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きんのまなざし ぎんのささやき

牙 狼(冴 島 鋼 牙 Ver.)の世界を、気ままに妄想した二 次 創 作 サイトです

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あの日の輝きは(2)

成人の日にちなんで書き始めたのに、1回で終わらなかったですねぇ。
旬を過ぎた感がしますが、まあ、その… 続きをお楽しみください!


拍手[5回]



::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

「そのとき」のことをゴンザはよく覚えていた。



その頃の鋼牙は、少年期から青年期を迎え、ゴンザの背丈をとうに越して見上げるほどに成長していた。
今や、鋼(はがね)の鎧を召喚することができるようになっており、番犬所からも低級ホラーばかりではあるものの討伐の指令を受け、実戦を交えながら、より一層己の鍛錬に励んでいた。
その姿は、「強くなりたい」とがむしゃらだった少年期とはやや様相を呈(てい)していたが、押し殺したように変化の乏しい表情の奥にはギラギラとした情熱が秘められていることをゴンザは知っていた。

その情熱とは、父、冴島大河の仇を取りたいというもの。

父を殺した相手としてまだ幼かった鋼牙が見たのは、魔戒騎士の鎧にも似ていたが真っ黒で禍々しい気を放つホラーだと言った。
だが、それはバラゴであっただろうことをゴンザは知っていた。
けれども、そのホラーは大河により顔に十字の傷を刻まれたとも鋼牙は言っていたので、’死の文様’ を施されたバラゴは、恐らくもうこの世にいないはずだとゴンザは思っていた。

「大河様の仇を取りたくても、もうそいつは死んでいるはずです。
 ですから、鋼牙様。どうか無茶はおやめください」

無謀とも言えるほどの訓練を自らに課す鋼牙に、ゴンザは何度となくそう言って説き伏せようとした。
だが、父を失って持って行き場のなくなった激情を、鋼牙は「ホラーはすべて討つ」という強い気持ちの原動力に変えていた。

今も、番犬所からの指令で鋼牙はホラー討伐で出掛けていた。
これまでも大きな怪我をして帰ってきたことなどないが、それでも、若さゆえに判断を誤ってしまうことがないとも言えない。
だから、鋼牙が闘いの場に赴くときには、万感の想いを込めて「無事のお帰りを」と送り出し、帰ってくるまでは気が気ではなかった。
鋼牙が館を出て10日余り。
ゴンザはふかふかに干せた寝具をふわりと広げてベッドメイクしている最中だった。
ふと、階下から声がしたような気がして手を止めた。

「はて…」

この屋敷は結界が張り巡らされているため、普通の人間では簡単にたどり着けるわけがないのだ。

(それならば、鋼牙様のお帰りなのでは?)

と思いついたゴンザは、急いで部屋を出て小走りに階下へと向かった。
すると、

「ゴンザ! ゴンザ!」

という自分を呼ぶ声がはっきりと耳に届いた。
階段の踊り場でくるりと身体を反転させると、そこには鋼牙の姿があった。

「鋼牙様!」

ゴンザは驚きに目を見開き、すぐに笑顔になりながら彼の元に急いだ。
すぐそばまで来ると、頭のてっぺんから足の先まで視線を一往復させて鋼牙の無事を確認する。
やや着ているものが擦り切れ、薄汚れてはいたものの、どこも怪我などないようで顔色もいい。

「おかえりなさいませ、鋼牙様。
 ご無事なお帰り、安心いたしました」

ほっとしてそう声を掛ける。

「ああ、いま帰った。それより… 見てくれ、これを!」

そう言うと、鋼牙は左手をゴンザの目の前に突き出した。
その勢いにゴンザは半歩後ろに下がったが、鋼牙の手元を見る。

「ええっ、これは!」

鋼牙の手にあるのは牙狼剣。
鋼牙の父、大河がバラゴの手によって倒れ、地面にぐさりと突き刺さったままどんなことをしても抜くことができなかったあの牙狼剣が、鋼牙の手に握られていた。
しかも、指にはザルバがしっかり嵌まっているではないか。
牙狼剣と鋼牙の顔を何往復かしたゴンザは、

「鋼牙様がお抜きになったのですか?」

と尋ねた。その声はわずかに震えているようだ。

「ああ」

『ようゴンザ。久しぶりだな』

久々に聞くその声に、ゴンザは声の主に目を向ける。

「ザルバ… では、本当に…」

呆然としつつもこの現実がじわじわと浸透していく。

『俺様は鋼牙と契約した。
 黄金騎士、牙狼の鎧は冴島鋼牙に継承されたぜ』

「牙狼の鎧を… 鋼牙様が…」

呆然としつつ、ゴンザは顔を上げて鋼牙を見た。

「ああ。ようやくだ。
 牙狼の鎧をようやく召喚できた」

そう言った鋼牙が、誇らしげでどこか清々(すがすが)しくもある表情を見せた。
それは「笑顔」と呼ぶほどの変化ではなかったが、久しぶりに見る鋼牙の明るい晴れやかな顔だった。

「おめでとうございます、鋼牙様」

「ああ、ありがとう」

ゴンザはその眩しさに思わず目を細めるのだった。




当時を思い出していたゴンザの顔は、懐かしそうでもあり嬉しそうでもあった。
が、急にその表情に影を差す。
そのことに不安になったカオルが気づかわし気にゴンザの顔を覗き込む。

「鋼牙様は牙狼の鎧に相応しいと認められ、一人前の… いいえ、魔戒騎士の頂点とも言えるお立場となりました。
 ですが、あんな晴れ晴れしいお顔はそれきりでした。
 牙狼の鎧が召喚できるようになり、鋼牙様に下される指令は質も量も変わりましたから…
 それが魔戒騎士の宿命と言えば、それまでなのでしょう」

ゴンザの言葉に、カオルもまた沈鬱な表情となりうつむきがちに顔を伏せる。
すると、

「ですが」

とやや強い調子でそう続けられ、また視線をゴンザに戻す。

「鋼牙様はカオル様にお会いになられて変わりました。
 どこか張り詰めたところのあった鋼牙様が、そのようなところが鳴りを潜(ひそ)めて…」

ゴンザはにっこりと笑う。

「成人の日は、確かに大人の仲間入りとなるスタートラインに立つ記念日なのかもしれませんが、その後の過ごし方がもっとずっと大事なのかもしれませんね?

 成人と認められた日から、一日…一日… 子どもになんて戻れない」

そう言ってゴンザは首を横に振る。

「今日も、明日も、成人です。
 あのときの鋼牙様の表情はとてもいいお顔でしたが、今の鋼牙様のお顔だってあの頃に負けないほどよいお顔をしています。
 わたくしはカオル様の成人式の日のお顔を知りませんが、きっと、カオル様だってそうだと思いますよ?」

「ゴンザさん…」

「鋼牙様はカオル様のおそばに、カオル様は鋼牙様のおそばにいられて、とても素敵な表情です」

カオルは嬉しいような泣きたいような複雑な感情の中で笑顔を作る。
そして、

「それはきっとゴンザさんだって…
 ゴンザさんの20歳のときは知らないけれど、今、すっごぉぉぉく、いいお顔をしているわ!
 だから、これからもずっと、鋼牙やあたしのそばにいてほしいな…」

とお茶目な表情でおねだりするように首をかしげる。
ゴンザは一瞬きょとんとしたが、

「ふっ… ふふふ…」

と忍び笑う。

「かしこまりました。
 これからもずっと、ゴンザはおそばにいさせていただきます」

慇懃に頭を下げて上目遣いでカオルを見たゴンザに、カオルもぷっと吹き出した。



そんなふたりが、ふふふ、はははと笑いあっているところに、ふいにドアがガチャリと開けられた。

『ふい~ 疲れたぜぇ~』

そんなザルバの気の抜けたぼやきとともに、鋼牙が姿を現した。
カオルたちは少し慌てて、

「これはこれは、鋼牙様。おかえりなさいませ」

「おかえりなさい、鋼牙!」

と出迎えると、ふたり揃って鋼牙の顔をじっと見た。
そして、

「いい顏かしら?」

「ええ、いいお顔ではないですか?」

「うん、まぁ… そうねぇ?」

と、こそこそと言葉を交わす。
それを見て、なんだ? と鋼牙もザルバも不審気だ。

『なんだ? どうした、ふたりとも?』

たまらずザルバがそう尋ねるが、カオルもゴンザも

「なんでもないよ~」

「はい、何もございませんですよ」

ととぼけるのだった。
そして、「?」の消えない鋼牙たちを置いてきぼりに、

「お疲れでございましょう。
 ただいますぐにお茶のご用意をしてまいります」

「あっ、ゴンザさん。あたしも手伝う~」

「いえいえ、それには及びません」

「えーっ、そう遠慮しないで」

「いやぁ、遠慮などしておりませんが…」

と言いあいながら、リビングを出て行った。



「なんなんだ、あれは?」

『さぁ?
 ま、あのふたりが仲がいいってことでいいんじゃないか?』

「…」

鋼牙はなおも首をかしげつつ、コートを脱ぎだした。




fin
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::


「成人の日」は確かにひとつの区切りなんでしょうが、この日を境に子どもには戻れない日なのかもしれません。
そして、今日も、明日も、明後日も、10年先だって大人であり続けなきゃいけないんですね。

いくつになっても、昔自分が思い描いていた「30歳の」「40歳の」「50歳の」… 姿には追い付けてないんですけど、ねぇ。


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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…



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