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きんのまなざし ぎんのささやき

「絵本」を鑑賞してみたよ!(2)

わいわいがやがや、鑑賞会…
楽しかろうな~




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ホラーとの闘いに巻き込まれたカオル。
その彼女を手荒に扱ったことに対する鋼牙への不満がカオルの口から聞かれることを、その場にいるみんなは期待した。
そんなみんなの注目を一身に集めたカオルは、そのプレッシャーにごくりと喉を鳴らした。

「えっと…あの…」

妙な緊張感にカオルの声も上擦(うわず)る。

「すごくびっくりした、よ…
 あと、怖かった、し…」

そのときの状況を思い出そうと考えながら、カオルは言葉をつないでいく。

「それから?」

「それから、って… う~ん~そうだなぁ…
 あちこち痛かった…なぁ?」

それを聞いて、そうだろうそうだろうと頷いたみんなが、そのまま鋼牙の反応を見てやろうとぐいん、と首を回すと…
全員の顔が一気に青ざめ、引きつった。
そこには、これまで見たことがないくらいに不機嫌で仏頂面の鋼牙が、腕組みをして睨んでいたからだった。

誰よりもまず一番に反応したのは零。
鋼牙を怒らせてもどこ吹く風のこの男ですら、顔をこわばらせていた。

「鈴? おまえそろそろ眠いんじゃないか?
 閑岱への魔戒道が閉じる前に帰った方がいいぞ、翼!」

いつもなら、そんな子供じゃない、と否定する鈴も「うん、そうだね」とかなんとか言いながら逃げ腰になっている。
翼と顔を見合わせた邪美は、ちょっと肩を竦(すく)ませて見せている。
まるで、触らぬ神に…だよ、とでも言いたげに。

「俺もそろそろ帰らないと…
 今日は息子に早く帰るって約束したからな」

「あ、あっ、僕も号竜の修理を頼まれてたのを思い出しました…」

ワタルもレオもそれぞれに口の中でもごもごと言っている。

「烈花とシグトは俺が送っていく約束だったよな? そうだよな?」

果たしてそんな約束をしていたのかどうかは疑わしいが、シグトが慌てて、

「す、すいません、零さん、お願いしますっ!」

と引きつった顔のまま返事をする。
そうして、誰が先陣を切ったのか、ひとりが腰を持ち上げると競うように一斉に立ち上がると、

「邪魔をしたな」
「世話になった」
「またな」

などと辞去の挨拶もそこそこに、潮が引くように、冴島邸のリビングから人が消えていった。
カオルとゴンザは玄関口で、手を振り帰っていく人達を見送る…

「すごい騒ぎだったわね?」

そう言って振り返るカオルに、ゴンザは微妙な顔で笑った。
否定も肯定もしようがない、どうにも困ったような笑顔だった。
カオルも同調するように同じような表情で笑い返していたが、

「さて…」

と、努めて明るい声で

「後片付け、してしまいましょうか!」

と励ますように言った。




リビングに戻ってみると、それまで大勢いた微かな熱気と、普段とは違うどこか雑然とした空気が残っていた。
そして、鋼牙の姿は消えていた。

「カオル様、こちらの片づけはお任せください。
 できましたらカオル様には…」

ゴンザがみなまで言わずにカオルに判断を任せた。
それを察知したカオルがフッと笑った。

「ええ、それじゃあここはお願いします。
 鋼牙のほうは、任せて!」

それを聞いて、ゴンザはほっとしたように笑っていった。

「はい、お願いいたします。
 それでは、お休みなさいませ」

「うん、お休みなさい」





カオルが部屋に入ると、クイーンサイズのベッドの上で、ヘッドレストに背を持たれさせかけ、長い足を放り出している鋼牙の姿を認めた。
顔は… 相変わらずの表情だ。

「みんな、帰っていったわ」

ベッドに近寄りながらそう言うカオルに、鋼牙は、ああ、とそっけない返事をする。

「なんだか恥ずかしかったね。フフッ…
 ふたりとも若かったしねぇ?」

思い出し笑いしながらカオルが言うと、鋼牙は眉間の皺をぐっと深くしただけで何も答えなかった。
そんな鋼牙の様子に、これ以上は触れないほうがいいかしら、と思ったカオルは、寝室に隣接するバスルームへと向かった。

洗面所の前に立ち、ピアスなどのアクセサリー類を外すと、パイル素材のヘアバンドをつけて、メイクを落とし始めた。
ぬるま湯で何度も顔をすすぎ、手探りでタオル掛けから真っ白なタオルに手を伸ばす。
そして、ふんわりと包み込むように優しく水分を拭(ぬぐ)うと、微かに香る石鹸の香りと柔らかな感触に、意識しないくらいの些細な緊張感までもがほどけていくようで、心底ほっとする。

が、すぐに何やらうなじの辺りに感じた気配にぞくりと肌が泡立ち、カオルの背に緊張が走った。
急いで顔をうずめていたタオルを離して、鏡越しに背後を確認する。


すると…
鏡に映っていたのは鋼牙だった。
カオルの真後ろに立った鋼牙が、彼女の髪を一すくい手に取ってキスするように口元に近づけていた。

(えっ)

鋼牙はそれまでの仏頂面ではなく、どこか切なげな雰囲気なことにカオルは驚きを感じていた。
どうしたの? とカオルが声を掛けるより早く、鋼牙が口を開いた。

「すまなかったな…」

「えっ?」

「痛かったのだろう?」

そう言うと、背中にそっと手を置いた。


to be continued
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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も5年を経過しましたが、まだ飽きていない模様…



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