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きんのまなざし ぎんのささやき

あした(2)

魔戒騎士だから人の死に慣れているか? っていったら、そうじゃないですよね。
割り切ったフリしてして平静を装う零くんもアリだとは思いますが、傷つく零くんも哀しくて美しいことを皆さんご存知のはずで…

さぁ、続きが気になる方は、お先へどうぞ。



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期待混じりでケータイを確かめると、届いていたのは陶子からのメッセージだった。


・・・仕事、終わった?・・・


そう言えば、今日、指令が来たときに、彼女にそれをメッセージにして飛ばしていたのだった。
それに対して陶子からは何も返事はなかったのだが、
きっと忙しさに追われているからだろうと気に留めずにいた。
だが、
はりメッセージにはちゃんと気づいたのだろう。
だから、こうして、
零の仕事が終わった頃合いを見計らってメッセージを送ってきたんだと思われた。

一声だけでも聞きたい気持ちもあって、零はすぐさま陶子にコールすることにした。

 プルルル…

無機質な呼び出し音が、1回… 2回…

「もしもし。零?」

彼女の声が耳に届いた。
その一言だけで内心かなりホッとする。
が、そんな素振りは見せずに電話の向こう側に声を掛ける。

「あ、陶子さん? 俺のほうは終わったよ。
 どうしたの? なんかあった?」

「ううん。 別に何もないけど…」

陶子の返事が曖昧に途切れる。
切なさに胸が疼(うず)くが、

「あ、わかった!
 俺の声が聞きたくなったんでしょ? ねっ、そうでしょ?」

自分の気持ちを陶子にすり換えて、明るい声で言ってみた。

「なぁ~に言ってんのぉ~」

陶子はすぐさま声を大きくして否定したが、

「… ま、当たってないこともないかもね」

と照れながらの答えが返ってきた。
それを聞いて、零はじんわりと胸の中があったかくなる。

「へぇ~、それってさ…  なんか素直に嬉しいな…」

現金なもので、今まで痛んでいた脇腹の痛みが幾分軽くなったような気さえしてくる。
とは言え、陶子の声に疲労が混じっていることを敏感に感じ取った零は、彼女を気遣うことも忘れない。

「陶子さん、今日は疲れたでしょ?
 今夜はもうゆっくり休みなよ」

名残惜しいが仕方ない… そんな気持ちを隠しつつ、その場にまるで陶子がいるかのように優しい目をして零は言った。

「うん… そうするね。  …ねっ、零?」

「ん、なに?」

呼びかけられて返事をする。

「明日、もし暇だったらさ… どっか行かない?」

少し甘えたような声が、零の耳をくすぐる。

「お、いいね~」

明日の仕事を考えるよりも先に、答えが口からこぼれていた。

「ほんとに?
 じゃあ、明日、また連絡するね?」

嬉しそうに彼女の声が弾んでいる。

「わかった、待ってるよ」

「…うん」

その後、
ふたりの間に言葉は途絶えたが、何か特別な時間が流れていた。
繋がっているのはケータイを通した声だけなのに、目の前にいない相手を想い、優しくてふんわりと穏やかな時間…
それは、何物にも代えがたい愛おしい時間に思えた。

だが、恐らく一日中駆けずり回って疲れているだろう彼女のことを思うと、電話をそろそろ切った方がいいだろう。

「じゃあね、陶子さん。
 …おやすみ」

「うん、おやすみ、零。
 また、明日ね?」

「あぁ、明日。
 …じゃあね」

「うん…」

   プツッ

電話が切れて、零はひとり、夜の公園にポツンと残された。
ケータイの画面をなんとなく見つめてから、ポケットにしまい込む。

頬を撫でる夜風は相変わらず生あったかくて気持ち悪く、脇腹はいまだに鈍い痛みがある。
おまけに、ベッドまでの道のりはまだまだかなりあるのだけれど、心だけは軽くなっていた。

(あぁ、明日が楽しみだ…)

そう思って、ふと気づいた。
こんなふうに思うのは、いったいどのくらいぶりだろう、と。

家族を失ったあの日から、明日を待ち望む明るい気持ちなどはどこかに消え失せた。
仇をとることだけを礎(いしずえ)に、ギラギラとした復讐心だけで生きてきた日々。
真(しん)の仇を倒した後は、ただひたすらに ’守りし者’ としての務めを粛々と果たすことに努めてきた。
大切な人を失ったならば、もはや人としての幸せを味わうことなどありえない…
そう思って、幸せを願うことすら放棄してしまっていた。

だが…
陶子に出会って、ほんの少し何かが変わった。

(あぁ、ほんとに明日が楽しみだ…)

とっくに忘れたと思っていた感覚を思い出して、零は妙にくすぐったい気持ちになった。

「シルヴァ、明日は晴れるかなぁ?」

真っ暗な夜空を仰ぎながら零は歩き出す。
心なしか、足取りまでも軽くなった気がする。

『さぁ… そういうことは私の管轄外だわ』

相棒に冷たくあしらわれても、笑いながら軽く受け流せる。

「ははは。
 そりゃ、そうか」





明日になったら何をしよう?
映画でも見ようか? それとも、ドライブに行こうか?
まぁ、なんだっていいだけどね。

あぁ、明日が待ち遠しい…
早く明日になんねぇかなぁ…



fin
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ちょいと怪我をして痛々しい零くんを書いてみよう!
そんな「思いつき」から妄想し始めましたが、なんだか切ない展開になっちゃいまして…
このまま終わるのも零くんのお話らしくいイイかもしれないのですが。

希望が見える終わり方。
A監督がいつか、なにかで言ってたな… というわけで、急遽、彼女にご登場いただきました。

希望… 見えました?

拍手[18回]

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すみません!
本日の妄想アップはできそうにありません。
どんなふうに展開しようかまだ迷ってまして…
うまくしたら明日にでも、とは思うのですが、
きちんとお約束するのも難しく…
どうか、どうか気長にお待ちくださいませ!

2017/11/19
selfish

selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も5年を経過しましたが、まだ飽きていない模様…



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