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きんのまなざし ぎんのささやき

牙 狼(冴 島 鋼 牙 Ver.)の世界を、気ままに妄想した二 次 創 作 サイトです

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足りないものは…(1)

残暑厳しい折ですが、朝晩は過ごしやすくなってきました。
こういう季節の変わり目って、「この時季ならではのテーマを書ききっただろうか?」と無性に心配になるんですよねぇ~

「この夏、書き残したことはもうないか?」
自問自答して浮かんだ妄想をお楽しみください。

※この妄想では、カオルちゃんは冴島邸には住んでいないことになってます。

拍手[9回]



::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

「あっつーい…」

冴島邸の玄関先。
屋敷の作る大きな日陰の一角に入ったところでそう呟いたカオルは、額に浮かんだ汗を手の甲でぬぐった。
炎天下の中を歩いているときには声を出すのも億劫で、ただひたすらに足を前へと動かすことしかできなかったのに、ようやく目的地にたどり着いたことへの安心感が「暑い」という一言をこぼれさせたのだった。

太陽の日に照らされた今来たばかりの道を振り返り、立っている日陰となっている自分の足元に目を落とす。
涼しいとはとてもじゃないが言い難いものの、それまで肌に感じていた焼きつくような光線から逃れらたというのに、日陰に入ってから「暑い」と言ったことが今頃になって可笑しく感じられ、カオルはおもわずクスッと笑ってしまう。

そうして一息ついた後、生ぬるいドアノブに手を掛けて屋敷の中に足を踏み入れた。
外気温よりさらに何度か低い屋敷内の空気と、うっすらと感じられるこの屋敷特有の匂いに、カオルはさらにホッと息をつく。



鋼牙は2日前から出かけていて、当分帰らないと聞いている。
けれども、美術館に気になる作品が展示されていると出かけたその足で、残暑見舞いに訪ねるからと、カオルはゴンザに伝えていた。

(ゴンザさん、どこだろう…)

そう思いながら、まずはリビングへと足を向けたカオルは、その足を止めた。、何やらリビングが騒がしいのだ。

(ん? 鋼牙が帰ってきた? それとも誰かお客様かな?)

分厚いドアの向こうの声は何を言っているかまではわからなかったので、カオルはゆっくりとリビングのドアを開けて、そっと中を覗いてみた。

すると、そこには、スラッとした背の高い男性の後ろ姿が見えた。

「レオくん!」

驚きつつも嬉しそうにあげたカオルの声に、レオとゴンザは一斉に振り返った。
「カオルさん!」

レオがパアッと笑う。
カオルはパタパタと小走りにレオの元に来ると、

「久しぶりだね、レオくん。元気だった?」

と尋ねた。

「ええ、元気ですよ。
 カオルさんもお変わりなくて何よりです」

魔戒騎士どうしがあまり顔を合わせることはないので、カオルもレオに会うのはずいぶんご無沙汰だった。

ふたりとも… 特にカオルのほうが興奮しながら、なんだかんだとおしゃべりしていると、いつの間にか姿を消していたゴンザが、アイスティーを用意して戻ってきた。

「カオル様、レオ様、冷たいものをご用意しました。
 どうぞ、こちらでゆっくり座ってお話しください」

ジャケットをきっちりと着込んだゴンザは、涼しい顔でにっこり微笑むので、

「ゴンザさん、ありがとう」

と礼を言ったカオルは、レオと共にソファーの方へ移動した。




レオの話によると、今、鋼牙が受けている指令にレオもサポートとして加わっているとのことだった。
今日、ここを訪ねたのも、冴島家所有の蔵書の中から必要な情報を見つけ出し、それを元にホラーの次の狙いを探索して知らせてほしいとの鋼牙の依頼があってのことだった。

数多(あまた)の蔵書の中から情報を見つけ出すのは、ゴンザの協力のもと、あまり時間もかからずにできたのだが、書物の記述が謎謎めいた難解なものであったため、ゴンザとレオはああでもない、こうでもないと額を突き合わせて悩む羽目になった。
けれども、どうにかこうにか正しいと思われる答えを導き出すことができ、レオの持参した魔導具を駆使して、ホラーの次の狙いを紐解くことに至ったのだった。
すぐさま、レオは魔導筆でそれを札に書き留めると、人差し指と中指を立てて、その札に念を閉じ込める。

「ぶがん、つずたなこよげりしかなれ…」
(札よ、 すぐさま飛んでいきたまえ…)

ブツブツと魔戒語で何かを呟き、札を中空へと放つ。
すると、札が金の光に姿を変え、鋼牙のいると思われる方向に瞬く間に飛んでいった。

それを見届けたレオとゴンザは札の行き先を案じながらも、ほっとした。
そして、

「あとは鋼牙さんに任せましょう…」

と話をしていたところに、カオルが帰ってきたのだと説明をされた。




レオの話を聞きながら、カオルの胸の中には様々な疑問が浮かび上がる。

  そのホラーって強いの?
  ホラーの次の狙いって何?
  鋼牙は今どこにいるの?
  鋼牙は大丈夫なの?

鋼牙の身を案じる者なら、ごく当たり前に思うことばかり。

けれども、カオルはそれらのことを口にすることはなかった。
口にしてしまえば、なんだか自分の弱さに歯止めがきかなくなってしまいそうな気がしていた。

カオルの弱さ…
何者にも打ち勝つようにと日々鍛錬をし、黄金騎士であることの誇りと矜持を胸に秘めて闘う鋼牙を信じきれない弱さ。

そんなものがチラッとでも顔を覗かせてしまえば、

  ホラーなんかどうでもいい!
  今すぐ元気に帰ってきて!

そんなことを口走ってしまうんじゃないか…
そんなことを恐れていた。



カオルは、魔戒騎士でも魔戒法師でもない。
ホラーに対して、何も力を持っていない。
だからこそ、ホラーや魔界のことについては何も言わないようにしようと決めていた。

どんなホラーが相手でも、鋼牙は必ずホラーに勝つ…
打ち勝てるだけの力を持ち、打ち勝てるための努力を惜しまない、それが鋼牙なんだと信じている。
そう信じることが、カオルのできる唯一のことだと思っている。
その鋼牙を信じることこそがカオルの強さであった。

だから、カオルは口にする。

「鋼牙は大丈夫…
 鋼牙はきっと無事に帰ってくる…」

と。

「ええ、もちろん。もちろん、そうでございますとも」

しみじみと言い聞かせるようなゴンザの声。
その声に励まされながら、カオルはにっこりとゴンザに笑い返す。


to be continued(2へ)
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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…



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