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きんのまなざし ぎんのささやき

牙 狼(冴 島 鋼 牙 Ver.)の世界を、気ままに妄想した二 次 創 作 サイトです

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さざなみ(6)

いや~ ど~も~ 焦らし屋でございます!
(なに、この軽さっ!  苦笑)

selfish の焦らしプレイ(!)に泣いてる人、怒ってる人、いろいろ
いらっしゃるかと思いますが、好きで焦らしていませんからねぇ!
鋼牙さんとカオルちゃんが、なかなか動きださないんですよぉ!
(と、責任転嫁する)

さぁて、鋼牙さん、そろそろ動く気になったかね?




::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

飲み物を取りに行こうと立ち上がったカオルの腕を、鋼牙は無意識の
うちに引き止めた。

「あっ、いや…」

鋼牙はすぐに手を放し、視線をそらした。

「水でよければ、ここにある…」

そう言うと、自分の飲みさしの水のボトルを突き出した。
だが、心の中では、

(言いたいのはそんなことじゃない!)

と舌打ちしていた。

この場を抜け出す口実がなくなってしまったカオルは、

「…そう」

と気が抜けたように言って、元の場所に座った。
また、沈黙の時間に耐えなければならないのか… そんなふうに
思いながら。



だが、沈黙はさほど長くは続かなかった。
鋼牙が話しかけたのだ。

「俺が記憶のないときに、ずいぶん世話になったみたいだな」

「そんな、世話だなんて…」

鋼牙の殊勝な言葉にカオルは驚きながら謙遜した。

「その… 俺は迷惑をかけなかったか?」

「ううん、大丈夫だよ。
 鋼牙は… えっと、なんていうか… フツウの男の子だった」

ちょっとしたことではしゃぎ、いろんなことに興味を持ち、怖い夢に
怯え…
カオルは、あのときの鋼牙をまた思い出して切なくなった。
その気持ちがカオルの表情に表れたのを見て、鋼牙の胸がちりりと
痛んだ。

「そいつがいなくなって、悲しいか?」

気づけば、なかば無意識のうちにその問いがこぼれていた。
カオルは大きく瞳を見開き、一瞬鋼牙を見たが、すぐに視線を自分の
膝に置いた手に落とした。

「…そうだね。
 うん… やっぱりちょっと寂しい…」

カオルのその返事を聞いて、鋼牙はそんな質問をしたことを半分
後悔した。

「でも、それは仕方がないことなんだよ… うん… そう。
 鋼牙が元に戻って、よかったんだよ…」

カオルはさらに言葉を続けたが、それは鋼牙に言うというより、まるで
自分に言って聞かせているように鋼牙には思えた。

「無理はするな。
 悲しければ、俺に遠慮などしなくていい」

そう言った鋼牙の瞳が、あまりにも悲しそうな色をしていたので、

「そんな…」

と、カオルは戸惑うばかりだった。
そんなカオルを見て、鋼牙は居たたまれない気持ちになる。

(どうして、俺はカオルを追い詰めてしまうんだ)

自分が情けなく、かと言ってこの場をどう収めればいいのかも判らず、

「もう寝る…  おやすみ」

その場から逃げだすように、鋼牙はベッドから立ち上がると、部屋から
出て行こうとした。

「ねぇ、ちょっと待って!」

思わず、カオルも立ち上がり、鋼牙の後を追った。
ドアノブに手をかけた鋼牙は立ち止まり、じっとその手を見つめた。
固まってしまった鋼牙の背にカオルは声をかける。

「鋼牙…」

それが合図となったかのように、鋼牙はドアを勢いよく開けて、
ドアの向こうに姿を消した。
カオルは、追いかけることもできずにただドアを見つめていた。

「鋼牙…」

::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

カオルの部屋から廊下に出た鋼牙は、真っ直ぐに自分の部屋に向かった。
ドアの前で立ち止まると、顔をしかめた。
そして、ドアに向かって右手の拳を叩きつけた。

  ゴン

鈍い音が響き、鋼牙の顔が痛みのために歪んだ。
苛立ちを拳にしてぶつけることしかできない自分に嫌気がさす。
でも、自分にはこんなことしかできなかった。

(何やってるんだ、俺は…)

大きな溜め息をひとつ吐き、部屋の中へと入った。

::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

  ゴン

静寂の中、鈍い音がひとつだけ響いてきた。
それを部屋の中で聞いたカオルは、ハッと顔をあげた。
今、やらなければならないこと、やりたいことが解ったようだった。

::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

鋼牙が部屋に入ってしばらくすると、部屋のドアがノックされた。

  コンコンコン

少しだけ迷ったが、鋼牙は返事をした。

「なんだ?」

きぃっと開かれたドアの影からカオルが顔を覗かせた。
ベッドの端に座っていた鋼牙に、カオルが声をかけながら近づく。

「鋼牙… ちょっとだけいい?」

鋼牙はベッドに潜り込みながら、わざと突っぱねたように言う。

「もう寝るから、手短に頼む」

「うん、解った…」

鋼牙の子どもじみた真似に、カオルは苦笑しながらそう言って、
ベッド脇に近づいた。

「ね、手を見せて?」

背中を向けてベッドに横たわる鋼牙の肩に手を置いて、カオルは
優しく言った。
鋼牙は、顔だけわずかに向けて

「手?」

と聞き返す。

「そぅ。 右手…」

訝(いぶか)しみながら、鋼牙がそろそろと出した手を、カオルは
ぐいっと掴むと、手の甲を上に向けるように捻(ひね)った。

「ほら、やっぱり…」

鋼牙の拳は塞(ふさ)がりかけた傷が、またぱっくり傷口を開けて、
血が滲(にじ)んでいた。

カオルは絆創膏を取り出すと、一枚、また一枚と貼っていった。
鋼牙の拳に、昨晩と同じように不恰好な手当てが施(ほどこ)されて
いった。

カオルにされるがままにしていた鋼牙は、ギスギスと逆立っていた
気持ちが、徐々に静まっていくのを感じていた。

「ねぇ、鋼牙…
 鋼牙の記憶が元に戻って、あの子は消えちゃったけど…
 それは、あたしにとってはちょっぴり寂しいのは事実だけど…

 つらい出来事を経験したばっかりだったあの子に、あたし、何も
 できなかったから、きっと後悔しているんだと思うの。

 あの子は鋼牙なのに…
 鋼牙のために、あたし、なんにもできなかった。
 ごめんね。

 鋼牙は、もう子どものときよりも、ずっとずっと強くなったから、
 あたしができることなんて、ほんとにもう何にもないんだけど、
 それでも、あたし…」

(鋼牙のそばにいたいな…)

最後の言葉は言いたくて言えない言葉。
ちょうど最後の絆創膏を張り終えたところだったので、カオルは
にっこり鋼牙に笑いかけた。

「はい、できた。

 …それじゃ、おやすみなさい」

カオルはそう言うと、何か吹っ切れたような清々(すがすが)しい顔を
して立ち上がり、部屋を出て行こうとした。
なんの迷いもなくスタスタとドアのほうへ歩くカオルを追いかけて、
鋼牙は無様なくらいに慌ててベッドから抜け出した。

そして、カオルを後ろからしっかりと抱きしめた。


「カオル…  すまなかった」

カオルの耳元に鋼牙のか細い謝罪の言葉が届いた。
カオルは「何がすまなかったなの?」と問い返そうかと思ったが、
しょうがないといった感じの笑みを浮かべながら、ゆっくりと首を
横に振った。



惹かれあうからこそ、想いが交錯し、行き違いが生じ、さざなみが
立つこともある。

(だけど、この先… いつも、いつまでも、言葉を重ね、想いを重ねて、
 ふたりでずっと歩いていけたらいいな…)

鋼牙の体温を背中に感じながら、カオルは密やかにそう思った。



fin
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::


ちょっといつもより長くなりましたが、終わりましたよ!
ほんとは、途中で「to be continued」にしようかと、焦らし屋(!)の
血が騒ぎ出しましたが、
「いや待て…
 頑張れば書き切れるかも…
 頑張るんだ~
 そして、「焦らしのselfish」 の汚名(?)を返上するのだ~」
と自分を鼓舞しときました。

途中、一人称が鋼牙さんになったり、カオルちゃんになったり、もう
ぐちゃぐちゃですが、そこはもう「ごめんなさい」で!

大人の記憶に戻った鋼牙さんですが、最終話では、子どもじみた行動を
随所に散りばめてみました。
そういう不器用な鋼牙はいかがでしょうか?

それにしても…
毎度のことですが、「見切り発車」のくせに(出来はともかく)
今回も最後までなんとか書き切れました!
それもこれも、みなさんからのコメントや拍手に支えられてのことです。
いつも、ありがとうございます!


2013/2/17追記
この続きとなりますお話を「さざなみのあと」として妄想しています。
なお、閲覧は大人限定としておりますので、ご了承ください。

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無題
わぁ!
キューンな感じで終了ですねvvv
やっぱりこの二人は、じれったい感じがGoodですよねぇ~!
「焦らしのselfish」 良いと思いまッす!
次回の「焦らし」妄想、期待してまぁ~すvvv

あ、私の名前の所。漢字表記に訂正しました。以後、宜しくです。
URL 2013/02/13(Wed)09:56:48 編集
Re:無題
コメントありがとうございます!
故意に焦らそうとはあんまり思ってないんですけどね…
「あ~、これ以上書きすすめると止まらなくなるな~
 それでは今宵はここまで!」
というところが、そういうところになってしまうのです。
読む側からすると、「なんだよ、もぅ~」ですよね。 (苦笑)

偶然にも、昨日、プロフィールを見ましたよ!
こんな漢字なのか~ へぇ~ って思いました。

selfish は、ホントに気ままにつけてしまった名前なので、ちょっと失敗したなと思ってます。
だって7文字もあると書くのが面倒くさいでしょ?
えっ、そこ?
うん、そこ、かなり大事! (笑)
【2013/02/13 12:52】
selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…



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