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きんのまなざし ぎんのささやき

牙 狼(冴 島 鋼 牙 Ver.)の世界を、気ままに妄想した二 次 創 作 サイトです

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通りすがりのヒーロー(2)

3行読んだらすぐ判ると思うのですが、そういうことです。

原作の鋼牙では絶対ありえないことです。
ありえないけど、あったら面白いんじゃないか? ってことで…

鋼牙というキャラは崩壊させてないつもりですが、設定がフザけてますので、
おフザケがダメって人は、読まないでください…

::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

ここは複合商業施設にある、イベントなどが行われるスペース。
今日はここで、午前と午後の2回、ヒーローもののショーがある予定だった。
このショーで、主役のヒーローのスーツを着るのが北里だった。

車に轢かれそうになったときも、普段から身体を鍛えていることと、とっさに
とった受け身のお陰で、診断の結果、頭部や内臓へのダメージはなく、
どこも骨は折れていなかった。
ただし、唯一、右手親指の腱を少し伸ばしたようだった。
事故のあの状況で、怪我がそれだけだったのは、不幸中の幸い…
ただし、その怪我のせいで、モノを強く握ることができくなってしまった。

困ったことに、北里の演じるヒーローは長剣を巧みに使いこなすという
設定で、剣を強く握って振り下ろしたり、相手の攻撃を剣で受け止めたり
という演技ができない状態では、ショーの出来栄えに大きな影響が
出てしまうと容易に予想できた。
北里は、そのことを心配していたのだ。

午後の部は、代わりの助っ人を見つけることができたのだが、午前の部は、
どうしても北里本人でなんとかするしかなかった。

実際、リハーサルで動いてみると、きっちりとテーピングすることによって
辛うじて剣を握ることはできたが、悪役の剣を受けるときに、受け切れず、
剣を落としてしまうことが度々あった。
しかも、入念にリハーサルを繰り返したいところだったが、病院での診察に
かなり時間を取られたため、軽めの通し稽古をすることで精一杯だった。
現場のムードは重く、関係者はただただ、なんとか北里が演じきることだけを
祈っていた。

「鋼牙…
 北里さん、大丈夫かな?」

「…」

病院で、北里の告白を聞いて、鋼牙とカオルは成り行きで一緒にここまで
ついてきてしまった。
リハーサルまで見せてもらったが、素人目に見ても、北里の出来はかなり
危なっかしいように見えた。
カオルが焦りを感じている一方で、鋼牙は、ただじっと、立ち回りの様子を
見つめていた。

そして、いよいよ、開幕時間が迫ってきた…

::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

「みんなぁ、こんにちはぁ~!」

進行役のお姉さんが出てきた。
そして、お約束どおり、悪者がバラバラと出てきて、お姉さんが捕まって
しまった。
そこにかっこよく出てきたヒーローが、うまく敵からお姉さんを奪還した…
かに見えたが、、反対に追い詰められてしまうという筋書きだった。

「鋼牙… そろそろだね」

無意識のうちにカオルは呟いた。
鋼牙の返事がないことにも構わず、カオルは汗ばむ手を強く握りしめた。

お姉さんの誘導で、会場にいるちびっ子たちが声援を送り、ヒーローは
今までにない力を発揮してピンチを脱する… はずだったが、まさにそのとき、
恐れていたことが起こってしまった。
それまで、なんとか乗り切っていた北里が、悪役ボスの剣を受けたとき、
うめき声をあげて剣を落としてしまい、右手を押さえたきり、剣を拾うことも
できなくなってしまったのだ。

悪役さえも一瞬凍りついて動きを止めてしまった。

その瞬間、

『鋼牙、コートは脱いでいけ!
 目立ち過ぎる!』

とザルバの声が聞こえたかと思うと、鋼牙は手早くコートを脱ぎ、

「持っていろ」

とカオルに押し付け、客席から舞台に駆け上がった。
そして、北里の落とした剣を拾い上げると、ボスキャラの剣を弾いた。
客席から突然乱入した男に、観客がざわざわ騒ぎ出す。
その喧騒にまぎれて

「うまく合わせろ」

鋼牙が、小声で舞台上のキャストに声をかける。

はっと我に返ったボスキャラが叫ぶ。

「お、お前は誰だ!」

「… 通りすがりの者だ。
 俺が相手だ」

よく通る声でそれだけ言う。

「う~ん…
 お前たち、かねてからの手筈どおり、やっちまえ!」

ボスキャラは一瞬迷ったが、仲間に 「リハーサルどおりにやれ」 と解るように
台詞を変えて命じた。

リハーサルどおりに、右や左から押し寄せる敵を、鋼牙は、記憶した所作で、
剣をすり合わせて、弾き、すべての敵を倒していった。
いや、倒したかのように、紙一重で太刀筋をずらしていった。

会場は、その鮮やかな殺陣に惹き込まれ、し~んと静まり返った。
とうとう、ボスキャラを鮮やかな剣裁きで倒してしまうと、会場からわっと
歓声が沸き起こった。
その歓声が少し落ち着くのを待って、北里の演じるヒーローが声をかける。

「あなたはいったい…」

あまりの事の成り行きに、気の利いた台詞が出てこない。

「言ったはずだ。
 通りすがりの者だと…」

そう言うと鋼牙は北里に剣を返し、悠々と舞台から降りてきた。
会場からの視線を一身に集めながら、カオルの元まで来ると、

「もう、いいだろ?」

そう一言告げてカオルからコートを取り、そのまま会場を去って行った。

::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

その後、ショーがどう終わったのかカオルもよく覚えていなかった。
だが、ショーの後すぐにスタッフに声をかけられ、北里の元まで連れて
こられた。
北里はカオルの手を取り、興奮気味に話した。

「御月さんの知り合いの人って、何者?
 あの人、すごく能力高いよ。
 スタントをやる気ないかな?
 もしやってみる気になったら、いつでも言ってよね!

 それにしても、あの人、普段は何をしてる人?
 普通の仕事なんかしてたら、もったいないよぉ」

そんな北里に、カオルはちょっと引いてしまったが、はっきり言った。

「あの人は、ほんとに通りすがりのヒーローなんですよ。

 あっ、ちょっと違うかな?
 守るべくして、来てくれる… っていうのが正しいのかも…」

「えっ?」

北里は、その答えにちょっと驚き、思わず、カオルの手を握っていた
力が弱まった。
カオルはすかさず、

「それじゃ、あたし、もう行きます。
 北里さん、轢かれそうになったところを助けてくれてありがとうございました!
 あの… お怪我、お大事にしてください!」

そう挨拶し、ペコリと頭を下げると、カオルはその場を後にした。
呆然とカオルを見送った北里が、ハっと気づいて、慌ててカオルの後を
追ったが、カオルの姿はどこにもなかった。
なんだか狐につままれた気分の北里だったが、

「通りすがりのヒーロー… か…」

そう呟くと、仲間の元へと戻って行った。

::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

会場から出たカオルは、キョロキョロと鋼牙の姿を探してみたが、
鋼牙がカオルを待っていてくれるようなことはなかった。

だが、カオルは鋼牙のことを冷たい、などとは思わなかった。

カオルの代わりに怪我をした北里のため。
そしてそれを気に病んでいるカオルのため。
目立つ行為は避けているはずの鋼牙が、人前に出て剣を振るったのだ。

(ありがとう、鋼牙)

カオルは心の中で鋼牙に礼を言ってから、しっかりとした確かな足取りで
雑踏の中へと紛れて行った。



fin
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::


いやぁ~、ほんとに思いつきなので、いろいろ齟齬(そご)があるかも
しれないんですけど、まっ、それはごめんなさいってことで。

鋼牙やカオルの心情を丹念に追って… っていうんじゃないので、
かなりいい加減で、勢いで、走り抜けちゃった気がしますが、たまには、
こんなのも… ダメですか?
(いやぁ、いつも書く妄想もいい加減で勢いで書いてはいるんですけど、
 そこは、突っ込まないでいただきたい… 笑)

最後は、カオルちゃんを置いて先に帰っちゃう(うちの)鋼牙さんですが、
カオルちゃんにとっては 「通りすがり」 ってわけじゃなく、かと言って
ベタベタもしてない、だけど心はしっかり結びついている、特別な
ヒーローなんだろうなって思ってます。

ただし…
ゆるぎないように見えるふたりを、揺さぶるのが大好きだったりするのが、
selfish です… (笑)

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無題
こんばんはこんな鋼牙もいいですね、人前で可憐な剣さばき、私も見たい、いつも、人の影で仕事をしているので一度ぐらい人前でカッコイイ鋼牙もみんなに見てもらえる機会を有難うございます、カオルチャンも鼻高々かな・
かなまま 2012/10/30(Tue)19:04:08 編集
Re:無題
ぜったいありえないおフザケを書いてしまいました。
魔が差したと思ってください。
闇に生まれ、闇に忍び、闇を切り裂く魔戒騎士としては 「あるまじきこと」 ですが、カオルちゃんの為ってことで…

大勢の前で、顔が晒されるのはどうかなぁとも思ったのですが、さすがにマスクまで被せるわけにはいきません… (汗)
極力、顔を隠していたと思ってください。
ただ、顔は見えなかったとしても、あのスタイルだけで十分かっこいいでしょうが… ね。

また、いつか、魔が差すかもしれません… が、差さないかもしれません… (笑)
【2012/10/30 20:29】
バグ?
私だけかもしれませんがこのページだけ一部文字化けとは違うバグを起こしていて読みにくいです。
直してもらえると嬉しいです。
ちなみに私はiPad Proで読んでたらそうなりました。
2017/04/16(Sun)06:34:12 編集
Re:バグ?
栞様、教えてくださりありがとうございました!!
確かに読めないような状況になっていますね!(焦っ)
お話の最後の最後にこんなことになっているなんて… とんだご迷惑をおかけしました。

バグではなくて、余計な装飾(とでもいうか?)が紛れ込んでいました。
さっそく直してみましたが、どうでしょう? 読めますでしょうか?
これに懲りず、妄想を最後まで楽しんでいただければと思います。

そ・し・て。
もし、まだ読めなかったり、別のところでも不具合など見つけましたら遠慮せずに通報く
ださいね。
【2017/04/16 19:54】
selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…



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