きんのまなざし　ぎんのささやき

「堅物男の願い事」は一応、「おしまい」となっています。

が、もうちょっとだけ、おまけの妄想を書いてみました。

た・だ・し…

翼と邪美姐さんのスムーズ（？）な幸せを願う方は、この先を読まない
ほうがよいかもしれません、とご忠告いたします。

[25回]

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～おまけ～

「安心したら、なんだか急に腹がすいた…

　邪美、慌てて帰ることもないだろう？
　うちに来て、飯を食っていけ」

翼の腕の中からそっと身体を離した邪美は、

「いいのかい？」

と、少し恥ずかしそうに聞いた。
らしくない自分を翼に見られて、いつもの調子が出ない。

「おまえさえよければ、いいに決まっている。
　鈴だって、おまえが来たら喜ぶはずだ」

少し照れもあって、ぶっきら棒に翼は答えた。


「ところでさ、翼…」

「なんだ？」

「サバックって、そう頻繁にあるわけじゃないだろう？
　次はいつ開催されるんだい？」

少々不安を覚えながらも、邪美は聞いた。
すると、

「…知らん」

案の定、半ば予想していた答えが翼の口から帰って来た。

「なんだってぇ
　…やっぱり、ね」

呆れたように、そして残念そうに邪美は呟いた。
だが、翼はそんな邪美を気にもかけない。

「大丈夫だ。
　次こそ俺は勝つ！
　そして、阿門法師に、おまえとの　’交際’　を認めてもらうのだ！」

と、ひとりで勝手に盛り上がっていた。

「はぁ～？
　許しをもらうって、’交際’　のことなのかい？」

拍子抜けした邪美は、思わず大きな声で翼に尋ねた。

「そうだが…　他に何かあるのか？
　こういうことは順番が大事と言ったではないか」

翼のほうは、それがどうした？　何か問題か？　とポカンとしている。

（サバックは、今度いつあるかわからないっていうんだよ！
　しかも、それで優勝しても、「交際」を許してもらうってだけだって！

　まったく、あたしゃ、一体いつになったら幸せになれるんだろうね…）

「さ、鈴が待っている。
　帰って早く飯を食おう！」

意気消沈している邪美とは対照的に、翼は意気揚々と歩き出した。
ひとり残された邪美は、情けない顔で、翼の背中を見ていた。

が、それもほんのしばらくのことだった。

　　くすくすくす…

（でも、ま、しょうがないね。
　相手が、あの翼なんだもの…）

ひとりで先を歩いていた翼が振り返る。

「どうした？
　来ないのか？」

数メートル先の邪美に聞こえるよう、少し大きな声で翼は尋ねた。

「…今、行くよ」

そう答えながら、邪美は笑った。
幸せはまだまだ先だと諦めながら、邪美の顔はとても幸せそうだった。


fin
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すみません。
邪美姐さんの幸せは、やっぱりもうちょっと先のことになりそうです。

翼らしさ、を追及したら、こうなってしまったんです。
翼がもうちょっと成長していたら、こんなことにはならなかったの
ですが。


…と、翼のせいにしてみる。