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きんのまなざし ぎんのささやき

牙 狼(冴 島 鋼 牙 Ver.)の世界を、気ままに妄想した二 次 創 作 サイトです

最近の’妄想’
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最近の’お礼’

あした(1)

お盆休みも終わり、さぁ明日からお仕事だぁ!

そ・の・ま・え・に!
妄想しよう! そうしましょう!


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「痛ってぇ…」

ガシャンと言う音と衝撃を伴い、銀色の鎧が魔界へ帰っていくと、涼邑零が左の脇腹を押さえて顔をしかめた。
番犬所からの指令を受けた零は、この雑居ビルの屋上でお目当てのホラーを葬り去ったところだった。
夜になってから幾分気温は低くなったが、それはほんの気休め程度に過ぎず、汗で顔に張り付く髪を撫でていくのはなんとも生ぬるい風だったので、その感触が逆に気持ち悪かった。

『大丈夫、ゼロ?』

心配そうに零を気遣う声が、彼の左手の革グローブから聞こえた。
彼の魔導具にして ’家族’ のシルヴァだ。

「ちょっとあばらをやっちまったかも…
 ま、折れてはいないようだけどね」

苦痛に顔をゆがませながらも、笑顔で零は答えた。
それを聞いて、シルヴァの声にも少しだけ安堵した気配が漂った。

『少し油断があったわね。
 大したことないと思った相手には、どうしたって隙が出来てしまうってことだわ』

シルヴァが冷静に分析をして、注意を促すと、

「あぁ、まったくだ。
 今度から気をつけるよ」

と、零は素直に自分の非を認めた。
しばらく、給水タンクにもたれかかるようにしていたが、いててて、と呻きながらドカリとその場に座り込んだ。
そして、足を投げ出して天を仰ぐようにしながら、ふぅ~と大きく息を吐いて脱力する。
ふと見ると、目の前の地面にひしゃげた煙草の箱と安物のライターが落ちていた。
恐らく、つい先ほど、一足違いでホラーに喰われた若い男が落としたものだろう。
脇腹を庇いながら、零はその煙草に手を伸ばした。
中を覗くとどうやら最後の1本のようだ。
取り出してみると、少し曲がってしまっているが吸えないこともない。
フィルターを下にしてトントンと叩き、口に咥えようとしたところでシルヴァが咎める。

『やめときなさい、ゼロ。
 なにも、わざわざホラーに喰われた男のを吸わなくてもいいんじゃない?』

零は手を止め、シルヴァににこりと笑みを見せてから言った。

「まぁね…
 でも、これは、あの男に手向ける線香の代わりさ」

『…』

何も言わないシルヴァを放っておいて、煙草に火をつけた零は、深く吸い込んで空に向けて煙を吐いた。
星も見えない真っ黒な夜空に、白い煙がゆらゆらと昇っていく。

(っつぅ… 口の中も切っちまったか…)

煙草を持った手で反対側の頬を抑えると、目尻にジワリと何かが滲んだ。

(ごめんな、守ってやれなくて…)

ホラーに喰われるところをチラッと見ただけの男に詫びをいれる。

(俺の来るのが一足早ければ…)

悔いたところでどうしようもないが、こればっかりはいつになっても慣れることはないらしい。

「痛ってぇな…」

ボソッと呟いた零は、空(から)になった煙草の箱をグシャリと握りつぶし、吸いかけの煙草を火口(ほくち)を上にして立てかけた。
そして、おもむろに立ち上がると、二度と振り向くことはなく帰路についた。



人間の邪心がある限り、ホラーは絶えることはない。
そして、そのホラーを狩り続けるのが魔戒騎士の運命(さだめ)。
「人を救いたい」と誰よりも強く思う彼らだが、時として、「生きたい」と伸ばした人間の手を掴み損ねることもあった。
今夜の零は、まさにそれだった。
ボロボロな身体とは別に、胸の奥もチリリと痛む。
早く帰ってベッドへと倒れ込みたいのに、家までの距離はまだかなりある。


(陶子さんに会いたいな…)

ひどく唐突だが、頭の中に彼女の顔が浮かんできた。
残念なことに、こんな日に限って「今日は会いに行けないから」と連絡をもらっていた。
陶子の勤める保育園で夕涼み会とかいうイベントがあり、夕方から夜にかけて、そう広くはない園庭でお祭りのようなことを行うらしい。
保育士たちはその準備に少し前から取り掛かり、ここ1ヶ月の間、ふたりはあまり顔を合わせられずにいた。

「子どもたちがね、と~っても楽しみにしてるの。
 だから、先生方もみ~んな頑張ってるんだよ」

数日前にほんの30分ほどだけ会うことができたとき、
陶子の見せた笑顔が頭の中をよぎった。
彼女は少し疲れの溜まった顔をしていたが、それでも輝くように笑っていた。
今夜はイベントが終わってからも後片付けもあり、帰りがとても遅くなるとのことで、会えるとしたら早くても明日になるだろう。
明日は、ごく一般的な人間の世界での休日にあたり、陶子の仕事も休みだった。

「…」

家を目指して黙々と歩く零だったが、小さな公園を見つけて足を止めた。
子どもの背丈に合わせて作られた水飲み場で、零は小さく身をかがませて口に水を含んだ。
飲み込まずに口をゆすいでから吐き出すと、褐色に染まった水が排水溝を流れていく。
口の中の切れた辺りがヒリヒリと痛む。
すっきりするまで、何回か同じ動作を繰り返してから、

「ふぅ…」

と、濡れた口元をぬぐった。
痛めた脇腹を気遣いながら身体を起こしたところで、

 ブブブ…

とケータイが震えた。
が、それはほんの短い間で、すぐに静かになる。
どうやら電話のコールではないらしい。
ゴソゴソと取り出したケータイに、零は指を走らせた。


to be continued(2へ)
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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…



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