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誰も知らない(1)
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閑岱の地に雨が降っている。
まるで、滝の中にでも入ってしまったかと思うほどの強い雨だった。
ほんの30分前までは、こんなことになるとは予想もできないくらいによく晴れていた。
夏が来てしまったのかと思うほどの強い日差しがジリジリと照り付けていたのだ。
ところが、急に冷たい風が吹き始めたな、と思ったら、西の空から足の速い真っ黒な雲が流れてきて、あっという間に魔戒法師の里をすっぽりと覆い、今度は物凄い勢いの雨で白く煙らせてしまった。
戸外にいた者は手近な場所で雨宿りをし、室内にいた者は、大急ぎで洗濯物を取り込んだり、開け放っていた窓を閉めて回ったり、忙しく飛び回った。
が、それも束の間。
来たときの勢いと同じくらいの素早さで、唐突に黒い雲は去っていった。
お天道様が再び顔を覗かせると、里全体がほ~っと安堵の空気に包まれた。
閑岱の地の長老、我雷法師も、やれやれといった感じで今いる部屋の窓を開けようと近づいた。
窓を開けたついでにそこから外に目を転じると、小さな庭とそれに続く畑、そして、自然豊かな森が見えた。
先程まではカラカラに乾いていた庭も、あちこちに大きな水たまりができている。
我雷は、雨の残り香のする空気をすぅっと胸いっぱいに吸い込んでから、巻物を広げていた文机へと戻っていき、腰を降ろした。
ずり下がった眼鏡をちょいとかけ直し、読みかけだった巻物に目を落とそうとしたそのとき、どこからともなく、金色に輝く蝶々の鱗粉のような軌跡を描いて、何かが我雷の元にたどり着いた。
「!」
我雷はそこに自分のよく知った魔戒法師の気配を感じ取り、手ですくうようにそれに触れた。
すると、手の中に一枚の紅色の札(ふだ)が現れる。
我雷は魔戒筆を取り出すと、スッとその札を一撫でした。
途端に札は掻き消えて、中空に魔戒文字が浮かび上がる。
それを読み上げていた我雷の顔に、急に緊張が走った。
「誰か! 誰かおらぬか!」
老人とは思えぬ素早さで立ち上がると、戸口に向かい、大きな声で人を呼んだ。
程なくして我雷の前に黄花が現れ、片膝をついた。
「いかがなさいましたか?」
「すぐに翼をここに!
それと、満寿と手分けして握り飯でもなんでもいい、2人分の食料をすぐに用意させよ!
翼には、急ぎ出立してもらわなければならん!」
我雷の緊迫した様子に、黄花は、
「はっ!」
と返事をするが早いか、すぐに行動に移った。
しばらくして、我雷の元に山刀翼がやってきた。
「法師、何があった!」
我雷は目の前に広げられた様々な道具から顔をあげると、
「おぉ、翼。呼び立ててすまぬな。
実は、おぬしに頼みがあるのじゃ。
今からすぐに、邪美の元に向かってもらいたい」
と告げた。
「邪美の?
あいつは今、どこにいる?」
「わしの使いでな、梵天(ぼんてん)の谷に行っておる」
「梵天の谷?」
その谷は、閑岱からそう遠くない場所にある。
邪美の足なら、1~2時間で戻ってこれるところだ。
それなのに翼に行けと言うからには、何か理由がありそうだ。
それに、我雷の前にあるのは、弁当だの着替えだのといったちょっとした旅支度のようだった。
それを見た翼は、梵天の谷が目的地ではないような気がした。
「邪美に何かあったのか?」
「実はな… コクリュウダケの胞子を吸い込んだらしいのじゃ」
「!」
コクリュウダケとは、柄がひょろひょろと細長くのびた黒っぽい色のキノコで、その姿形から「黒竜茸」という名前をつけられた。
このコクリュウダケは、よく乾燥させると整腸剤の効能を持つ薬としても使われるが、生のものを食べると、腹痛を伴う激しい嘔吐と下痢に襲われる毒キノコでもあった。
それ故、中毒の症状が出ると大きな竜でさえも泣きわめくと言われることから、「哭竜茸」と表現されることもあるのだ。
ただし、見た目にとても特徴のあるキノコなので、閑岱の者が誤って食べるということはほとんどなかった。
だが、注意したいのは胞子にも毒性があるということで、それを吸い込むと、喉や肺が火傷のようにヒリヒリ痛み、呼吸困難のような症状を引き起こすのだった。
「幸いなことに、吸い込んだ胞子の量が微量だったことと、邪美自身がすぐに的確な処置をしたためにひどい状態ではないらしい。
じゃが、邪美はその場から里まで自力で帰って来られんようなのじゃ。
よって、翼。 おまえに邪美を迎えに行ってもらいたい」
我雷の話を聞き、翼にも事態が理解できた。
だが、合点のいかないことがひとつある。
「法師、ひとつお聞きしていいでしょうか?」
「なんじゃ?」
「梵天の谷から邪美を連れて帰るだけなら、このようなものは不要ではないか?」
翼は法師の前に並べられたものを顎で指し示すと、少し怪訝な顔で言った。
「おお、そうじゃった、そうじゃった。
肝心なことを忘れておった。
梵天の谷で邪美と合流できたら、その足で、’玻璃(はり)の湖’ に向かってほしいのじゃ」
「玻璃の…」
翼はその名を聞いて、なるほど、と見当がついた。
その様子を見た我雷は、翼を急き立てるように言った。
「さぁ、翼。 一刻も早く邪美の元に急ぐのじゃ。
邪美が迎えを待っておるからのぉ」
「わかりました、法師。
では、ただちに…」
to be continued(2へ)
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コメント
selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…
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