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きんのまなざし ぎんのささやき

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問われる覚悟(5)

ふぉぉぉ!
邪美姐さん、そろそろ覚悟を決めてくだせぇ!


拍手[4回]



::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

閑岱の村の外れ。
邪美は木の上に腰かけ、ぼおっと遠くの山並みを眺めていた。

「邪美」

自分を呼ぶ声に邪美ははっとして下を見る。
そこにはこちらを見上げる人がいた。

一瞬、邪美は迷いを生じさせたが、ひょいっと木から飛び降りると、呼びかけた男の前に立つ。
口を開かないまま、ただじっと彼… 山刀翼を見つめた。
視線で会話するような時間が流れ、やがて、翼が口を開く。

「覚悟はできたか?」

その言葉に、邪美が少し表情を歪ませたが、ふいっと翼から視線をそらして空を見上げた。

「…わから…ないん、だ」

何がだ、という言葉の代わりに翼が沈黙をもって続きを待つ。

「あたしなんかで、役に立つんだろうか?」

そう言った邪美に否定しようとして翼が一歩近づくが、翼に何も言わせないように邪美は首を振る。 「そりゃあ、少しくらいは力を貸すことができるし、別にそれを出し惜しみするつもりはないんだよ?  ただ…
 ただね、あたしよりもふさわしい魔戒法師は他にもいるのと思うんだ…」

そう言って、邪美の視線がだんだん下がっていく。

(そうさ。あたしなんかよりずっと。  閑岱にとっても… 翼にとっても…)

いつになく気弱な邪美に、翼は、少し大仰なくらい
「はぁーっ」
と息を吐いてみせた。
それに驚いた邪美が反射的に翼を振り返ると、翼は怖いくらいのまなざしで邪美を見据えた。
「あの場にいて、邪美は何も感じなかったか?」

「え?」

「誰も反対の声など上げなかっただろう?」

「でも、それは… 急な指名で、みんなもちゃんと理解できなかったんじゃ」

ないか? と言い切る前に、翼が、

「そうか?」

と突っ込んだ。

「…」

思わず返す言葉の出なかった邪美に、

「少なくとも、俺の目には否定的な奴はいなかったように思うが?」

と表情も声色も少し穏やかになった翼が言う。
それでもやっぱり邪美の顔は晴れない。
すると、翼は急にムスッとした表情になる。

「何をそんなに迷うことがある?
 閑岱ではおまえの力が必要だ。だから力を貸せ!」

「でも」

「でも、じゃない!」

「だけど」

「だけど、でもないっ!」

強い調子で邪美の言葉を遮る翼に、邪美はさすがにムッとする。
だが、それに輪をかけて不機嫌そうな顔をしている翼が、吐き捨てるようにこう言った。

「おまえは無駄に考えすぎなんだ」

「無駄に、って… なんだい、それ」

「無駄、と言ったら無駄なんだ!」

「なっ! 人を莫迦か何かだとでも言うのかい!」

「ああそうだな! 悩むだけ無駄なのにいつまでもグズグズと悩んでいるのだから」

「くぅぅぅっ!」

あまりに悔しすぎて言葉にならない邪美は、握ったこぶしをぶるぶる震わせる。
すると、邪美と一緒になってヒートアップしていた翼が、スンと冷静になる。

「おまえはどこに行ったってやっていけるのかもしれん。  だがな…  …この里の者たちはおまえの力が必要なんだ」

そう言う翼が邪美をじっと見つめるから、邪美も興奮を静めて見つめ返す。
その視線を受け止めていた翼は、

「それだけで…」

と言ってからふっと笑い、

「十分じゃないか。 …違うか?」

と言い含めるように言った。
邪美は目を見開く。

「…それだけで?」

呟くように邪美の口から零れる言葉。

「ああ…」

大きくうなずく翼。
そして、

「考えるな、考えるな。
 人間、求められるうちが花だぞ?
 せいぜい誰にも見向きされないようになってから悩めばいいんだ。難しく考えるな」

と揶揄うように茶化すものだから、なんだか邪美も真面目に考えるのがだんだんバカバカしくなってきた。

ふうっと肩から力が抜けて、表情が緩む。

「あはは、そんな単純な考え方でいいもんかねぇ?」

「いいだろ? それで」

「んー、いいのかなぁ…」

「いいんだよ」




すっかり緩んだ雰囲気の中。
邪美はちょっとだけ悪戯心に火が付いた。

「あんたもあたしの力が必要かい?」

と少しニヤニヤしながら翼に聞いてみる。
すると、翼は、ほんの少し視線を彷徨わせてから、ちらっと邪美を見て答えた。

「俺は… そうでもないかもな」

「えっ?」

さすがの邪美もそれにはぎょっとする。

「俺に必要なのはおまえの力というよりは…」

と急にどこか歯切れの悪くなった翼。

「いろんなものをひっくるめた… その… おまえ、というか… あー… まー… …そういうのが必要だな」

照れているらしい翼は、耳の辺りがほんのり赤くなっている。
それに釣られて邪美の顔も火照りを覚えるのだった。




その後、我雷法師を突然失った閑岱の里は若干の混乱はあったものの、より結束を深めて、みんなで里を守っていった。
そして、何年か経った後。閑岱の里には新しい長が誕生し、我雷法師を凌ぐほどのよき指導者として後世に名を残した… らしい。



fin
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::


邪美姐さん、最後はピシッと覚悟を決めるのかと思えば、なんだかグダグダだった気がしないでもないですが…
まあ、邪美姐さんにはクヨクヨ悩む姿は似合わんよぉ …ってことで!

それにしても…
翼よ! もう少しピシッと言ってやればいいのにね?
「おまえは俺のそばにいるしかないんだっ!」
とかさ~あ?
ねぇ?

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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…



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