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きんのまなざし ぎんのささやき

牙 狼(冴 島 鋼 牙 Ver.)の世界を、気ままに妄想した二 次 創 作 サイトです

最近の’妄想’
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最近の’お礼’

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Good Luck

いらっしゃいませ!
本日、お時間のほうは大丈夫ですか?
いえね、ご用意した妄想が、ちょっと(いやいや、結構)長めです。

ただ、まぁ、selfish にとっては超大作ですが、読むのはあっという間かも
しれませんがね… (苦笑)

お時間の他に、実はもうひとつ、非常に心配なことがあるのですが…
まぁ、それは、ご覧になったあとで謝ることにいたします。

それでは、「妄想OK」という方は、続きをどうぞ!


拍手[34回]


::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

その日、冴島邸に荷物がひとつ届けられた。

「御苦労様でした」

にこやかに配達人を見送った後、冴島家の執事であるゴンザは
差出人を確認した。
差出人の欄には「涼邑零」。
当家の若き当主、冴島鋼牙と実力を匹敵する魔戒騎士にして、鋼牙の
友でもある青年の名だ。
続いて、受取人の欄を確認すると、その欄には鋼牙の他に、彼にとって
かけがいのない女性である「御月カオル」の名前もあった。

ゴンザはひどく軽いその荷物を見つめながら、

「はて…」

と少し訝(いぶか)しく思った。
ゴンザがそう思ったのには、理由があった。


零は、かつて西の管轄の魔戒騎士であったときから「境界を越えては
ならない」という騎士の掟を破って、東の管轄に侵入していた。
また、鋼牙の後任として東の管轄を任されるようになってからも、
境界を越えては、この北の管轄の冴島邸に度々(たびたび)足を
運んでいた。

西の魔戒騎士のときには、それは ’アウトロー’ として映った彼の
行動も、今では、鋼牙にも引けを取らない実力と、指令に対しては
真摯に取り組むその姿勢、着実に重ねている実績から、番犬所でも
多少のことは目をつむることが暗黙のルールとなっていた。
それほど、彼は頼られる存在になった、ということを皆が認めていた
からだ。

そんな零が、持ち運ぶのにかさばるわけでも重いわけでもない荷物を
いつものように自分で持参するのではなく、わざわざ届けてよこすと
いうことに、

(何か意味があるのでは?)

と、ゴンザは引っ掛かりを感じたのだった。


そして、理由は、もうひとつあった。


鋼牙は、今、この北の屋敷にはいないのだ。
先のシグマとの闘いで、 ’破滅の刻印’ を刻まれた多くの魔戒騎士の命を
救うため、鋼牙はガジャリと契約を交わした。
その契約を果たすために、いつ終わるとも判らない長い旅に出ているのだ。
勿論、そのことは零も知っていること。

(そんな鋼牙様に宛てて、なぜ荷物を?)


いずれにしろ、鋼牙宛てであるならば、開封せずに保管しておくところ
だが、カオル宛てでもあるということは

(カオル様に中を見せろ… ということですかな?)

ゴンザは、零の意図をそう汲み取ると、さっそくカオルに連絡を取る
ことにした。

::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

ゴンザから連絡を受けたカオルは、午後のお茶の時間に間に合うように
冴島邸を訪れた。

それは、ゴンザからの

「そうしていただければ、わたくしも久しぶりにスコーンやケーキなど
 ご用意できます。
 たまには、そういったものを作らないと、腕が落ちますから…」

という誘いがあったからで、カオルにアフターヌーンティーを楽しんで
もらうことで、主のいない屋敷に少しでも華やぎを、というゴンザの
密かな想いも込められていた。

カオル自身も、

(今日はゴンザさんに会いに行こう…)

と、ちょうど思っていたところでもあったので、二つ返事で答えたのだった。


  ガチャ

「いらっしゃいませ、カオル様」

「こんにちは、ゴンザさん。
 今日は小春日和で気持ちのいい日ね」

カオルは花のような笑顔をゴンザに見せた。

「はい。
 毎日がこのような日であればいいのですが…」

そう答えると、ゴンザは青い空の向こうを見るように遠い目をした。

「鋼牙にも、この穏やかな日差しが届くといいのにね」

カオルもゴンザの見ているのと同じ方角を見てから、ゴンザに向かって
首を傾けてみせた。

「ほんとうに…」

ゴンザがしんみりと相槌を打った。
そして、すぐにその空気を変えるように、ゴンザは明るい口調で
カオルに話しかけた。

「さて… では、さっそくお茶にしましょうか?」

「うん、そうしましょう!」

カオルも元気よく返事をすると、ゴンザと腕を組むようにして、仲良く
屋敷に入っていった。

::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

カオルとゴンザは、ゴンザお手製の数々のお菓子と会話とをひとしきり
楽しんだ。
ゴンザは、カップにわずかに残っていた紅茶を飲みほした後、

「それでは、カオル様に届いた荷物をお持ちしましょうね」

と言って席を立ち、今日の午前中に届いた、零からの荷物を持って
戻ってきた。

カオルは手渡された荷物の伝票を確認してみた。

「これ、あたしの名前もあるけど、鋼牙宛てにもなっているんだよね?
 あたしが開けてもいいのかなぁ?」

カオルはゴンザに意見を求めた。

「わたくしが思いますに…

 開封されたくないものであれば、鋼牙様おひとりだけを受取人にする
 のではないでしょうか?
 カオル様の名前があるということは、零様は、カオル様に開けて
 いただきたいのではないか、と。
 そして、鋼牙様がお帰りになったときに、鋼牙様にも渡したい…
 そういったものなのではないかと思います」

ゴンザは、零の意図することに気づいているような素振りで、意味深な表情で
カオルに答えた。
それを受けて、カオルも何か思い当たったようで、

「うん… ゴンザさんの言うとおりかもしれない。

 じゃぁ、あたし、開けてみるね?」

カオルとゴンザはうなずきあってから、カオルは荷物の包みを開けていった。

 カサカサ…
   カサカサ…

「!」

荷物にはカードや手紙の類などはなく、ラベルも何もないDVDが1枚だけ
入っていた。

どうしたものかと困惑顔のカオルに、ゴンザは

「とにかく、中を見てみましょう」

そう言って姿を消すと、手にノートブックパソコンを持って戻ってきた。

「そんなものがこの家にあったんだ?」

目をまるくして驚くカオルに、

「帳面に書くより早くて確実ですから…
 それに、調べ物にも便利ですので、重宝しています」

さもありなん、と言わんばかりに平然とゴンザは答えた。
そして、持ってきたパソコンを手早くセッティングして起動すると、

「カオル様、それを…」

と、カオルからDVDを受け取った。
DVDドライブにそれをセットすると、待ちきれないように、ふたりは
並んで画面を覗きこんだ。

::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

まず、最初に映し出されたのは、見覚えのある魔戒法師の顔だった。

「あっ」

「烈花様ですね?」

カオルとゴンザが口々に言った。

烈火は、カメラのレンズの向こう側にいるであろう零のほうを見て、

「もういいのか?」

などと聞いている。
どうやら、何も編集されていない、撮影したそのままのデータらしい。
軽く咳払いしてから、端正な顔をきりりとこちらに向けて話し出した。

「鋼牙、元気か?
 …と言っても、お前はまだ旅の途中か。

 オレは元気にやっている。

 オレは今、邪美に修行をつけてもらっているんだ。
 たまに褒められたりもするが、嫌というほど自分の力不足を痛感
 しているところだ。

 お前が帰ってくるまでに精一杯腕を磨いておくから、楽しみに
 しててくれ。

 だから、早く…
 早く帰ってこいよ!
 俺が言いたいのはそれだけだ」

最後にわずかに表情が緩んだか? と思う間もなく、烈花は画面から
姿を消した。

「はい、じゃ、次は邪美ね~」

零の声だけが聞こえる。

「あたしはいいよ」

そう尻込みするような邪美の声に、

「そんなこと言わずに、ほら、一言でいいんだし…」

と、背中を押すような零の声が聞こえて、無人だった画面に渋々と
いった風情の邪美が姿を見せた。
最初は少し困ったような表情をしていたが、覚悟を決めたのか、
ぽつりぽつりと話し始めた。

「あたしは…
 鋼牙に言うことなんて別にないよ…

 どんな困難なことでも鋼牙なら乗り越えられると信じてるからね。

 そうだねぇ…
 あたしに言いたいことがあるとしたら…

 あたしはカオルに一言、言わせてもらうよ。
 それで、いいかい?」

邪美は、零に確認をとるように、レンズの反対側を気にした。

「あぁ、構わないさ。
 これはカオルちゃんにも見てもらうつもりだから」

零の声が割って入った。
それを聞いて、邪美は、再びレンズを見つめて語りかける。

「カオル?
 あいつはさ、不器用な男で、優しさってものも上手く表現できない
 やつだけどさ…
 それでも… そんなやつでも、我慢して待ってやっておくれよ?


 なぁに、だいじょうぶ!
 あいつは、ちゃ~んと、あんたのところに帰ってくるから。

 何も心配せず、あいつのことを信じてやってくれ。
 いいね?」

邪美は最後ににっこりと微笑むと、ゆっくり画面から消えていった。

その後、画面がぐるりと回転したかと思うと、零が自分自身にレンズを
向けた。

「は~い、烈花と邪美からのメッセージでしたぁ~
 この後も、いろんな人にメッセージをもらうからね。
 お・た・の・し・み・に!」

と、屈託のない笑顔を見せると、いったん画像が切れた。

カオルはゴンザと顔を見合わせた
だが、次の映像が映し出されたため、ふたりとも慌ててディスプレイに
視線を戻した。

::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

次に映ったのは、緑豊かな森をバックにして、白髪の老女と、烈花よりも
さらに若い魔戒法師(の卵)の姿だった。

「お~、これは、我雷法師と鈴(りん)様です。
 ずいぶん大きくなられて…」

ゴンザがカオルに言った。

「鋼牙殿。
 この度(たび)は、またえらく難儀な使命を負ったようじゃな。

 この年寄りにはなんの手助けもできぬが、閑岱の地から、そなたの
 無事を祈っておりますぞ」

我雷法師が一言一言噛みしめるように優しく語りかけてきた。

「鋼牙! 鈴だよ。
 鈴は鋼牙にちゃんとお礼が言いたいって、ずっと思っていたんだ。
 だから言わせてね。

 にぃの命を救ってくれて、本当にありがとう!


 鋼牙がにぃを救ったように、鈴も、早く、にぃや鋼牙を助けられる
 ような魔戒法師になりたいから、毎日一生懸命、修行に励んでいるよ。

 鈴も鋼牙に負けないくらいに頑張るから、鋼牙も頑張るんだよ!

 鋼牙が帰ってきたら、また閑岱にも遊びに来てね?
 鈴は待ってるから! きっとだよ!」

鈴は泣きそうになるのを必死に堪えて、懸命に笑顔を作っていた。
そんな鈴の肩を、我雷法師は優しくさすった。

「我雷法師、鈴ちゃん、ありがとう!

 閑岱からは、我雷法師と鈴ちゃんのメッセージをお届けしましたぁ!」

零の声が聞こえ、映像がぷつりと消えた。

::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

が、すぐにまた場所が変わり、遠くに山並みの見える見晴らしのよい
場所が映った。

「はい、じゃぁ、翼からどうぞ!」

零の声の後、画面にはカオルの知らない魔戒騎士が映った。
山刀翼だった。

「鋼牙。
 俺は今、子どもたちの教育を手伝っている。
 子どもたちに教えながら、自分自身を振り返らされることばかりだ。
 俺も、子どもたちと一緒に、魔戒騎士として日々精進しているよ。

 鋼牙、帰ってきたら、すぐに顔を見せてくれ。
 また、お前と、零と、邪美で美味い酒を飲みたいものだ。
 待ってるぞ!」

翼はそう言うと、次に画面に現れた魔戒騎士に一礼をして画面から
消えていった。
翼に代わって、四十万ワタルが場面に収まった。

「冴島鋼牙。
 お前のお蔭で、多くの魔戒騎士や法師たち、そして人間の命が
 救われた。
 俺はお前が教え子であることをほんとうに誇りに思っている。

 お前はこれまでにも、誰も成しえなかったことをやり遂げてきた。
 だから、今回のことも、立派に完遂できるだろう。

 お前の行く道は平坦ではないだろう。
 だが、歩みを止めなければ、必ず前に進めるものだ。

 越えられない壁とは、自分自身が作るものだ。
 自分を信じて、持てる力を存分に発揮して来い!
 そして、笑顔で帰ってこい!

 我々は皆、お前の帰るのを首を長くして待っているぞ!」

そう言うと、ワタルは力強いガッツポーズをこちらに突き出した。
その拳が下ろされるのを待って、零の声がした。

「レギュレイスを共に倒した仲間、閑岱の魔戒騎士、山刀翼と
 元老院付きの魔戒騎士、四十万ワタルのおふたりからコメント
 をもらいました!」

::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

そして、また、場面は一変して、今度は馴染みのある顔が
映し出された。

「レオ様ですね」

ゴンザが呟き、カオルは黙ってうなづいた。

「えっと、何から話せばいいのか…」

握りこぶしを口元にやり、数秒の間、レオは考え込んでいたが、
零は何も言わずに黙って撮り続けていた。
やがて、考えがまとまったのか、レオは真っ直ぐにこちらを見て
話し出した。

「鋼牙さん。
 兄、シグマのせいで、こんなことになってしまって、本当に
 すみません。

 僕の命に代えてでも阻止しなければならなかったのに、すべてを
 鋼牙さんに背負わせてしまった…」

そう言うと、レオは、何かに耐えるようにきつく唇を噛んだ。 

「僕はこの先、どう償っていけばいいのか、正直、判りません。

 でも、鋼牙さんならきっと…
 お前の今やれる最善のことを一生懸命にやれ、と、そう言う気が
 します。
 だから、僕は、魔戒法師として、魔戒騎士として、出来る限りの
 ことをやります。


 カオルさん…
 こんなことになって、僕は…
 カオルさんにかける言葉が見つかりません。

 でも…

 とにかく、鋼牙さんを信じてあげてくださいっ!
 お願いしますっ!」

レオは最後には、最敬礼の姿勢をとった。
そんなレオに零の声が飛ぶ。

「レオ!
 シグマのことで、お前が責任を感じることはないんだぜ。
 鋼牙もカオルちゃんも、お前を恨んだりなんてしてないさ。

 俺たち、闇に生きる者として、考え直すいい機会でもあったんだ。

 考え過ぎると、馬鹿なことを考えちまうもんだ。
 ほどほどに力を抜けよ…  っと、説教なんてジジ臭いな…

 というわけで、レオからのメッセージでした!」

::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

 ゴンザはここで、映像を一時停止させた。

「カオル様、お疲れではございませんか?」

「えっ、あっ、うん、大丈夫…」

心ここにあらず、といった感じのカオルが、はっとして慌てて
返事をした。
いろいろな人からのメッセージが次々と流れ、様々なことが
心をよぎっていたのだろう。

「それでは、再開しますよ?」

ゴンザの言葉に、カオルはこくんとうなづいた。

::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

「え~ 最後は俺、涼邑零です。

 …とその前に…

 今回、こんなふうにみんなからメッセージをかき集めたのは、
 鋼牙の誕生日だから… っていうのも、ほんのちょ~っとは
 あるんだけど、実は、目的は別にあったりするんだな~

 鋼牙の帰りを待つカオルちゃんやゴンザは、ただでさえ、鋼牙の
 いないことで寂しい思いをしてると思うんだけど、鋼牙の誕生日って
 いったら、余計に寂しさが募ると思うんだよねぇ。

 だから、そんな日に、みんなからのあったかいメッセージを贈ったら
 少しは笑顔になれるかなぁ? な~んて思ったわけ。

 どう? 喜んでもらえてるかな?

 さて… というわけで、俺からのメッセージね。
 と言っても、言いたいことは他のみんなが全部言っちゃったからなぁ。

 う~んと…

 今更言うまでもないけど、鋼牙ってやつは大した男だよ。
 それは、技、力、身体能力がスゴイっていう意味もあるんだけど、
 あいつは、とにかく、ここ(自分の胸の辺りを拳でトントンと叩き
 ながら)が、他のどの魔戒騎士よりも強いと思う」

ここまでしゃべると、零は大仰に顔をしかめた。

「あ~あ、鋼牙を褒めるようなことを言っちまったぜ。
 俺がこんなことを言うの、やつには聞かれたくないな~
 う~ん、まっ、いいや…」

溜め息をひとつついてから、気を取り直して、話を続けた。

「それでね、カオルちゃん。
 俺が、初めて、冴島鋼牙って男に会ったときも十分強かったけど、
 あいつは、今のほうがずっとずっと強くなっているんだよ。
 それって、間違いなくカオルちゃんのせいだからね。(ウィンクして)

 まぁ、鋼牙がどうして強いのか… これ以上のことは、鋼牙の口から
 直接聞いた方がいいよね?」

カオルより年下のはずの零が、カオルを気遣うように、優しく穏やかに
語りかけたかと思うと、今度は態度を一変させ、両手を腰にやり、
胸を張って強気な調子で、鋼牙に語りかけた。

「というわけで、鋼牙!
 帰ってきたら、カオルちゃんに優しくしてやれよ!
 それから、カオルちゃんの願い事を少なくとも3つは聞いてやれ!
 それができないって言うんなら、俺が叩き斬ってやるから覚悟しろ!」


 …早く帰って来いよ、鋼牙…」

最後のほう、零は、一瞬、眉根を辛そうにゆがめたかと思うと、
本心がぽろりと口から突いて出た。
零は慌てて、口調を元に戻した。

「まぁ、俺が言いたいのはこんなもん。

 編集も何もできないけど、許してね!
 ちなみに、これを直接届けなかったのは、単純に俺が照れ臭いって
 それだけの理由。

 それじゃ、この辺で…

 おっと、一番大事なこと言うの忘れてた!


 Happy birthday, Kohga!! (鋼牙、誕生日おめでとう)
 Good luck with your work!!(がんばれよ)」

零はバイバイと手を振りながら、屈託のない笑顔を見せて、鋼牙への
メッセージを収めた映像は終わった。

::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

「カオ…」

泣き出しそうなカオルの表情を見て、ゴンザはかけようとした言葉が
途中で止まった。
そんなゴンザに気付き、カオルは泣き笑いのような顔を見せた。

鋼牙の代わりに元老院付きの魔戒騎士となった零は、これまで以上に
忙しい日々を過ごしているはずだった。
そんな激務の合間に、あちこちを訪れ、鋼牙に所縁(ゆかり)のある
人たちのメッセージを記録していってくれたのだ。
零の気持ちに触れ、そして、みんなの温かい言葉に触れ、カオルは
胸がいっぱいになったのだった。

「皆様のお気持ち、嬉しゅうございましたね?」

ゴンザが優しい笑みでカオルの顔を覗き込んだ。

「ゴンザさん、あたし…
 零くんの… みんなの気持ち、しっかり受け取ったよ」

カオルは頬に伝った涙をそっと拭(ぬぐ)って、にっこり笑った。



2月20日。
今日は、鋼牙の誕生日。
鋼牙のいない、鋼牙の誕生日。
だが、カオルたちは、零のお蔭で、鋼牙を取り巻く仲間の温かい気持ちに
触れることができた日になった。


けれど…
来年の誕生日は…
再来年もそのまた次の年も、ずっとずっと…
この先の2月20日という日は、鋼牙と一緒に過ごすことができますように…

カオルはそう願わずにはいられなかった。



fin
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::


長かった~
これほどの量を短時間で、よくぞ書き切ったもんだ、自分~~~
(感無量!)

通常なら4~5回に分かれるくらいの分量なのですが、わりと一気に
書ききったので、一挙大公開の運びとなりました。
(まぁね、分けたところでハラハラもない淡々とした妄想なんで、
 わざわざ分ける意味もないし…)

というわけで、みなさんに謝罪します。

甘いところが、ぜっんぜん、まったく、これっぽっちもなくて
本当にごめんなさい!
みなさんが期待している方向とは、完全に「別」のほうに妄想
突っ走りました!

鋼牙のいない誕生日だよ~
なぁんて思ってたら、こういう結果となり… orz
まぁ、これも、「約束の地」に旅立っている今しか書けない妄想
いうことでお許しを。

そして、甘み成分のほうは、どうか、他のサイト様のところで
補充しておいてくださいませ、ね? (苦笑)
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ちょっとウルウル…
いやぁ~、鋼牙って幸せ者ですね。
こんなに皆から愛されてるなんて。
レオくんのメッセージには、少しウルウルしました。
やっぱり責任感じてるだろうなぁ…って。

甘くなくても良いと思います!
やっぱりッ!!このDVDメッセージを観た鋼牙が知りたいッ!!
URL 2013/02/21(Thu)16:54:57 編集
Re:ちょっとウルウル…
いやぁ~、鋼牙に負けないくらい、 selfish も幸せ者ですよ。
芽様にそんなふうに言っていただいて…

お誕生日のお話っていったら、ケーキにプレゼントにあんなことやこんなこと… を書くのがフツウなんでしょうが、どうにも、イベントものは照れ臭くて苦手なもので…
甘くなくて、どちらかというとしょっぱい(?)話ですが、そんなお話がひとつっくらいあってもいいですよね?

レオくんのメッセージ、よかったですか?
血の繋がっている親兄弟よりも、細胞の1個1個が同じ ’双子’ という関係だからこそ、シグマのことでレオの思うところには深くて辛くて悲しいものがあるでしょうねぇ~

ほんとは、ひとりひとりのメッセージをもっと掘り下げて書けたらよかったのでしょうが、力尽きてしまいました。 (苦笑)
この妄想からつながる、その後の鋼牙を妄想する日が来るのか来ないのか…  蒼哭ノ魔竜の内容次第でしょうね。
【2013/02/21 21:09】
selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…



hitori 様[07/08]
tomy 様[07/27]
麗羽 様[08/23]
夕月 様[12/22]
夕月 様[07/15]
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