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きんのまなざし ぎんのささやき

once again(6)

もうこのくらいでいいでしょうか?

ダメ~ って声も聞こえそうなんですが、にっこり笑って、 駆け抜けます。
スタタタタ…

パスなしでど~ぞ!



::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

バスルームから出た鋼牙は、窓辺で足を止めた。
先ほどまで立ち込めていた薄い雲は消え去り、星がいくつか見え始め、
月が煌々とあたりを照らしていた。

少し遅れて出てきたカオルの気配に鋼牙が振り返ると、鋼牙の視線を
真正面から受け止めることができず、

「見ないで」

と、慌てて横を向き、カオルは顔を手で隠した。
そんなカオルを、鋼牙はたまらなく愛おしく思った。

「見ないからこっちに来い」

カオルは、指の間から鋼牙がこっちを向いていないか確認してから、
そろそろと鋼牙に近づいた。
鋼牙のすぐ後ろまで来ると、カオルは聞いた。

「何してるの?」

「… 月を見てた」

カオルのいる位置からはよく見えなかったので、鋼牙と窓の間に
おずおずと身体を入れ、窓の外を見てみた。

「あぁ、きれい…」

今まで強張っていたカオルの顔が、ようやくほころんだ。
しばらくふたりは無言で月を見ていたが、カオルが口を開いた。

「以前(まえ)にも一緒にお月様、見たね」

「そうだな」

即座に鋼牙も返事した。
どうやら同じことを考えていたらしい。

(’俺たちはひとりじゃない’ そう、鋼牙は言ってくれたっけ…)

あのときから再び、こうして鋼牙と同じ場所で月を見る。
カオルは間違いなく幸せを感じていた。
だが、それと同じくらいに不安を感じるのは、カオルの悪いクセなのか。

「鋼牙?
 こんなこと言うのはどうかなぁって思うんだけど…」

そう言ったきり、カオルは迷ってしまい、言葉が続かなくなった。
なかなか話を切り出せないカオルを、鋼牙は静かに促した。

「なんだ」

優しい声に背中を押され、カオルは思い切って想いを口にした。

「あのね、もし… もしもだよ。
 この先、鋼牙が誰か別の人をものすごく好きになったら...
 そのときは、はっきり言ってくれないかな…」

だんだん声が小さくなり、カオルは下を向いた。

親しくなれたと思った人でも、ささいなことで離れていってしまうことを、
カオルはこれまでに何度か味わってきた。
どうして急にそういうことになったのか、カオルがいくら考えても解らない
こともあった。
それなら、いっそ、別れの理由をはっきり言ってくれたほうがいい。
たとえ、その理由に納得ができなくても… だ。

もちろん、鋼牙とは別れたいわけではないが、親を早くに亡くしたために
身に着いてしまった ’他人に対する臆病さ’ が、カオルにこんなことを
言わせてしまった。

「…」

鋼牙は黙り込んだ。
カオルは泣きそうな気持ちを押し殺して、言葉を絞り出す。

「何か… 言って...」

呼吸を整えてから、鋼牙は口を開いた。

「これから先どうなるかは、俺にもわからない。

 お前がこうして不安に思う度に、俺はそのときの気持ちを、そのとき
 できる精一杯のことで示すことしかできないだろう」

そう言うと、そっとカオルを後ろから包み込むように抱きしめた。
温かかった…

「愛してる」 の言葉はなかった。
何の約束もなかった。

(ずるいよ、鋼牙。
 それであたしが納得するって思ってるの?)

だが、素っ気ないくらいの鋼牙の言葉だったからこそ、カオルには、
これが鋼牙のとっての偽りのない真実なのだ、とストンと感じることができた。

(あ~あ、好きになっちゃったあたしの負けかな…)



これからも、また、一緒に月を眺められるだろうか?
これからも、また、不安になるのだろうか?
これからも、また、鋼牙の真実に触れることができるのだろうか?

once again …



(カオル、すまない。
 俺は、気の利いた言葉ひとつやれやしない。
 だが、俺は…)

この先、また、置き去りにするのだろうか?
この先、また、不安にさせてしまうのか?
この先、また、それでも許してくれるだろうか?

once again …



ふたりは同じ月を見て、互いを想い、ふたりの将来を想った。
互いのすべてを同じように分け合うことなど到底できないが、ひとつずつ
想いを重ねていければ…

カオルは鋼牙のほうを振り返って、ぎこちない笑顔を見せた。

「ねぇ、鋼牙。
 お願い… もう一度、名前を呼んで…」

鋼牙は、今のありったけの想いを込めて、愛しい人の名を呼ぶ。

「カオル…」

カオルは、泣き出しそうな笑顔を浮かべた。

「ありがとう、鋼…」

カオルが自分の名を最後まで呼ぶのを待たずに、鋼牙は唇を重ねた。
その夜、何度目かの極上のキスを交わすふたりを、淡い月光が、
優しく静かに照らしていた。



fin
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::


終わった!
最初で最後(だと思う)パス付きの妄想でした!

サバックの前に、ワンステップ前に進みたかったのです。
が、手放しでハッピーにしたくない…
だから、ま~た、カオルちゃんにイジイジ発言させてしまいました。
カオルちゃんの「悪いクセ」でなく、selfish の悪いクセですねぇ~
ごめんなさ~い!

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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も5年を経過しましたが、まだ飽きていない模様…



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