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きんのまなざし ぎんのささやき

遅れてきたメリークリスマス(2)

おっとっと!
なんとか年内に、と思っていたのに、年を越してしまいました~

あっ!
あけましておめでとうございます。

正月気分はもう抜けましたか?
もうすっかり大丈夫、という方も、まだまだ本調子ではない方も、もう少しクリスマス話にお付き合いくださいませ。


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カオルは、ゴンザの運転する車の後部座席にいた。
窓の外を、イルミネーションが瞬(またた)きながら通り過ぎていく。
窓にもたれかかり、それをぼんやりと眺めているカオル。

(あぁ… ほんのちょっと前まではあんなにキラキラして見えたのに…)

確かに今でも綺麗だなと思える。思えるけれども、なんだか心が空っぽになってしまったかのようで、その美しさは心の奥深くにまでは浸透することがなく、金色に輝く光の粒たちは車窓を流れるように過ぎていき、カオルの瞳に映っては消えていくのであった。
そんなカオルの様子を、ゴンザはバックミラーごしにそれとなく確認する。
そして、カオルに気付かれないように小さな小さな溜め息をひとつつくのであった。




「…ル様…カオル様…」

カオルは運転席から自分を呼ぶゴンザの声に、ふっと目を覚ました。
車は屋敷に着いたのか、すでに止まっていた。

(いけない、ついうとうとしてしまったんだわ…)

昨日は鋼牙とのデートが楽しみ過ぎてなかなか寝付けなかったこともあって、ゴンザの運転する心地よい揺れがカオルを眠りに誘ったようだった。
カオルが目を覚ましたのを見てから、ゴンザは素早く車を降り、外側から後部座席のドアを開ける。
すると、スッと冷え切った空気が、社内の心地よかった空間に入り込んできて、カオルは思わずぶるっと身震いした。

「あ、ありがとう」

すっかり眠気の消し飛んだカオルは、そう言いながら車から降りた。
だが、降りてみて、あることに気が付いた。

(あれ? ここは…)

カオルが降り立ったのは、屋敷ではなく、見知らぬ場所だった。
葉のすっかり落ちた雑木林。
その中を走る細い道から少し引っ込んでいるところに車は止められていて、周りにはかなり離れた間隔でポツンポツンと人家があるようだった。
けれども、明かりのついている家はわずかで、まったく火の気のないような家もあり、どうやらどこかの別荘地のようなそんな風情だった。

カオルは目の前にある1軒の家に目を移す。
三角の大きな屋根が印象的な、まるで童話にでも出てきそうなかわいい家であった。
カオルの降り立った場所から玄関へと続くアプローチには、小さなランタンが点々と並び、重厚な木製の玄関ドアの両脇にはテラコッタの大きな植木鉢が置かれている。
そして、その植木鉢には1.5mほどの常緑樹の植わっていて、たくさんの小さなLEDで飾られており、チカチカとゴールドの光が点滅している。
辺りは暗くモノトーンの寒々しい景色の中、そこだけがぽぉっと柔らかく暖かい光に包まれていて、まるで、おいで、おいで、とカオルを誘っているようだ。

「ゴンザさん、ここは?」

目の前の幻想的な風景に目も心も奪われ、カオルは茫然としながら訊いた。

「ふっふっふ。
 詳しくは中でお話しいたします。
 ここは寒いですからな、まずは中に入りましょうか。さあ、こちらに…」

カオルの反応に満足そうな笑みを浮かべながら、ゴンザは先に立って案内した。
ヒイラギの葉や松ぼっくりなどが飾られたリースのかかっている分厚いドアが開かれ、中に入ってみると、カオルはふわっとした温かさに抱き締められた。
玄関でコートを脱いでゴンザに渡すと、一番近いドアを開けるよう促された。
カオルは少し緊張した面持ちでノブに手をかける。
ドキドキしながらゆっくりとドアを開けて中に入ると…

「うわぁ」

カオルの口から驚きと感嘆の声が漏れた。
山小屋風の外観と同様、中も木材がふんだんに使われており、中央奥にある薪ストーブが赤々と燃えていた。
そして何よりもカオルの目を引いたのは、大きなクリスマスツリーの存在だ。

「ゴンザさん、これ…」

そう言いながら、カオルはツリーに近づき、そっと枝に触れてみた。
本物のモミの木に、小さなベルや雪の結晶などをかたどった金色のオーナメントやモールがきらびやかに飾られていた。

「喜んでいただけましたかな?」

カオルの横に並んで、ツリーを見上げながらゴンザは尋ねた。

「すごーい!
 こんな素敵なツリーを、あたし、見たことないわ!」

興奮を抑えきれないように瞳をきらきらさせるカオル。

「それは、ようございました。
 カオル様にこのように喜んでいただけて、鋼牙様とがんばって準備した甲斐がありました…」

しみじみとそう言うゴンザに、カオルは目をまんまるにして訊き返した。

「ええっ! 鋼牙が?」

「はい。
 このツリーなどは、鋼牙様がおひとりで飾り付けしてしたものでございますよ」

それを聞いたカオルは、ツリーを振り返って

「へぇ、これを鋼牙が…」

と感慨深そうに呟いた。

(きれい…
 でも、できたら、鋼牙と一緒に見たかったな…)

ツリーの美しさに感動しながらも、カオルはついそんなことを考えて表情を曇らせる。
それを見たゴンザもカオルの想いを想像して、ちょっとだけ困ったような笑みを浮かべる。
だが、すぐに気を取り直して、こんな提案をした。

「カオル様、本日はこちらにお泊りいただくことになっています。
 ただいまお食事の用意をいたしますので、いかがでしょう、2階のお部屋など探検なされては…」

「え、いいの?」

カオルの目が輝く。
外観を一目見たときから気に入ったので、内心、あちこち見て回りたくてしょうがなかったのだ。

「それじゃあ、お言葉に甘えて…」

そう言ってゴンザに笑顔を見せたカオルに、ゴンザは少しホッとしながら笑みを返すのだった。




リビングを後にしたカオルは、いそいそと2階へと続く階段をのぼっていった。
こじんまりとした寝室は、まだ建てられて日が浅いためか、うっすら木の匂いが漂っていた。
中央には、ひとりで寝るには大き過ぎるベッドが設(しつら)えられており、すでにベッドメイクが終わっていた。
窓辺に近づき、かわいい小花柄のカーテンを少しだけめくると、そこには暗い闇しか見えなかったが、きっと朝になれば、美しい木立の景色が広がるのであろう。
広くはない2階を一回りした後、1階に降りてきたカオルは、可愛らしいアメニティの揃ったバスルームや、ラタン製のデッキチェアのあるサンルームなどを見学して、

「かわいい!」

とか

「素敵!」

などといちいち感動してからリビングに戻ってきた。
すると、部屋の照明が少し落とされていて、小さなダイニングテーブルの上にある燭台に細く華奢なキャンドルが灯っていた。
そのキャンドルの炎が、所狭しと並んでいるご馳走を照らしていた。

(なんてロマンチックなの…)

ゴンザの粋な演出にカオルは感嘆の溜め息をつく。
近くに寄ってみると、テーブルの上には、ふたり分のテーブルウェアが用意されていた。

「ああ、カオル様。
 ちょうど用意が整ったところです」

どうですか、と少し得意げなゴンザに、カオルは素直に、

「すっごく素敵!」

と満面の笑み。

「今夜はゴンザさんとふたりでディナーなのね?」

とゴンザの顔を覗き込むカオルに、ゴンザはニコニコと笑いながら、

「いえいえ、わたくしはこれで帰ります。
 お屋敷をそうそう留守にするわけには参りませんので…」

と言った。

「えぇ! ゴンザさんは一緒にいてくれないの?
 じゃあ、あたしひとり、ここで?」

少し不安げに尋ねるカオル。
すると、背後から穏やかな声が聞こえてきた。

「俺が相手ではだめか?」

その声に驚き、振り返ったカオルの顔が嬉しさに輝く。

「鋼牙!」



to be continued(3へ)
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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も5年を経過しましたが、まだ飽きていない模様…



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