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きんのまなざし ぎんのささやき

また巡り逢える(4)

えっと、続きです…

ん? 続きかな?
いや、う~~~ん、違うかな?

この展開は、許されるのか?
ふ~む…




::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

カオルの絵本が出版された。


出来上がった、ピンク色の絵本を手に取ったとき、カオルは思わずそれを
胸に抱きしめた。
そして、もう一度じっくりと表紙を眺める。



’白い霊獣と秘密の森’



絵本のサイズも、装丁も、どことなく父の絵本に合わせるように作って
もらった。

絵本の表紙には、白い狐面の子どもが楽しそうに歩いている。
カオルの脳裏には、あの日のレオとの小さな冒険のことが自然と甦ってくる。

あの日のことは、レオとカオルだけの秘密のはずだった。



「レオくん…
 勝手に絵本に描いちゃって、ごめんなさい。
 あたし…」

カオルがそうレオに謝ると、レオは笑いながら言った。

「いいんですよ、カオルさん。
 それに…」

「…?」

レオは爽やかに笑って、こう付け足した。

「それに、アレが実際の出来事だとは、誰も信じちゃくれませんから」

レオの言葉に、ようやくカオルもほっとして、

「ありがとう」

と笑うことができた。




絵本が完成してからというもの、俄然、カオルは忙しくなった。
発売を前に、出版関係や幼児教育関係の雑誌などから、次々と取材を
受けた。
絵本の出来もさることながら、カオル自身のルックスの良さも手伝って、
無名の画家の絵本デビュー作としては異例の大きさで、記事に取り上げて
もらえたりもした。
そのお陰もあってか、絵本のセールスもなかなか順調で、あちこちの
書店からサイン会の依頼がいくつかあった。



カオルと鋼牙が出会ったポートシティでも、サイン会が開催された。
その会場には、零も顔を出した。

「来てくれたんだ、零くん」

「あたりまえじゃない。
 はい、これ」

そう言って、背中に隠していたミニブーケを差し出した。

「うわぁ、きれい!  ありがとう…」

「ビタミンカラーっていうんだって、それ。
 元気が出る色ってことらしいんだけど…

 カオルちゃん、サイン会、頑張ってね!」

カオルは手の中の小さなブーケに目を落とした。
オレンジ色のガーベラに、黄色いバラ、グリーンのアイビー…

「ホントだ…  なんだか元気が出てきたよ。

 …うん、あたし、頑張るから。  零くんも安心してね」

ほんの一瞬、カオルと零の間に言葉を介さない時間が流れた。
ブーケに託した零の気持ちに、カオルはちゃんと気づいていたのだ。

零は目を閉じて、小さく息をひとつついてから言った。

「あぁ… カオルちゃん、安心したよ…

 それじゃ、他の人の迷惑になるから、俺もう行くね。
 またそのうち、屋敷のほうにも遊びに行くから、ゴンザにもよろしく
 言っといて。 じゃあね」

背中越しに手をヒラヒラさせて、あっという間に零は会場を後にした。
その背を見送りながら、カオルは心の中で呟いた。

(ありがとう、零くん…)




また、別の町では、子ども連れが多いお客さんの中に、全身真っ黒な怪しげな
風体の男が混ざっていた。
怪訝に思いながらも、その風貌には見覚えがあって…

「あっ」

男とじかに対面して初めて思い出した。

「あなた、あのときの魔戒法…」

男は慌てて自分の唇の前に人指し指を立て、小声で言った。

「それ、言っちゃダメ…」

カオルも慌てて口を手で塞ぎ、辺りをきょろきょろと見回した。
男はわざと、少し大きな声で周りに聞こえるように言った。

「この本、とってもかわいいですね。
 今日はお会いできて光栄です!」

カオルもそれに合わせて、ぎこちなく笑顔を作りながら応えた。

「あ、ありがとうございます!
 えっと… お名前、どうしましょう?」

男はへへっと笑って、声のトーンを普段のものに戻した。

「あっ、じゃあ、せっかくなんで入れてください。
 俺、シグトって言います」

「シグトさん、ですね?」

「えぇ」

カオルは、絵本にサインを入れながら、シグトに尋ねた。

「あの子… 烈花、ちゃんでしたっけ? 元気にしてますか?」

「烈花は、今、邪美さんと一緒に修行しています。
 もっともっと強くなりたいって言って…」

「そうなんですか」

「あの、俺がこんなこと言うのも変ですが…」

シグトは急に思いつめたように切り出した。

「はい?」

カオルはサインしていた本から顔をあげて、シグトを見た。

「鋼牙さんなら、絶対、絶対、無事に帰って来ますから!
 烈花も、他のみんなも強くそう信じてます!

 だから…
 えっと…
 あれっ、こういうとき、なんて言えばいいんだ?」

興奮し過ぎて何をどう話せばいいのかわからなくなってしまったシグトを見て、
カオルはクスクス笑い出した。

「ありがとう、シグトさん。

 大丈夫! あたしも信じてますから。
 鋼牙なら、きっと帰ってくるって…」

カオルの答えを聞いて、心底ほっとしたシグトは、カオルの差し出す絵本を
受け取ると、大きくうなずいた。




騎士や法師だけにではない。
あちこちの町で、本を購入してくれた人たちと直接顔を合わせて、言葉を
交わすうちに、感謝の念はどんどん生まれ、

(絵本が出版できて、ほんとによかった…)

と、心からそう思えた。



ここまで至るには、いろいろなことがあった。

最近の一番の出来事と言えば、絵本の完成直前に、もう一度イチから作り
なおしたことだろう。
すでに、ほぼ完成のところまで漕ぎつけていたものを、カオルが無理を
言ったのだ。

やり直したい、と担当の大村に申し出たときは、かなり強硬に反対された。
でも、カオルは一晩で3枚のスケッチを描きあげていた。
それを手にした大村は、じっくりと1枚1枚それらを眺めた。

「…」

目の下にクマを作ったカオルは、心配そうに大村を見つめた。
やがて顔をあげた大村が、重々しく言った。

「御月先生、これ…」

カオルはごくりと息を飲んで、恐る恐る次の言葉を待った。

「これを24枚揃えるのにどのくらい時間がかかりますか?」



カオルの熱意に大村がほだされたわけでは決してなかった。
大村としても編集者として、よい仕事をしたいと思っての判断だったのだ。



カオルの必死の頑張りもあって、どうにか24枚の絵が揃ったとき、
その出来を見て、大村は何度も大きくうなずいた。

「御月先生、がんばった甲斐がありましたね」

感無量といった顔で、カオルと一緒にその完成を喜び合った。



当然の結果、出版前から、次回作もぜひ、という話はちらほら出ていた。
そして、いざ発売してみると雑誌の取材が功を奏したのか、セールス結果は
とても好調で、正式な制作依頼が来たのは自然の流れだった。
だが…



「御月先生、どうしても駄目ですか?」

「ごめんなさい。
 あたし、今は描けそうにないんです…」

命がけで闘っているはずの鋼牙のことを考えると、カオルは創作活動に
没頭できなかった。
少しやつれたようにも見えるカオルの様子に、大村は深く理由を問い
詰めることはしなかった。
そんなことをしても、次のよい作品につながらないことを知っていた
からだ。

「わかりました。
 その代わり、次にまた絵本が作りたくなったら、必ず声を掛けてください。
 先生の次回作、僕自身も1ファンとして待っているんですから!」

力強くそう言う大村に、カオルは感激しつつ、

「ありがとうございます。
 絶対にあたし、また描きますから…
 そのときはまた、よろしくお願いします!」

と、深々と頭を下げた。




絵本に関連する一連の仕事に一区切りがついたとき、カオルの元にひとつの
知らせが舞い込んだ。

イタリアへの留学時代に一緒に学んだ学友のひとり、バネッサが、NYの
トライベッカにあるギャラリーで個展を開くというのだ。

その頃のカオルは、心にぽっかり穴が開いたみたいで、絵筆をとることが
ひどく億劫に思えていた。
だけど、目は、身体は欲していたのだ。
自分にインスピレーションを与えるような何かを、貪欲なまでに…


(あたし、NYに行く!)

そうカオルが決めたのは、バネッサからの知らせをもらってから2日後の
ことだった。



to be continued(5へ)
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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も5年を経過しましたが、まだ飽きていない模様…



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