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きんのまなざし ぎんのささやき

牙 狼(冴 島 鋼 牙 Ver.)の世界を、気ままに妄想した二 次 創 作 サイトです

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最近の’お礼’

水をください(1)

’忙しい’ という字は、’心’ を ’亡’ (な)くす、と書きますね。

目の前のことでいっぱい、いっぱいになって、大事なこと(もの)が
おろそかになる。
… 今の自分のことだなと、ちょっと反省。



そして、どうせ反省するならば… と、ついでに妄想しちゃう!
(なぜ、そうなる!)


::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

カオルは切羽詰まっていた。

締切を目前に控えて、絵の制作作業が遅れを見せていたからだ。

「あぁ~ん、もう!
 間に合うかなぁぁぁ」

イライラと叫びながら、カオルは筆を運ぶ。




  「御月カオルの傑作が欲しい」

その依頼主は、今のカオルが描ける最高の作品を望んでいた。
カオルとしても、そんなチャレンジングな依頼には、非常に 'たぎる’ ものを
感じていた。

依頼主に言われないまでも、カオルはいつだって全力を注いでいる。
だが、今回の依頼主の情熱は、それに負けるとも劣らなかったので、
普段以上に制作活動に集中した。

この依頼主は、アーティストの気持ちをとても尊重してくれ、これまでにも
再三、締切を延ばしてくれていた。
とはいえ、依頼主にも都合というものがある。
だから、今度という今度こそ、何が何でも締切を守らなければならなかった。



カオルは一心不乱に描いた。
依頼主のために。
そして、自分自身のために。


夢中になると、他のことはどうでもなるのが彼女の悪いクセで、
ここ何日かはろくなものを食べていなかったし、睡眠時間も十分では
なかった。
もちろん、冴島家に足を運ぶのことは、それよりもずっと前から控えていた。


(最後に鋼牙に会ったのはいつだったっけ?)


ふとそんなことを考えて、急いでかぶりを振る。


(だめ、だめ。
 今は、絵に集中! 絵に集中!
 描かなきゃ!
   描かなきゃ!
     描かなきゃ!)

歯を食いしばるようにして、眉間にしわを寄せて、カオルは黙々と絵筆を
動かした。




一方、最近の鋼牙といえば…
元老院から無茶な指令が来ることも減り、その身辺はわりと落ち着いていた。
もちろん、それは、ホラーの元凶となる ’陰我’ を孕(はら)んだ
オブジェを、魔戒法師や魔戒騎士たちが、毎日、地道に浄化しているお蔭に
他ならない。
たまに、指令のために遠出することもあるにはあったが、それでも、
翌日にはちゃんと屋敷に戻っていた。
だから、屋敷に顔を出せば、鋼牙に会える確率は高いのだ。
そんな恵まれた今の状況だというのに、会おうと思えば会えるのに、
カオルのほうが仕事に追われていて、ふたりはずっと会わずにいた。

いや、カオルさえその気になればいつでも会えたのだ。
でも、なんだか会ってしまったら、どこかで気持ちが萎えてしまって、
作品に悪い影響が出るような気に、カオルはなっていた。
だから、

  作品の完成までは、意地でも鋼牙に会わないでおこう…

そんなふうに、カオルは勝手に決心していた。




(描かなきゃ!)

夢中で筆を振るい続けてきたカオルだったが、急にその手が止まった。


(え、描く? 何を?)


カオルは、改めて、自分が今描いている絵を眺めた。
カオルの目の前のキャンバスには、気迫のこもった力強いタッチで描かれた
女性がいた。

(この色はあたしが塗りたかった色?
 このタッチはあたしが描きたかったもの?

 …違う  …こんなの、違う)

もっと明るく描きたかった。
もっと伸びやかに描きたかった。

もっと包み込むように…
  もっと慈しむように…
     もっと溢れるように…

こんな、見る人に緊張を強いるような絵を描きたいわけではなかった。
締切にこだわり過ぎて、カオルは本当に描きたいものを見失いそうに
なっていた。

それに気づいた今、愕然とした。

手が止まってからしばらく経ち、カオルは急激に空腹を覚えた。
眠気も感じた。
そして、何より、心の渇きに気付いてしまった。


(鋼牙に会いたい…)


人は食事をとらなければ、死んでしまうだろう。
そして、睡眠をとらなければ、気が狂ってしまうだろう。
幸いなことに、今のカオルはまだそこまで追い詰められてはいない。

でも、カオルはものすごく乾いていた。
鋼牙にずっと会えないことで、カオルの心が枯れてしまいそうだった。


(鋼牙…)


一度渇きに気付いてしまうと、それを忘れることは容易ではない。
カオルの頭の中は、鋼牙のことでいっぱいになり、心の渇きとは裏腹に、
想いが溢れてくる。

 鋼牙…
   鋼牙…
     鋼牙!


カオルは、パレットと絵筆を放り出すようにして置くと、ケータイに
手を伸ばした。



to be continued(2へ)
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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…



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