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きんのまなざし ぎんのささやき

牙 狼(冴 島 鋼 牙 Ver.)の世界を、気ままに妄想した二 次 創 作 サイトです

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オーディオコメンタリー「絵本」(1)

オーディオコメンタリーも折り返し地点を過ぎて、物語も佳境に入っていますね。

玲くんチームのメイキング情報などを織り交ぜてのコメントに対して、Kくん、美佳ちゃんのほうは ’相変わらず’ の調子ですが、これ、鋼牙とカオルでやったらどうなるんでしょうね?
…な~んてことを思いついたのですが、どうでしょう?


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「あっ、ねぇねぇ始まったよ!」

うきうきとした調子でカオルが隣にいる鋼牙を振り返った。




【冒頭、ザルバのシーン】
『闇に潜む魔獣ホラー。
 これはホラーを狩る魔戒騎士の物語だ。
 決して目を離すな…』
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「やだぁー
 ザルバったらカッコつけてるぅぅぅ」

うふふ、と肩を揺らしてカオルが笑う。
その姿をチラリと横目で見る鋼牙のまなざしは優しかったが、視線を画面に戻すとその表情が厳しいものに変わった。




【画廊のオーナーがホラーに憑依されるシーン】
絵から飛び出した白い裸体のホラーに喰われる男。
「ああぁぁぁぁ」
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「やだ… そんな…」

ぶるっと身震いするカオルが、怯えたように手を握りしめて口元に持っていく。

「ホラーは人間の醜く歪んだ欲望を嗅ぎつける。
 この男の持つ深い陰我がホラーを引き寄せたのだから、この男に同情の余地はない」

鋼牙はそう冷たく言い放ったが、カオルの膝にあった手をギュッと握った手は温かく優しかった。




【鋼牙の修行シーン】
一点に集中している鋼牙が気合もろとも踏み込む。
「はぁっ!」
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ハッと息を飲むカオル。
火花をまき散らせながら、見えない敵を相手に、実戦さながらの迫力に言葉もない。
だが、鋼牙は、

「まだまだ、だな…」

と溜め息交じりに言う。
だが、カオルには、この気迫溢れるこのどこが、’まだまだ’ なのかチンプンカンプンであった。




【幼少の頃のカオルのシーン】
少女が絵本を読んでいる。
「最も古い記憶を掘り起こすとき、私の脳裏には決まってその絵本が蘇る…」
地中から這い出してきた素体ホラーが少女を襲う。
それを救ったのは、眩しく輝く黄金騎士。
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「これは…
 黄金騎士に会ったことがあるのか?」

驚いた鋼牙が、カオルの肩に掴みかからんばかりにして尋ねた。
その剣幕に少し恐れをなしたカオルが、小さく首を横に振る。

「わからない。あたし、まだ小さ過ぎて…
 本当にあったことなのか、夢の中の出来事だったのか、はっきりしないの」

カオルの答えに、鋼牙は強張(こわば)っていた身体からふっと力を抜くと、

「そうか…」

と一言呟いた。
もしも、少女だったカオルを黄金騎士がホラーから救ったのであれば、それは間違いなく、鋼牙の父、大河だった。
父子揃って、一人の少女の命を救ったのだとしたら…
御月カオルとの間の因縁に、そして、そのことを時を経た今知ったことに、鋼牙は不思議な感覚を味わっていた。




【朝、カオルが目覚めるシーン】
画面いっぱいにカオルの寝顔。
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「きゃあ、やだやだっ!」

絶叫してカオルは立ち上がると、鋼牙の前に手をヒラヒラさせる。

「見ちゃ駄目! 見ないで!」

そのカオルを、鋼牙は無言のまま片手で脇にどかす。

「ちょっとー
 恥ずかしいから見ないでよぉー」

鋼牙の視界を遮ることに失敗したカオルは、それでも往生際悪く、言葉での抵抗を試みる。
そんな彼女を歯牙にもかけず、鋼牙はじっと画面を見ていたが、やがて、

「…若いな」

と、ぼそりと呟いた。
その一言に、カオルはヒートアップ。

「そ、それは仕方ないでしょ!
 だって、10年以上も前なんだもん!

 女の子の寝顔をそんなまじまじと見るなんて、今では鋼牙もすっかり ’おじさん’ になったものねぇ」

自分が、年を取った、と言われた気がして、カオルは鋼牙も同じだと反撃する。
それを聞いて、さすがに鋼牙もムッとする。

「縁も所縁(ゆかり)もない者の寝顔ならいざ知らず…
 おまえの寝顔をかわいいと思って見ることの何が悪いのだ?」

不機嫌そうに早口でそう言ったところで、鋼牙はハッとした。

「あ、いや…」

「へぇ~ そんなふうに思って見てたんだぁ~ ふぅ~ん」

かわいい、と言われて、カオルはまんざらでもない気になった。
自然と顔がニヤけているカオルに、何か言い返そうと鋼牙は口を開きかけたが、何をどう言ったところで口ではカオルに敵わないのだからと、そのまま口を閉ざして黙り込んだ。




【龍崎登場シーン】
瀟洒な白い建物。
「同じ夢をもう何度も見てる?」
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「先生…」

ずいぶん久し振りに彼の姿を見て、カオルの顔は悲し気に歪んだ。
高校を卒業したら働くしかないと思っていたカオルが、絵の道を諦めずに学び続けることができたのは、龍崎のカウンセリングを受けることで得る礼金があればこそだった。
両親もなく身寄りのない少女を、何の見返りもなく優しく見守り続けてくれ、恩人だと信じて疑いようのなかった龍崎が、実はとんでもない企みを隠してカオルに近づいていたことが、いまだに信じられない気がする。
いや、時が経ったからこそ、何か悪い夢でも見ていたような感覚に、記憶が変化しているのかもしれない。
在りし日の龍崎を複雑な表情で見つめるカオル。
そのカオルを、鋼牙もまた痛まし気に眺めるより他なかった。




【ゴンザ登場シーン】
指令書を手に立つゴンザ。
「鋼牙様、お仕事です」
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「わぁ、ゴンザさんだ!」

暗く沈んだ心を紛らわせるように、カオルはわざと明るい声で言った。

「ゴンザさん、若いねぇ~
 ん? そうでもないかな? あんまり変わってない気もするね?」

カオルの声とは裏腹に、鋼牙の心には暗い影のようなものがじわじわと浮かび上がってきていた。

(仕事、か…)

いよいよ、あの時が近づいてきている。


to be continued(2へ)
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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…



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