島鋼牙」

「はい」

短く返事をして、鋼牙は頭を下げた。
その様子にグレスは感無量な様子で何度かうなずいてから、鋼牙に言った。

「ガジャリとはもう?」

「はい。
 ガジャリに会ってから、ここに来ました」

グレスの問いに鋼牙が答えると、グレスは心底ほっとした様子を見せた。

「ご苦労でした。

 あなたに命を救われた魔戒騎士たちも、あなたが帰ったことを聞けば、さぞや
 喜ぶことでしょう」

「みなに変わりはないですか?」

少し懐かしそうな顔をして、鋼牙がグレスに尋ねた。

「前にも増して、オブジェの浄化やホラーの殲滅に励んでくれています。

 そうそう…」

グレスはもったいぶったように言葉を切ってから少し笑って言った。

「今、サバックが開かれているのです。

 今日が決勝の日…  もう、勝者が決まっている頃かもしれません」

「サバックが…  そうですか」

グレスの言葉に、鋼牙は少し遠い目をして、中空へと目を転じた。

サバックとは、魔戒騎士たちがソウルメタルの剣ではなく、重たく
扱いにくいごく普通の鉄の剣を手にして、力と技のみで鎬(しのぎ)を
削り、最高の騎士を決める一大イベントだ。

並みいる魔戒騎士の中でも、そのトップに君臨する騎士である牙狼は、
残念ながら、サバックには参加できない掟(おきて)になっている。

だが、かつて、鋼牙は番犬所からの指令を受け、薬で顔を変え、名を
変えて、サバックに潜入したことがあるのだ。



「勝者が誰か気になりますか?」

鋼牙の反応を楽しむように見ていたグレスが声をかけた。
ハッと我に返った鋼牙が答える。

「いえ…」

一度は反射的に否定してみたものの、鋼牙は考え直して、素直な気持ちを
打ち明けた。

「…はい、気になります」

グレスは、鋼牙の反応に笑みを浮かべて、

「では、今から行ってみますか?
 会場までの魔戒道を、特別に開けてあげましょう」

グレスの申し出に、鋼牙の心は揺れた。

毎年、恒例行事として開かれるような武術大会であるなら、鋼牙も迷いは
しないだろう。
サバックの勝者は、間違いなく、今の騎士たちのトップに君臨する実力の
持ち主なのだ。
そんな男に会ってみたい。
願わくば、男の実力を自分の目で確かめてみたかった。

だが、北の管轄では、鋼牙の帰りを待っている者がいるのだ。
いつだって、騎士としての務めを優先してしまう鋼牙を、辛抱強く待つ者が。
その者のためにも、すぐに帰りたい気持ちもあった。



迷いを見せる鋼牙を、急かすこともなくグレスは待った。
そのグレスが、はっと何かに耳を澄ますような、気持ちを集中させるような
素振りを見せた。
そして、おもむろに鋼牙に向かって言った。

「サバックの勝者が決まりました。

 直接出向かなくても、あなたが望むようなら、ここでその者の名を教えて
 あげても構いません。

 どうしますか?」

グレスにそう言われて、鋼牙の心は決まった。

「いえ…
 やはり、直接会ってみたいと思います」

迷いのなくなった鋼牙の目には、少年のような好奇心が見え隠れしていた。

グレスは大きくうなずくと、さっと手をあげた。
すると、鋼牙のすぐ脇に四角く切り取られた魔戒道の入り口がぽっかりと
現れた。

鋼牙はグレスに一礼したかと思うと、すぐにコートの裾を翻して、魔戒道へと
足を踏み入れた。





魔戒道の中を、鋼牙は足早に進んでいく。

『おい、いいのか鋼牙?』

魔戒道に入ってすぐに、ザルバが鋼牙に声をかけてきた。
鋼牙はザルバには目もくれず、

「なにがだ」

と聞き返した。
明らかに、ザルバが何を差して言っているのかを知りつつ、鋼牙は知らぬ
振りをしていた。
ザルバは、鋼牙にも聞こえるように、大きな溜め息をついた。

『はぁ~』

「…」

ザルバの態度に、鋼牙はわずかに眉をひそめたが、無言を通した。

『やれやれ…
 カオルがいつまでも待っているなんて思うなよ、鋼牙』

呆れながらザルバがぼやくと、鋼牙は、少し間をおいてから、ぼそりと
言った。

「…判っている」





そんな会話をしているうちに、あっという間に魔戒道の出口が見えてきた。
その出口がどこに通じているのかはまだ判らなかったが、ぽっかり開いた
出口からは、潮の香りが漂ってきていた。

薄暗い魔戒道から出てみると、そこは、どこかの海を望む小高い丘の上
だった。
人気(ひとけ)のない海岸に、波が打ち寄せては引いていた。



鋼牙はすぐにソレに気がついた。
丘の端にへたり込むように置かれた、木製の人形…  古びたカカシだ。

「…」

鋼牙はゆっくり、そのカカシに近づく。
そして、手をあげてカカシの頬に触ってみた。
潮風に巻き上げられた砂のせいなのか、ザラザラとした感触だった。
その頬は少し西寄りに傾きかかった陽の光を浴びて、とても温かかった。

瞬時にして、約束の地での ’友’ との時間が甦った。
時間はそんなに経ってないはずなのに、すでに、遠い昔のことのようにも
思えた。

「…」

鋼牙は無言のまま、そのカカシの頭や肩に溜まった砂を丁寧に払い落して
やった。




『鋼牙、誰か来るぞ』

ぼんやりと海を眺めながら、 ’そのとき’ を待っていた鋼牙は、ザルバの
声を聞いて、ついに来たか、と周囲を見渡した。
鋼牙のいるこの丘に向かって、全身黒ずくめの男が、確かな足取りで
一歩一歩上ってくる。
男の顔には、何かをやり遂げたような満足感が浮かんでいた。

すでに向こうもこちらの存在に気づいているのだろう。
その顔に、笑みが広がっていた。



to be continued(2へ)
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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…



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