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きんのまなざし ぎんのささやき

牙 狼(冴 島 鋼 牙 Ver.)の世界を、気ままに妄想した二 次 創 作 サイトです

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問われる覚悟(3)

めっきり寒くなりましたねぇ。
かじかむ指をこすりながらも、ほくほく顔で今宵も妄想しますのヨ!

拍手[4回]



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哀しみと戸惑いとでいつになく不安定になっている邪美を、翼は黙って見ていた。
それでも邪美はなんとか自分の気持ちを静めると、わざと明るい表情を作って翼のほうを見た。

「そういえば、どうなったんだい、話し合いのほうは?」

しんみりとしてしまった空気を換えようと、話題を変えた邪美。
それに対して、翼の表情が少し曇ったので、目ざとく見とがめた邪美は

「ん? 何か問題でもあったのかい?」

と尋ねた。

「ああ… まあ…」

歯切れの悪い邪美に、

「ふうん」

とだけ言って深追いはしない。

「…」

「…」

少し気まずい無言が続いた。
いや実際に気まずいと感じたのは翼だけで、邪美はそれほど気にはしていなかったのだが…

「違うのだ! 別に邪美に明かせないなどという意味ではないぞ?
 ただ、その… なかなかこれという人物に絞り切れずにだな。
 決まってもいないことをほいほい明かすのはよくないかと思って!」

妙に焦った様子で言う翼に、邪美はきょとんとした顔になり、しまいにはぷっと吹き出した。

「なにをそんなに慌ててんだい?」

そう言ってくすくす笑い出すので、翼は決まりの悪そうな顔をして押し黙る。
それを見て、邪美も笑いを押し込めて

「決まらなかったんだぁねぇ。
 ま、無理もないか。いくら閑岱が魔戒法師の里だといっても、我雷法師ほどの魔戒法師なんてそうそういやあしないから…」

と我雷法師を見下ろしながらしみじみと言った。
そこで、翼も同じく法師に目を向けながら、落ち着いた声で

「ああ。
 いろいろ意見が分かれていて何名か名前は上がっているが、この人でないと、という決定的な決め手に欠けている状態だ」

と答えた。
それからしばらく沈黙が続いたが、やがて再び口を開く。

「邪美…」

「ん? なんだい?」

「もし…」

そこまで言って、惑う様子を見せる。

「翼?」

邪美は、翼に目を向ける。
翼は我雷法師に目を向けたまま、言葉を続ける。

「もしも、おまえの名が挙がったら… おまえはどうする?」

そう言って強い視線を邪美に向けたので、邪美は少しうろたえた。

「あたし?」

自分を指さして念を押すように尋ねる邪美は、思いもしなかったと言わんばかりに目を見開いていた。

「ああ」

深くうなずく翼。
邪美はそれを受け、冗談でもなんでもなのだと判断して少しの間、考えにふけった。
そして…

「…あたしには無理だよ、翼」

ぴくりと翼の片方の眉がわずかに上がる。

「あたしは… そんな器じゃない」

そう言って寂し気に微笑んで見せるのに対して、翼はさらに問いかける。

「もしもみんなが、邪美がいい、と言ってもか?」

一瞬、目を見開いた邪美が、すぐに表情を緩める。

「ふふっ、いやに食い下がるねぇ」

そう言って

「そのときは…」

と目を伏せた。

「ふふふ、そのときは ’そのとき’ に考えるとしようか、ねぇ?」

翼は、なにやら煙(けむ)に巻かれた心地がして表情をゆがめた。
が、突然、踵(きびす)を返して歩き出したので、邪美は慌てた。

「おい、どうしたんだい?」

「…帰るっ」

足を止めた翼が、背中を向けたまま答えた。

「…ああ …そーかい」

なんだか気をそがれた邪美が気の抜けた返事をする。
が、答えたきり、なかなか歩き出さない翼に、すぐに怪訝な目を向ける。
すると、翼はやはりこちらを見ずに言った。

「邪美…」

「ん?」

「おまえ、まさかここに居場所がないだとか、ここから離れるなどということを考えていないだろうな?」

「えっ?」

戸惑いに瞳を揺らす邪美。

「我雷法師の後継が誰に決まるかはまだわからない。
 だが、誰に決まったとしても、俺はおまえの力が必要だと思っている。
 だから…」

そこまで言うと、翼は少しだけ振り返り、横顔を邪美に見せた。

「いい加減、覚悟を決めてこの地に骨を埋(うず)めろっ」

そう言い放った翼に、邪美ははっと息を飲む。

「…いいな?」

そう言った翼は、ほんの少し照れくさそうにしてわざと仏頂面をしてみせ、ぷいっと前を向く。
そして、足早に社を出て行った。

後に残された邪美はぽかんと口を開いていたが、やがて、じんわりと頬が緩むのを感じていた。



to be continued(4へ)
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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…



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