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きんのまなざし ぎんのささやき

止まり木に腰を降ろして

K田監督の呟きから辿り、玲くんのインタビュー動画を見ていたら、何やらムズムズと書きたくなりました。
はい、突発性妄想症候群の発作です。

この発作の特徴は、パッと現れ、パッと消えてなくなるところにありまして…
平たく言うと、内容的にはあっさりめです。はい。

パッと読んで、パッと忘れてもらう… と、それはそれで、ちょっと寂しいかな。 (^_^;)

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日付が変わって数時間後…
始発の電車が動くにはあと1時間ほどあるため、街を行く人影はごく少ない。
仮にそんな人がいたとしても、十中八九アルコールを帯びていて、フワフワと夢見心地で地に足はついていないだろう。

そんな街角に黒いコートの男がふわりと現れた。

『ゼロ、魔戒道はここまでよ』

少しノイズが入ったような女の声が密やかに聞こえた。

「あぁ」

男は溜め息にも似た返事をして、ゆらりと歩き出した。



今日、零が受けた指令は東の番犬所からではなく、元老院からだった。
’約束の地’ へと旅立った鋼牙に代わって、零が元老院から指令を受けるようになったのは1ヶ月ほど前からだ。

この夜の零の相手は、予想に反して強くも賢くもなかった。
ただし、面倒なことに、ちょこまかとよく逃げ回り、追う零を翻弄した。
見失うこと数回にして、ようやく港の外れの倉庫の陰に追い詰めることができ、二振りの魔戒剣でホラーの身体を貫いたときには、追いかけ始めから4時間近く経過していた。
長い間、気を張り続け、足を棒にして駆けずり回った結果、今宵の零は心底疲れ切っていた。

「シルヴァ、頼むよ…」

その短い一言で、元老院への報告と魔戒道の探索の両方をシルヴァは請け負い、あっという間に探り当てた魔戒道に零が飛び込んだのは、今から10分ほど前だった。

魔戒道の中は時間も距離も現実世界のそれとは違っている。
そのせいなのか何なのか、身体も軽く感じるのだった。
そのため、魔戒道から出るときには、その反動が一気に来る。
もはや、零の疲れもピークだ。
もしも今、目を5秒間閉じていたら、恐らくそのまま眠れる… そう言い切る自信があるくらいに、だ。

等間隔に並ぶ街灯をいくつも超えたとき、零の目に、ぼんやり灯(とも)る特別な明かりが映った。

「シルヴァ、ちょっと寄り道…」

そう言った零に、

『ゼロ、もう閉店時間を過ぎてるんじゃないの?
 まっすぐ帰った方がいいと思うけど…』

と、シルヴァは忠告したが、

「クタクタなんだよ。
 ちょっとだけ…」

と力なく言った零は、バー・ルーポへと続く階段に向かって、歩き出した。



(さて、そろそろ閉めるかな…)

最後の客をちょっと前に送りだしたバクラがそう思ったとき、店のドアが開く音がした。

「すいません。
 今夜はこれで店じまい…」

バクラはグラスを拭く手を止めてドアのほうへ顔を向けたが、現れた人影を見て、作りかけていた愛想笑いの表情を憮然としたものに変えた。

「なんだ、おまえか…」

そう呟くと、後始末の手を再び動かし始めた。

「なんだ、とはご挨拶だな…」

そう言いながら、零はカウンター席にドサッと腰を降ろす。

「はぁ~ 疲れた~~~」

大袈裟にそう言ってカウンターに突っ伏す零を、横目でチラッと見たバクラは、

「おい。
 もう閉めるって言ってるだろ!」

と非難めいた口調で畳みかけた。
だが、口ではそう言いながらも、

(仕方ねぇな…)

という諦めにも似た気持ちを感じてもいるのは、どうしたことだろう。
我がままとも思える言動も、涼邑零という男にかかれば不思議なことに嫌みがなく、なんとなく受け入れてしまえるのだった。

バクラは店の表の看板の明かりを消し、新しい客が来ないようにしてから、カウンターの中に戻り、零に尋ねた。

「なんだ、こんな時間まで仕事だったのか?」

零は重たそうに頭を持ち上げ、

「そうなんだよ…
 この10日間で立て続けに3件も指令があってさぁ。
 今日の相手なんか、チョコチョコと逃げ回って追いかけるのが面倒臭いったらないんだよ。

 若さと体力には自信がある俺も、さすがにちょっと疲れた…」

と言うと、再びカウンターに突っ伏した。

「どの程度の働きがおまえさんにできるのか、元老院も試してんじゃねぇのか?」

片付けの手を休めることもなく、バクラが言った。

零が魔界騎士であることも、元老院付きになったことも承知の彼は、もちろん、ただの人間ではない。
片腕を失うまでは、魔戒法師として闇に生きた者だった。
魔界に携わる仕事から足を洗った今、「俺は見守るだけだ」などと言ってはいるが、なんだかんだと零をサポートしてくれる、零にとってはよき理解者だ。
そう。例えば、閉店時間を過ぎているというのに、こういうグダグダの会話に付き合ってくれるのも実にすごくありがたかった。



零はだるそうに身体を起こすと、カウンターに片肘をついて、ひどくだらしない恰好で頬杖をついた。

「やっぱ、鋼牙ってすげぇ~わ…」

唐突に、そんなことを呟くように言った。

「ん? 鋼牙?
 あぁ、牙狼の称号の…」

バクラ自身は直接顔を合わせたことはなかったが、魔界騎士の最高位の鎧を継承する男のことは、いろいろ耳にして知っていた。

「そっ! あの黄金騎士の。

 元老院付きの魔界騎士になってからというもの、元老院から矢継ぎ早に来る指令をこなしたり、元老院の頭の固い連中の言うことを聞いたり、いろんな慣習を覚えたりと、まぁ、いろいろ大変なんだわ。

 その大変なことを、あいつはこれまで涼しい顔でやってのけてきてたのかと思うと、恐れ入るぜ、まったく!」

「ほぉ、大した奴なんだな。その魔戒騎士は」

「あぁ」

だが、零はすぐに考え直した。

「いや…
 でも、涼しい顔で、ってのはちょっと違うか…」

両手を組んで肘をついた姿勢を取り、零は少し真面目な顔になった。

「あいつだって、努力もせずに何でもできる天才ってわけでもなけりゃ、物わかりのいい優等生ってわけでもないんだよな…

 奴は奴なりに歯を食いしばってることも、汗にまみれていることも、俺は知ってるもんな。
 それに、不器用なところだってあるし、変なこだわりだって持ってるし…」

途中からはバクラに話すというより、完全に独り言のようになってしまったので、バクラは黙って零を放置した。
カチャカチャと後片付けする音とブツブツ言う零の声だけが、そう広くもない店内に響いている。
やがて、その零の呟き声が聞こえなくなったので、バクラは後片付けをしながら言った。

「大丈夫だ。おまえだって十分頑張ってんだろ?
 その黄金騎士と、なんら変わらねぇんじゃねぇのか?

 他の奴らにはちゃらんぽらんに見えるかもしれねぇが、俺の目から見りゃあ、結構真面目に魔戒騎士やってるように見えるぜ」

「…」

せっかく褒めてやってるのに、零からの反応が何もないことを不審に思ったバクラは、片付けの手を止めて顔をあげた。
零を覗き込むようにして、次の瞬間、怒りの表情になると、乱暴に零の肩を揺さぶる。

「おーい、ここで寝るなよ!
 店を閉めてぇんだよ!
 さっさと帰って家で寝な!」

ガクガクと揺さぶられ、眠そうな目を無理矢理開けた零は、何度か目をしばたたかせてから、よっこいしょと立ち上がった。

「あぁ、そうするよ…  んじゃ、またな」

ぼんやりしたまま片手をあげ、ドアの方へと行きかける零に、バクラは呆れながら溜め息をついた。
すると、ふと、あるものが目についた。
バクラはそれを無造作に掴むと、

「おい!」

と、零を呼び止めた。

「ん?」

足を止めて振り返った零に向かい、バクラは手のものを投げた。
ぼ~っとしているように見えたが、さすがに魔戒騎士だ。
咄嗟の状況であっても、零は難なく飛んできたものを見事にキャッチした。
最初、怪訝な顔をしていたが、手を開いて中身を確認すると、ニコッと笑顔に変わった。
バクラもニヤリと笑い、

「それでなんとか家までたどり着けよ」

と言った。

「あぁ、サンキュ!」

礼の言葉を口にした零は、笑顔のまま店を後にした。




バー・ルーポから外に出ると、零はブルッと身震いした。

「さむっ」

夜明け前の街はかなり冷え込んでいて、思わず肩をすくめてしまう。
歩き出す前に、手の中にあるものを取り出した。
それは、一口サイズのチョコだった。
包み紙を破き、中身をポイッと口に放り込む。
じんわりと甘くてほろ苦い香りが鼻腔を抜けていく。

「っしゃ、帰っか!」

少しだけ元気を取り戻した零は、ここからそれほど遠くない自分の部屋に向かって歩き出した。



fin
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BLACK BLOOD の特典映像やインタビュー動画(例えば、★こちら★)を見て、

玲くんが
「Kくんは凄い!
 Kくんの立場になって実感した!」
というようなことを話しているのを見ていたら、

零くんが
「鋼牙は凄い!
 鋼牙の立場になって実感した!」
というようなことを誰かに話しているシーンを妄想しちゃいました。

ところが、いざ書いてみると、お疲れ零くんをルーポのマスターが労(ねぎら)う…
う~ん、マスター優しいね、みたいな展開に!

ま、これはこれでいいか…

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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も5年を経過しましたが、まだ飽きていない模様…



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