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きんのまなざし ぎんのささやき

牙 狼(冴 島 鋼 牙 Ver.)の世界を、気ままに妄想した二 次 創 作 サイトです

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堅物男の願い事(1)

蒼哭ノ魔竜を見てたら、ふと、思いついたことがあるので書き始めて
みました。
今回は翼に関する妄想です。

あまり書いたことがない人なので、ちょっぴりビクビクもんです。
翼に見えるかな? 翼に見えるかな?




::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

「それじゃ、翼さん。
 僕も帰ります」

サバックの後始末が終わった頃、手伝いに残っていたレオは、翼に
そう言って頭を下げた。

「遅くまですまなかったな、レオ。
 気をつけて帰ってくれ」

あちこちの番犬所から集まった騎士たちはすでに帰っており、最後まで
残っていたレオや元老院から手伝いに来ていた者が引き上げていくと、
この数日間にぎやかだったこの地も、徐々にいつもどおりの静けさを
取り戻しつつあった。
レオたちの背中が小さくなっていくのを、閑岱の外れの峠で見送る。

陽もだいぶん傾き、吹く風が一段と冷たくなってきた。
山一面を覆うようなススキの穂が、風になびいて波打っている。
そのザワザワという音以外は、何も聞こえない。
東の空には、早くも一番星が見えている。

(静かだな…)

この地に生まれ育った翼が思うほど、閑岱の静けさに妙な違和感を
感じる。
それほど、サバックの期間中の熱気と興奮は、尋常でなかったと
いうことか。

(さて、俺も帰るか…)

そう思った翼は、踵(きびす)を返して歩き出そうとして、すぐに足を
止めた。
翼は前方の茂みをじっと見つめる。
しばらくして、茂みの影から誰かが現れた。 …邪美だ。

「どうした?」

少しだけ張っていた気をスッと抜くと、何か用か、と邪美に声をかける。
邪美はフッと笑った。

「いや、別に。
 あんたの帰りが遅いなと思って、様子を見に来ただけだよ」

「そうか。
 今、帰ろうとしていたところだ」

「そうかい。
 じゃあ、早く帰っておやりよ。
 鈴があんたの帰りを待ってる…」

「ああ…」

サバックの開催中、ひとりで家を守っていた妹の顔が脳裏に浮かんだ。

(邪美の言う通り、早く帰って安心させてやらないとな…)

そう思いながら歩き出した翼の後を、邪美も追って歩き始めた。



里へと戻る林の中の細いケモノ道を無言で歩き続ける翼に、邪美は
後ろから声をかけた。

「残念だったな…」

「ん?」

「零が優勝したんだって?」

「あぁ…」

そのことか、という感じで翼は返事をした。

「奴はまた腕を上げていた。
 さすがだよ」

邪美のほうに横顔を見せてそう言った。
邪美の見たところ、翼は負けて悔しいというよりも、案外サバサバ
しているようだった。

黙って歩き続ける翼の背中に向かい、邪美が再び声をかけた。

「サバックってのは、優勝したら、死んだ者に会えるっていうじゃ
 ないか?」

歩みを止めず、翼は答える。

「ああ、そうだ」

「ふうん… なんとも奇妙な褒美だねぇ…

 ところで、零は誰に会ったんだろうね?」

好奇心でそんなことを聞いた邪美だったが、

「さぁな」

と、翼の答えはなんとも素っ気なかった。
だが、翼との付き合いもずいぶん長い邪美は、少しも気にすることなく
話を続ける。

「なぁんだ、知らないのかい?

 あたしだったら、誰に会いたいかねえ…」

葉美は腕組みしながら、中空に視線を彷徨わせる。

「翼。
 あんただったら、誰に会うつもりだい?」

特に深い意味もなく、邪美は軽い調子で翼に話を振った。
ふたりはいつの間にか細いケモノ道を抜けて、少し広い砂利道に出ていた。
前を歩いていた翼に、邪美は少しだけ歩く速度を速めて、肩を並べる
ようにした。

「俺か?」

そんなことは考えてもいなかったのか、翼は少し眉間に皺を寄せ、
考え込む素振りを見せた。

(やれやれ…)

邪美は、忍び笑いを漏らした。
山刀翼という男は、いつだって何に対してだって真面目過ぎるくらい
真剣に取り組む。
こんな他愛もない世間話のような会話にも、それは当てはまるようだった。

(あ…)

翼の顔に変化が見られた。
だが、すぐに躊躇う様子を見せてから、素知らぬ顔をして

「誰も思いつかん」

としらばっくれた。
その様子を見て、邪美は、

「へぇ~ そうかい。
 ほんとに思いつかなかったのかねぇ~」

と、おもちゃを見つけた子どものような嬉しそうな様子で、翼の顔を
覗き込むように、自分の顔をぐいっと近づいた。
そんな邪美に、

「本当だっ」

翼は精いっぱいとぼけて見せ、真正面を睨んだまま歩き続けた。

「なんだい?
 あたしには教えたくないっていうのかい?
 水臭いねぇ。

 それとも何かい?
 秘密にしときたいような人なのかい?

 あ、わかった。
 色っぽい女とでも会おうと思ったのかい?
 ね、そうなんだろ?

 なんだかイヤらしいねぇ~
 いやぁ、あんたも、やっぱり男だね。

 え、どうなんだい?」

秘密にされると知りたくなるものだ。
邪美は、なんとか翼の会いたがっている人について聞き出したいと、
あの手この手で仕掛けてくる。

しばらくは不機嫌そうに聞いていた翼だったが、やがて、観念したように
足を止め、邪美のほうを振り向いた。



to be continued(2へ)
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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…



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