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きんのまなざし ぎんのささやき

牙 狼(冴 島 鋼 牙 Ver.)の世界を、気ままに妄想した二 次 創 作 サイトです

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「絵本」を鑑賞してみたよ!(4)

若干、大人な香りを残しつつ、始まり始まり~♡




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心も体もひとつになり、細胞のひとつひとつが鋼牙(カオル)によって満たされたような瞬間を共有した後。
ひどく虚脱した時間が音もなく流れていた。

疲れ切った様子で目を閉じる鋼牙に、カオルは手を伸ばして髪を優しくすいた。
すると、鋼牙はけだるそうに目を開けて、ふっと優しい表情を見せた。
それは、最強の魔戒騎士である彼が、カオル以外の誰にも見せない顔だ。
そんな顔を見せられて、カオルはなんとも表現しきれない嬉しさで胸がきゅんとなる。

鋼牙は自分の物とも思えないくらい重く感じる腕を持ち上げて、自分の頬を撫でるカオルの手をぎゅっと押し包み、まだ熱い唇にそっと押し当てた。

「カオル…」

幸福感に満ちたカオルの、穏やかで美しい顔を見ながらその名を口にすると、鋼牙は思わず

「ずっと…」

  ’ずっとそばにいてくれ’

とそう言ってしまいそうになる。
だが、それは、鋼牙にとっては、決して最後まで言ってはならない言葉だった。
魔戒騎士である己(おの)が身を顧(かえり)みれば、それはひどく矛盾していて、自分勝手な願いだとわかっているから…

そう思って押し黙る鋼牙に、カオルも一瞬表情を曇らせたが、すぐに穏やかな笑みを浮かばせ、呼びかけた。

「ねぇ、鋼牙…」

「なんだ?」

「ひとつお願いがあるんだけど…」

「ん?」

鋼牙は微かに首を傾けただけで、黙って話を促した。

「えっと、ね?
 ずっと… ずーっと鋼牙のそばにいさせて?」

カオルの口から、自分に禁じていた言葉が出てきたのを聞いて鋼牙は驚き、大きく目を見開いた。

「それは…」

それだけを呟くと、鋼牙は沈痛な面持ちで黙り込む。
すると、カオルは少し慌てて付け足した。

「あ、違うの!
 あのね…」

ちょっと考えてから、カオルは言葉を選びながら続けた。

「あたしはいつも、鋼牙がそばにいてくれているような気がするの! たとえ、離れていても… 鋼牙がどこにいても…
 だから、これからもずっとそう思っててもいいかな、っていうか…
 鋼牙にもちょっとでいいから、そんなふうに思ってもらえたらいいなっていうか…」

そう言うと、自分の言いたいことが伝わったかなと心配そうな表情になるカオル。

「おまえは…
 俺がいつもそばにいる感じがするのか?」

鋼牙がそう訊き返すと、カオルは、こくんとうなずいて、

「こう目を閉じて鋼牙のことを考えると、なんとなくそう感じるの…」

と目を閉じながら言った。
その顔は、なんだか嬉しそうに笑っている。

すると、鋼牙はカオルを抱き寄せて言った。

「目を開けろ。
 今は、目の前に俺がいる…」

目を開けたカオルは、至近距離の鋼牙ににっこりと笑いかける。

「うん、そうだね」

鋼牙はいつもそばにいてやれないことを後ろめたく思っていたが、それでもこうして笑って自分を想ってくれるカオルに対して、止めどもなく愛しさが溢れてくる。
溜まらず鋼牙は、カオルの唇にむしゃぶりついた。
存分に味わった後、ようやく離れると、呼吸すら貪(むさぼ)られるようなキスにすっかりのぼせあがったカオルは、恍惚とした表情で息をあがらせていた。

「俺だって同じだ。
 カオル、いつもおまえの存在を感じている…」

カオルはまだ荒い息だったが、嬉しそうな顔をする。

「俺のそばにいてくれ、カオル…」

「鋼牙…」

今まで言いたくても飲み込んできた言葉を素直に口にした鋼牙は、目を潤ませているカオルをしっかりとその腕に抱きしめた。





翌朝。
ダイニングテーブルに、鋼牙とカオルの朝食の用意をしながら、ゴンザは少し緊張していた。
昨夜、涼邑零の持ってきた「絵本」のDVDを鑑賞し、鋼牙がものすごーく機嫌が悪くなったからだった。

今や何者にも犯しがたいほどの強い絆で結び付けられているふたりだが、そのなれそめは、その… なんというか… ひどかった。
鋼牙のカオルに対するひどい態度が露呈して、批判されたり、茶化されたりで、とにかく、鋼牙はこれまで見たことないくらい最上級の仏頂面となった。

今朝の鋼牙の機嫌はどうだろう?
それを思うと、さすがのゴンザも気が滅入る。

だが、ゴンザは、自(みずか)らを鼓舞するように上着の襟をピシッと引っ張って姿勢を正すと、鋼牙の現れるはずのドアをキッと見据えた。

(とにかく、粛々(しゅくしゅく)と職務を全(まっと)うする、ただそれだけを考えるのです!)

悲壮なくらいの決意を胸に、ゴンザは鋼牙の登場を待っていた。



一方、鋼牙とカオルは…
これまで以上に深く、強くなった結びつきを実感しつつ、最高に幸せな朝を迎えていた。

「おはよう、鋼牙」

「おはよう…」

互いの温もりを心地よく感じながら、ふたりはどちらからともなく近づき、チュっと軽めのキスをした。
唇が離れ、少し照れ臭そうな笑いを見せたカオルが、思い切って布団から起きようとすると、鋼牙の腕がカオルの腰に絡み、引き留める。

「もう少し、そばに…」

「あン、だめ♡ 鋼牙…」



リビングではゴンザが、いまだ緊張の面持ちで不動の姿勢でドアを凝視していた…



fin
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はい、終わりです!
いやはや、今回は自分でもちょっとびっくりしました!

「絵本」の回をふたりが鑑賞したら、お話はシリアスに進むのかな~ と、ぼんやり思っていたのですが、全然そんなことなかったですねぇ~

これまで、意識的に鋼牙にはカオルに対して「そばにいてほしい」という言葉は言わせないでいたのですが(うん、言えないでしょ、それは、と思ってた!)、なんだかあっさりと言えるようになってしまいました。

それと、なんだか今回の鋼牙さん、ちょいと甘めな気が…
こんなにチュ~したり、抱きしめたりするキャラじゃなかったと思うんですけど、ね。

それもこれも、あまりプランを立てずに勢いで妄想するから、こんなふうに予想もしない方向に転がっちゃうんでしょうね。

ふふふ、だから、妄想はやめられませ~ん!

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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…



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