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きんのまなざし ぎんのささやき

牙 狼(冴 島 鋼 牙 Ver.)の世界を、気ままに妄想した二 次 創 作 サイトです

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さざなみ(4)

おともだち「せんせ~ selfish ちゃんが鋼牙くんをいじめてま~す!」

selfish「だって、こいつ、いじめると面白いんだもん!」

先生「んもう、selfish ちゃんたら…
   鋼牙くんのことが好きで好きでしょうがないのね?
   しょうがない子!」

selfish「しょうがない子でいいもん!」


いいよね?




::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

カオルが席につき、冴島家の夕食が始まった。
いつものように、ゴンザが腕をふるったご馳走が並ぶ食卓だったが、
空気はひどく重たかった。
その空気に耐えかねて、ゴンザが明るい調子で話題を振ってみた。

「鋼牙様が元に戻られて、ほんとうによかった…」

「…」

だが、ナイフやフォークがたてる、カチカチというわずかな音が
鳴るだけだったので、ゴンザも黙るしかなかった。

暗い顔をしたカオルと、不機嫌そうな鋼牙。

ゴンザは空気の薄い高地にでもいる気分だった。

目の前の皿にほとんど手をつけていなかったカオルが、やがて、
ナイフとフォークを揃えて置いた。

「ごめんなさい…
 今日はちょっと食欲がなくて…」

「…」

鋼牙は手を止めてカオルを見たが、何も言おうとはしなかった。
そんな鋼牙に代わり、ゴンザが慌ててフォローする。

「…さっ…さようでございますか。
 具合が悪いようでしたら、ムリはいけません。
 温かくしてゆっくりお休みなさいませ」

「ゴンザさん、ほんとにごめんなさい。
 それじゃ…

 あっ、先にお風呂いただいてもいいですか?」

鋼牙はじっとカオルを見る。
ゴンザにはその視線が、意思の力で感情を抑えているように見えた。
そして、カオルはその視線をひどく居心地悪く受け取っているようだった。

相変わらず、声をかけようとしない鋼牙をゴンザは気遣った。

「よろしいですよね、鋼牙様?

 カオル様、よ~く、あったまってくださいませ」

「ありがと…」

カオルに笑顔を向けたゴンザに、カオルもぎこちない笑顔で返した。
そのままリビングを出ようとするカオルに、鋼牙は最後まで声を
掛けなかった。

『おいおい、カオルのヤツ…
 鋼牙の記憶のことを、まぁ~だ、引きずっているのか?』

カオルが出ていった後、少し呆れたように言ったザルバの言葉にも、
鋼牙は反応を示さず、食事の続きを再開した。

ザルバはゴンザと視線を合わせ、ゴンザは肩をすくませてから、
首を弱々しく横に振った。

無言の食事がしばらく続いた後、ザルバが声をかけてきた。


『鋼牙、どうやら指令が来たようだ』

「わかった」

鋼牙はナイフトフォークを置き、ナプキンで口を拭いてから、
静かに立ち上がった。

::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

日付が変わったばかりの深夜。
冴島家に主(あるじ)が帰ってきた。

「おかえりなさいませ」

いつものように執事が出迎える。

「あぁ」

いつものように素っ気なく主は答える。

「今日はずいぶんお早いお帰りで、よろしゅうございました」

執事は嬉しそうに独り言のようにつぶやいた。

『いやぁ~、今夜の鋼牙はスゴかったぜぇ!
 いつにない迫力で、ホラーのヤツをあっという間に切り捨て…』

その独り言にこたえるように、主の指輪がしゃべりだす。

「ザルバ!」

それを制するように鋭い声が飛ぶ。
指輪を黙らせてから、鋼牙はゴンザに尋ねた。

「カオルは?」

いつもの台詞を行ってしまった後、あっ、と思ったが遅かった。
笑いをかみ殺すように執事が答えた。

「まだ、おやすみではないようです…」

「そうか…
 ゴンザ、今夜はもう休んでいいぞ」

苦虫を噛み潰したような顔で、鋼牙は答えた。

「はい…

 ところで、鋼牙様?
 お夜食をキッチンのほうにご用意してございます。
 よろしければお召し上がりください。

 お夕食をあまり召し上がらなかったので、カオル様もお腹を
 空かせていらっしゃるかもしれません。
 少し多めに用意したので、鋼牙様からもカオル様にお食べになる
 ように勧めていただけませんか?」

「…わかった」

鋼牙から了承の返事がもらえたので、ゴンザは安心したように

「それでは、おやすみなさいませ」

と言って、部屋へと下がっていった。

(ゴンザのヤツ、うまいこと考えたものだ…
 これで鋼牙とカオルの中がうまく戻るといいが…

 まっ、俺様には関係のない話だ)

ザルバは心の中でつぶやいた。


to be continued(5へ)
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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…



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