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きんのまなざし ぎんのささやき

牙 狼(冴 島 鋼 牙 Ver.)の世界を、気ままに妄想した二 次 創 作 サイトです

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父さんと俺

えっと、何日ぶりでしょう?
うわっ、1カ月ぶり!?
すごくブランクを空けてしまいましたね、すいません。
そんなわけで肩慣らしな感じで、短いですが、久しぶりの妄想をお楽しみください。

拍手[8回]



::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

俺は冴島雷牙。
黄金騎士牙狼の称号を持つ魔戒騎士だ。
この鎧は俺の父から受け継いだもので、父、冴島鋼牙もまた魔戒騎士だった。

父さんとは俺の小さい頃に別れたきりだから、記憶に残っていることはそう多くない。



「うっすらと覚えているのは、たまに父さんが近寄りがたいときがあった… ってことかな。

 後から分かったことだけど、それはきっと指令がくだったときだったんだと思うんだ。
 もともと口数は多くない人だったけど、なんだかちょっと雰囲気が怖くてね。
 そんな日は、父さん、夕食をあまり食べなかったと思ったんだけど、すぐに席を立って出ていくまでの短い時間が押さない俺にとってはとっても長く感じてたなぁ」

そんなふうに言うと、ゴンザはうんうんとうなずいてから、記憶をたどるように宙に目を向けて、

「鋼牙様… 雷牙様のお父様は、あまりたくさん召し上がられると勘が鈍る気がするとのことで、指令のあった日には消化のよい軽めのお食事を好まれました」

と言った。
そして、すぐ、ふふふと笑いを零す。
俺は目を見開き、なんだ? とばかりに小首を傾(かし)げて見せた。

「いえね、雷牙様は指令の日もしっかりとお食事は召し上がるな、と思いまして… ふふっ、ふふふふ」

ゴンザは堪(こら)えきれないように笑い続ける。
そんなに笑うか、と不服そうに眉間に皺を寄せつつ、

「俺は… ちゃんと食べないと力が出ないんだよっ」

と不貞腐れたように言う。

「いえ、ゴンザはいいと思いますよ?
 雷牙様はお母さまの血を受け継いでおられるて、ずぶとっ、あ、いえ、明るくて大らかで…
 雷牙様はお食事をしっかりと召し上がられて、きっちりお役目を果たして来られるのですから、ええ、ええ」

ゴンザがそんなふうにフォローするのを、素直に褒められているとは取れない俺は複雑な表情で聞くしかなかった。




その日も俺は出された食事をきれいに完食した。
ナプキンで口元を拭うと、ゴンザに向かってにこっと笑う。

「ごちそうさま。
 今日もおいしかったよ」

だが、にこやかだったのはそこまでで、口元にはわずかに笑みを残しながらも目はすでに鋭さが増してしまうのは、この日の夕方に指令が届いていたからだった。

「1時間後に出るから」

そう言うと俺は食卓を立ち、部屋を出て行った。
食事は食事としてきちんと食べる。だが、その後は闘いに備えて意識を集中させたい。
そして、宣言どおり、1時間後には

「行ってくるよ、ゴンザ」

と微笑を見せて屋敷を後にした。

父さんは屋敷を出るとき、どんな心持だったんだろう?
そんなことがふと思い浮かんだが、すぐに消えた。
父さんは父さんで、俺は俺だ。

「ザルバ、今日も頼むよ?」

『ああ、任せとけ』





玄関ドアの向こうに消えて行った雷牙の背を見送りながらゴンザは思いだしていた。

(指令に出向く前の鋼牙様の緊張感を、幼いながらも雷牙様は感じ取っていたんでしょうな…)

普段ならカオルと楽し気におしゃべりを交わしながら食べる食事も、ただ黙々と食べ進めていたことが思い起こされる。
気を遣ったカオルが雷牙ににこやかに声を掛けても、雷牙はおとなしいものだった。
そればかりでなく、その日はお風呂が嫌だと駄々をこねることも、絵本を読んでとせがむこともなかったように思う。
カオルやゴンザに「おやすみ」と挨拶をすると、さっさと自分のベッドにもぐりこんでしまっていたような気がする。

幼いながらも、いや幼いからこそ、闘いの場所に赴く父親に対して、尊敬と畏怖とが入り混じったいたのだろう。

(けど、雷牙様。あなたは知らないでしょうな)

ゴンザは懐かし気に目を細めた。

(お屋敷に替えられた鋼牙様は、真っ先にこども部屋に向かわれていたのですよ。
 それはそれは優し気な目で雷牙様の寝顔を見つめ、起こしてしまわぬよう遠慮がちに頭を撫でていらした…)

そう思い返していたゴンザ自身も、気づかぬうちにとても穏やかに笑っていた。

(やがて、雷牙様もお子様が生まれてそのようなお顔を見せるのでしょうか?)

そこまで思って、ふとゴンザの顔から笑顔が消え、悲し気な表情に変わる。

(鋼牙様やカオル様も、そのような未来に立ち会うことができたならよいのに…)

魔戒騎士という特殊な立場の人たちを身近で見守ってきたゴンザは、普通の家庭の普通の団欒風景が彼らの身の上では難しいことも知っていた。

けれども、ゴンザにはそんな未来が決して実現不可能なことだとは思いたくなかったし、不思議とそう思えなかった。

(鋼牙様ならきっと…
 カオル様と一緒に、必ずや帰ってきてくれるはず。

 それまでは、このゴンザ、たとえヨボヨボになろうが、雷牙様にお仕えしておふたりのお帰りをお待ち申し上げますぞ。

 ですから、鋼牙様。どうか… どうかご無事で…)

ゴンザはぎゅっと固く目を閉じて、心からそう願うのだった。



fin
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::


すみません、なんだか淡々とした妄想になってしまいました。
復帰(?)一発目なので、まあ、こんなもんでしょう。

雷牙は鋼牙に似てないんですけど、不思議と違和感を感じないんですよね…
当然ですが、演じてる役者さん同士も血のつながりなんてないけど、なんとなくしっくりくるのはなぜでしょう?

牙狼ってキャストがほんと神がかってますわぁ!
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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…



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