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きんのまなざし ぎんのささやき

ある執事の独白

「ある執事」ったって、思い浮かぶのは彼しかいません…

大したことも書いてはおりません。


…でも、妄想してると楽しかった。

::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

わたくし、倉橋ゴンザと申します。
とある旧家の執事をしております。

執事という仕事を、みなさんはご存知でしょうか。

執事というのは、本来は、家事を行う使用人たちを取りまとめたり、
事務などの執務を行う役割を持ちますが…
あいにく当家の使用人はゼロ! つまり、わたくしひとりでございます。
いえいえ、使用人がいないのは、当家が貧乏だからというわけでは
ございませんよ。えぇ、決して。

当家の主人の職業は、みなさんご存じかとは思いますが、少々特殊な
ものでございまして、素性の知れない者をおいそれと雇うわけにも
いかないのでございます。
そんなわけで、掃除や洗濯、買い物に料理にいたるまで、必然的に、
すべてわたくしひとりで行っております。



当家の朝は、普通のお宅より少々遅い時間に始まることがございます。
と言いますのも、主人の仕事が時間的に不規則なため、往々にして
深夜に出掛ける場合や、帰宅が未明に及ぶことがございます。
それゆえ、そのような日の翌日は、ゆっくりとした朝を迎えることに
なります。
まぁ、それも ’いつも’ というわけではございませんから、そうでない
日は、普通のお宅と同じような時間に起床します。

朝一番にすることは何か?
この時期ですと、まずは、お部屋を暖めることから始まります。
以前は、海に近い大きな都市におりましたが、こちらに越してきて、
びっくりいたしました。
えぇ、えぇ、ほんとにこちらの冬は寒うございますね。

部屋が暖まり、主人が起床する頃に合わせて、朝食の用意をいたします。
当家の主人は、身体が資本ですので、食事には気を遣います。
朝食は、寝ている身体を起こすうえでも大変大事ですので、できるだけ
温かいものを用意するようにしております。

食事が終わりましたら、後片付けをいたしまして掃除を始めます。
この屋敷は広うございますから、これがなかなかやりがいがございましてね。
主人はこの時間、身体が鈍らないように鍛錬にいそしむか、仕事に出るかの
どちらかですが、わたくしも、広い屋敷を駆け回って掃除をするのです。

もちろん、ただぼんやりと床を磨いたり、トイレやお風呂を掃除するわけ
ではありませんよ。
頭の中では、今日中にやらねばならないことを反復したり、昼食や夕食の
献立などを考えておるのでございます。
よく動き、よく考えるからでございましょうか、わたくし、こう見えて
知力、体力、気力ともにいささか自信はあるのです、はい。
こう申してはなんですが、同年代の方よりは若く見えませんか?
ほっほっほ…



コホン…
さて、昼食ですが、これは、主人の状態に合わせます。
午前中、激しく身体を使っていたのであれば、ややボリュームのある
メニューに、そうでなければ軽めにいたします。
え? 主人の状態をどうやって知るか、でございますか?
それは、主人の表情や歩き方などの仕草を見ていれば、自然とわかるもので
ございましょう?
お小さい頃からず~~~っと見てきているので、それこそ、わたくしを
呼ぶ声を聞いただけでも、おおよそのことはわかるつもりです。

昼食を摂った後は、主人は仕事に出掛けます。
雨が降ろうが、雪が降ろうが、出掛けます。
世間では休日と呼ばれる日でも、関係なくでございます。
一年中毎日、わたくしは、塵ひとつないコートをその背に着せかけ、
行ってらっしゃいませと送りだします。
玄関に立ち、その背を見送っておりますと、それはもう、いろいろなことを
想います。
可愛らしかった子どものときのワンシーンであったり、先代… つまり、
現当主のお父上のことであったり。

そんなふうに感慨深く見送った後は、わたくしも食糧の買い出しなどの
ために出かけます。

食材などは届けてもらおうと思えば、それもできるのですが、やはり、
その日の品揃えをこの目で見て、実際に品物を手に取り、新鮮なもの、
旬のものを選ぶようにしたいと思い、自分で出向きます。
食べることは栄養を摂るだけでなく、心も豊かにしますから、主人のため、
自分の足を運んでいいものを調達したいと思っておるのでございます。

そして、帰宅したらすぐに夕食の下ごしらえに取り掛かります。

以前はもう少し遅い時間から始めていたのですが、この頃は買い物から
戻り次第すぐに始めるようになりました。
え、それはなぜかって?

下ごしらえがひと段落した頃、少し休憩でもしようか、そんなふうに
思っていると、元気よく玄関のドアが開かれるのでございますよ。



これまで、当家を訪れる方など滅多にございませんでした。
いえ、ほぼ皆無と言ってよかったかもしれません。
ところが、今では、足繁(しげ)く訪ねてくる方がいるのでございます。
白い息を弾ませ、桜色に紅潮させた頬の、かわいらしいお嬢さんが…



「ゴンザさ~ん、こんにちは~
 あ~、寒かった~!」


その声が聞こえると、一瞬にして屋敷の空気が華やぐのでございます。
空は相変わらず鈍色(にびいろ)で、強い北風に舞い上がった地表の雪と
空から降る雪が視界を悪くしているにも関わらず、この方がいるだけで、
無彩色の世界に色彩が宿る気がします。


「これはこれはカオル様、よくおいでくださいました。
 外はお寒かったでしょう?
 只今、温かいココアなどお持ちしましょうね」

「ありがとう、ゴンザさん。
 … 鋼牙は出かけてるの?」

「はい。
 でも、じきにお戻りになられますよ」

「そっか…

 あ、そうだ!
 ねぇねぇ、ゴンザさん、あのね…」



屋敷を訪れるようになったそのお嬢さんは、身の回りにあった出来事や、
自分で思われたことなどを、わたくしにあれこれと聞かせてくれるので
ございます。
午後のひとときを、こういう楽しいおしゃべりで過ごすというのは
いいものですな。
このおしゃべりを楽しむために、出来る限り、家事はさっさと済ませて
しまおうというふうになりました。

これまでは主人とわたくしの男所帯でしたから、このようなワクワクする
ような時間はございませんでした。
あ、いえいえ、主人とふたりで過ごした時間をどうこう言うのでは
ございませんよ。

それに、そう思っているのはきっとわたくしばかりではないと思いますよ。

心なしか、主人の帰りも早くなったような気がしないでもありません。
仕事には妥協しない主人のことですから、よもや手を抜くなどということは
ないでしょう。
きっと、手際よく確実に職務を全うしているのだと思われます。
少しでも早く、あの方の待つ屋敷に戻りたいがために…



そうこうしているうちに、その主人が、仕事を終え、戻ってまいります。
無事にお戻りの姿を見ると、いつもほっといたします。
安心しつつも、目はすばやく、全身をチェックいたすものですな。
着衣の乱れや怪我の有無、お疲れかどうか表情を見ればすぐにわかります。

ふふふ…
たとえどんなにお疲れであっても、あの方のお顔を見れば、たちどころに
疲れも吹っ飛ぶようでございますよ。



「おかえりなさい」

「あぁ。
 来てたのか…」

ほら、主人の顔が、なんともお優しい表情になります。

「寒かったでしょ?
 あぁ、こんなに冷たくなって…」

そう言って、あの方が主人の手を愛おしそうに自分の手で包んで暖めようと
なさいます。
おふたりが微笑み合う様子を見ると、わたくしの方まで心が和みます。



おや?
今夜は、どうやら、これ以上お仕事はないようです。
そうと決まれば、おふたり仲良く食事を召し上がり、楽しく語らい、
お休みになられることでしょう。
こんな心穏やかな夜が一日でも長く続きますよう、心底願ってやみません。

どうかみなさま、くれぐれも陰我を生み出さぬよう、陰我に取り込まれぬ
よう、心穏やかにお過ごしくださいませ。
このゴンザ、伏してお願い申し上げます。



あ、そうそう。
皆様の中には、わたくしのことを、’スーパー執事’ などとお呼びになる方も
ございますが、わたくしは ’有能な執事’ になろうとは思っておりません。
いえ、その昔、仕事も一人前にできなかった頃は、確かにそのような
’有能な執事’ になりたいものだと思ったことはございましたっけ。
ですが、この年になりますと、少しでも主人のお役に立てればそれでよい、
そんなふうに思うようになりました。

わたくしの命果てる間際まで、主人の、そして、あの方のお役に立てれば
本望でございます。




あ、忘れておりました! その前に!


できることならば、主人とあの方のお子様を、この手に抱くことが
できればと…
今はそれが一番の願いでございます。



fin
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::


ゴンザさんは、朝起きたらこんなことするのかな?
そして、こんなこと考えるのかな?

お仕事紹介的な文章で書いてみました。

あ、でも、ここに書いてあることがすべてじゃないです。
みなさんの頭の中で、さらに自由に妄想を膨らませてくださいませ。

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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も5年を経過しましたが、まだ飽きていない模様…



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